2013年12月5日12時50分
【大久保真紀】戦時下最大の言論弾圧事件とされる「横浜事件」。1986年から24年にわたる再審裁判の結果、2010年に実質「無罪」となった事件。再審請求のきっかけは85年の国家秘密法制定の動きだった。28年経ったいま、改めて特定秘密保護法がまさに制定されようとしている。「あの時代の再来になる。過去に学ぶべきだ」。遺児や再審請求を支援してきた人たちが止まらぬ流れに警告を発している。
横浜市在住の斎藤信子さん(64)は、「横浜事件」で逮捕され、有罪判決を受けた故小野康人(やすひと)さんの長女。小野さんは雑誌「改造」の編集者だった。戦時下の43年、何の罪に問われているかもわからないまま連行され、2年以上拘禁された。事件については何も語らなかったその父は、斎藤さんが9歳のときに病死した。
斎藤さんは中学生になってから母の貞さんから事件のことを教えてもらった。共産主義者でもなんでもなかった父が、共産党再建運動をしたとして拷問され、虚偽の自白を強いられたことを知った。敵国の人間ではなく、同じ国の人間が拷問したという事実に、子どもながらに底知れぬ恐怖感を抱いた。
特高警察が「共産党再建準備会」の証拠としたのは、42年7月に父が参加した知人らとの1泊旅行の写真だった。
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