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国際
【産経抄】補佐役の失脚? 12月4日
2013.12.5 03:12
[産経抄]
日本の歴史のなかで、「名補佐役・名参謀」と呼ばれてきた人物は少なくない。もっとも、作家の童門冬二さんによれば、実際は主人を窮地に追い込んだ人物がほとんどで、本来なら「名」という字を「迷」と変えるべきなのだ。
▼そのなかで、童門さんが本当の「名補佐役」として評価するのが、豊臣秀吉の弟、秀長である。中国攻めなど数多くの武功を立て、天下統一をめざす兄を支えてきた。それでいて、52歳で亡くなるまで、自らの功績をけっして誇ることはなかったという。
▼北朝鮮の張成沢(チャン・ソンテク)・国防委員会副委員長が、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記の「名補佐役」といえるのか、定かではない。少なくとも、側近中の側近だった。正恩氏の叔母の夫である張氏は、北朝鮮の経済、外交政策を実質的に仕切ってきた人物だ。
▼その張氏の「失脚説」が、韓国から流れてきた。以前から、軍上層部との権力争いが指摘されてきた。健康状態が悪化している妻の影響力の低下が関係している、ともいわれる。もっとも、失脚に慎重な見方もあり、情報が錯綜(さくそう)している状態だ。
▼「よき補佐役の死は、偉大な主役にとっても、その一族や家臣、統治下の民にさえ不幸な出来事だったのである」。やはり秀長に共感を覚え、補佐役としての生涯を描いた作家の堺屋太一さんは、『豊臣秀長』(文春文庫)をこう結んだ。
▼経済改革に意欲的とされる「補佐役」の失脚がもし事実とすれば、北朝鮮をめぐる情勢はどのように変わるのか。軍の強硬路線が一層鮮明となり、日本にとっては、拉致問題の交渉相手を失うことになる。何より、「偉大な主役」秀吉と比ぶべくもない、3代目の最高指導者のもとで、「統治下の民」がますます不幸になるのは間違いない。
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