2013年12月5日09時11分
■映画監督・山田洋次さん
「この国をいったいどんな国にしたいのですか」と安倍さんに本気でうかがいたい。
重苦しい、暗い国、政府の言うことをよく聞いて文句をいわずに、一生懸命働くおとなしい国民。まさかそんな国をイメージしているのではないでしょうね。
ぼくが子供だったころ、日本の軍隊は戦争に負け続けていたのだけど、新聞やラジオは勝利したという報道ばかり。沖縄まで占領されていながら、今思えば実にナンセンスな話だが、まだ日本は勝てると信じていた。
どう考えてもおかしいけど、事実そう思っていた。戦争に負けている、ということは国家機密だった。
ぼくの父親は技術者でアメリカに勝てるわけないと思っていたが、敗戦まで家庭内では、一切そういう発言はしなかった。治安維持法は、庶民の家庭の中も支配していたのだろう。
今は明るくて、楽しい喜劇映画がなかなか作られない。どうしてできないのだろうか。もしかして、この国が、今の日本人が暗いから、ではないだろうか。
年間自殺者3万人の自殺大国。日本人が、とくに若者たちが希望にあふれて明るい表情になるために、何をすればいいのか、ということにこそ、血道を上げてほしいと今の政府に言いたいのだが。
◇
やまだ・ようじ 1931年生まれ。映画監督、脚本家。第48作まで続いた「男はつらいよ」シリーズなどで知られる。2012年に文化勲章を受章。
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