「アリバイづくりはやめて」「茶番だ」。4日、参院の特別委員会がさいたま市で開いた公聴会の会場周辺では、安倍政権が成立を急ぐ特定秘密保護法案に反対する人たちの抗議の声が響いた。公聴会は1時間余りで終わり、意見陳述をした人や傍聴者からも疑問の声があがった。

 公聴会の会場となった結婚式場の周りには、法案に反対する人たち約300人が集まった。「強行採決許さない」「民主主義を破壊するな」などのプラカードを掲げて、公聴会の中止を求める声をあげた。

 国会議員が到着した午後3時半ごろ、規制をかいくぐって敷地内に入りこみ、プラカードを持ったまま寝転んだり座り込んだりして抗議する人も。会場前に立ち並んだ警察官との間に一瞬、緊張が走った。

 公聴会では、意見陳述に立った山崎徹弁護士が「私が公述人となるのが決まったのは、昨日の夜の10時だった」と切り出した。「何の前触れもなく公聴会をして国民の声を聞いたと言えるのか、疑問だ」

 会場には共産党を除く野党議員の姿はなかった。与党が一方的に公聴会開催を決めたことに反発し、欠席したからだ。8議員しか参加せず、1時間10分ほどで終わった。

 傍聴した埼玉県入間市の無職、平山武久さん(71)は「こんなに急に公聴会をやっても国民の声を聞いたことにはならない。これだけで数の力で進めるのなら、権力のおごりと言うしかない」と話した。

 会場近くを通りかかった、さいたま市大宮区の岡田健司さん(63)は「法案は第三者機関などチェック機能について十分に議論されていない。この公聴会はガス抜き以外の何でもない気がします」。

 2歳の娘と一緒に抗議活動を見守った同市内の下山真由美さん(37)は「子どもの将来のために、都合の悪い情報を隠すこの法案を通過させたくない」と語気を強めた。

 議会制度に詳しい駒沢大学の大山礼子教授は「地方公聴会を開いても何の修正もない。ほかの法案と同じように、今回もただ法案を通すためだけの儀式となっている」と話した。

■「もっと時間かけて、大阪でも公聴会を」

 「もっと時間をかけて、国民の声を広く吸い上げないと」。大阪市内で昆布店の経営にたずさわる池上淳子さん(66)は語気を強める。政権側が「国民の意見を聞くため」とする地方公聴会が衆院では福島市(先月25日)、参院ではさいたま市(4日)と東日本でしか設けられなかったことへの不信感だ。

 知る権利を脅かしかねないと指摘され、政府が法案の提出前に実施したパブリックコメント(意見募集)でも反対意見が8割近かった今回の法案。池上さんは「原料の値段の根拠を相手が内緒にしたら、信用できませんやろ。正しい情報がないと判断もできない。建前じゃなく、本音で話す人が多い大阪でも公聴会を開き、採決してほしい」と言い切る。

 弾道ミサイル発射の察知を目的に米軍の移動式早期警戒レーダー「Xバンドレーダー」の配備計画が進む京都府京丹後市。地元が配備計画を受け入れる際に求めた条件は、米兵の態勢や施設の安全性などの情報開示だった。住民の間では、法案が通れば防衛上の「特定秘密」として約束が守られなくなるのではないか、との懸念が広がる。

 反対の声を顧みず、公聴会を2回しか経ていない政権側に対して、地元の区長会の増田光夫さん(75)は「アリバイにもならないほど強引だ」と話す。