社説:秘密保護法案 参院審議を問う…急ぐ自公

毎日新聞 2013年12月05日 02時31分

 ◇これで採決は許されず

 これで成熟した民主主義国家といえるのだろうか。

 国家機密の漏えいに厳罰を科す特定秘密保護法案について、自民、公明両党が4日、会期末の6日に参院本会議で可決・成立させる方針を確認した、という。国民の知る権利や人権にかかわるこれほど重要な法案である。しかも、日々新たな問題点が指摘される中での審議打ち切りはとても容認できるものではない。

 会期が残り3日となった4日、政府与党の動きはあわただしかった。自公による日程合意が行われる一方、国会では午前中に参院国家安全保障特別委員会で、安倍晋三首相に対する質疑が行われ、午後には首相と海江田万里民主党代表らがこの国会初めての党首討論を実施、同日夕にはさいたま市で野党側欠席(共産党のみ出席)のまま同特別委の地方公聴会が強行された。自公からすれば、同特別委でいつでも採決できる状態に持ち込んだつもりだろう。

 野党側の反発は当然だった。党首討論では海江田代表が重ねて慎重審議を求め、「ゆめゆめ強行採決しないよう」くぎを刺した。

 みんなの党の渡辺喜美代表も従来の協調姿勢を軌道修正した。石破茂自民党幹事長のいわゆる「テロ発言」を「おごりと言われても仕方がない大失言」と批判、「この国会はねじれ解消後の試金石。強権的国会であってはいけない」として今国会の会期延長を強く求めた。安倍首相は会期内強行の構えを崩さなかった。

 これを踏まえ3点指摘する。

 国会運営にたずさわる与党幹部に対し、審議時間を十分取るように改めて要請する。参院での審議はまだ5日間で18時間半。対決法案でなかった国家安全保障会議(日本版NSC)設置法の21時間45分に比べても貧弱だ。日々反対の動きを強める国民各層の声に目配りすることも国会の重要な役割である。

 本会議で採決にのぞむその他の与党議員にも言いたい。一連の拙速審議が妥当なのか改めて個々の良心に照らして考えてほしい。特に、自民党リベラル派には今一度党内論議を活性化してもらいたい。政権のけん制役を自任する公明党にも世論動向を踏まえた新たな対応を求める。

 最後に安倍首相に目的を見失わないよう要望したい。この国会の本来の目的は、ようやく軌道に乗りかけたアベノミクスを補強するための経済立法ではなかったのか。このままでは、かえって国民の不安、懸念が増し、せっかくの経済政策の効果が減殺されることにならないか。むしろそちらを危惧する。

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