【石橋英昭】権力が自分に都合の悪い情報を、いかに人々の目に触れさせないようにしていたか。戦前の報道の差し止め命令の実態を示す貴重な資料が、仙台市の仙台文学館に所蔵されている。特定秘密保護法案の国会審議が大詰めを迎えているが、歴史の教訓が何を示すのか、考える必要がありそうだ。

 戦前・戦中に宮城県大河原町で発行されていた、町の出来事などを取り上げた雑誌「北辰民報」に対し、県知事や警察署長名で出された記事差し止め命令書や、解除通知書など約700点。保管していた発行者の親族が2011年に同館に寄贈した。現在は公開されていないが、研究目的の希望があれば閲覧に応じるとしている。

 資料は1929(昭和4)年から38(同13)年までのもの。初めは日本共産党や朝鮮独立運動をめぐる治安維持法事件の記事が、主な差し止め対象だった。だが、まもなく戦争の影が、地方の小さな出版物にまで及ぶようになる。