きのう行われた党首討論は、特定秘密保護法案が議題の中心だったが、政権与党側が今国会での成立を強行しようとする限り、議論が深まろうはずがない。国会運営があまりに強引すぎる。
「ねじれ」解消後の自民党「一強」支配を見せつけられたかのような風景だった。党首同士がより高い見地から理念・政策を戦わせるのが党首討論の意義だが、この日はこれまで以上に、議論のすれ違いが目立った。
民主党の海江田万里代表は特定秘密保護法案について「(今国会会期末の)六日までに仕上げてしまおうということに無理がある」として慎重審議を求めたが、安倍晋三首相は「丁寧に議論し、どこかの段階で終局に至る判断をしないといけない」と、今国会成立を目指す決意を強調した。
首相は野党からどんなに批判されようが、今国会成立の方針を変えるつもりはないのだろう。すでに衆院を通過し、参院でも与党が多数を持つ以上、民主党など野党側への配慮は、もはや不要と考えているのかもしれない。
衆院段階で法案の共同修正に応じた、みんなの党の渡辺喜美代表が、丁寧な審議と会期延長を求めたにもかかわらず、首相は「聞く耳持たず」という風体だ。
首相は党首討論に先立つ参院国家安全保障特別委員会で、特定秘密の監視機能に関し、秘密指定の統一基準作成時などに意見を述べる「情報保全諮問会議」と、統一基準の妥当性を検討する「保全監視委員会」を、政府内に設置する方針を表明した。
しかし、そうした組織を政府内に置く限り、独立性を担保できるはずがない。みんなの党と同様、法案の共同修正に応じた日本維新の会からも、同党が主張する独立公正に監察する第三者機関とは全く別物だ、との批判が出た。
もはや小手先の法案修正や首相の口約束では、法案への国民の懸念は解消できない。衆院の七割をめどとする参院での審議時間も衆院の半分程度にすぎず、審議不足の感は否めない。やはり廃案にして出直すしかない。
委員会採決の前提となる地方公聴会の開催を、野党側との合意なく委員長が職権で決めたり、採決を強行したりと、安倍政権の国会運営はかなり強引だ。
渡辺氏は党首討論で「自由と民主主義に立脚する国会が強権的であってはならない」と指摘した。首相はじめ政権幹部は、すべからく胸に刻むべきである。
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