【男子バレー】グラチャン最下位。いま全日本に何が起きているのか
- 中西美雁●文 text by Nakanishi Mikari坂本清●写真 photo by Sakamoto Kiyoshi
監督には二つの側面がある。発掘・育成と、勝負師。両方を兼ね備えているのがベストだが、なかなかそうはいかないことが多い。たとえば、2代前の監督だった田中幹保。彼は、試合での采配はあまり褒められたものではなかった。しかしながら、彼が発掘し育てた選手たちは、続く植田辰哉監督時代の主力のほとんどを占めることとなった。ゲーリー監督のベンチワークも、たとえて言うならVリーグの1年目の監督を見るようなもどかしさがある。彼のもたらす世界のスタンダードが選手全員に定着し、来年以降は采配についても改善されることを祈るしかない。
90年代にイタリア代表を率いて世界選手権連覇という輝かしい実績を持つフリオ・ベラスコは、今はイランの代表監督だ。イランは10年ほど前から男子バレーの強化を進め、2011年にベラスコを監督に迎えた。今大会はアジア王者として参戦し、イタリアとアメリカを破る健闘を見せている。実は、彼は北京五輪後に行なわれた全日本男子の監督公募に応募したうちの一人だった。条件面、コミュニケーションの不安といった理由で折り合わず、彼の採用は見送られた。ベラスコは最終日の日本戦の後、次のようにコメントしている。
「今日戦った日本は、最悪だった。これまでのバレーボールの常識は、大きい選手はスパイクとブロックはいいがディフェンスはよくない、小さい選手は技術があるというものだったが、近年それは崩れてきている。実際ロシアは大きな選手もきちんとレシーブしている。我々のチームも、大きな選手が攻守ともにできるようになってきた。世界のトップ10になら食い込めていると自負している。私が理解できないのは、日本は背が低いのに、レシーブがよくないということだ」
そして「日本への助言は?」と問われると、「私は数年前、日本男子バレーを改善するための3ページのレポートを日本バレー協会に提出した。私の代わりに全日本の監督になった、名前は忘れたがその彼に内容を聞いてみればいいんじゃないかな? 今改めて聞きたいというなら、それなりの対価を支払ってほしいね」と肩をすくめて見せた。
全日本男子GM桑田美仁によれば、今年の全日本のメンバーは、ゲーリー監督が選出したのではないとのこと。監督選考が長引いたために就任が遅れ、Vリーグや大学リーグなどを視察する時間がなかったからだ。