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国会議事堂周辺に集まる法案反対派の人々。労組などの「のぼり」も多数はためく

ヤマ場を迎えつつある特定秘密保護法案をめぐり、「あの人」が活発な動きを見せ始めた。

「この声が聞こえないなら、政治家なんてやめちまえ! 市民の力を集結させて、絶対に廃案に持ち込むぞー!!」

国会議事堂を前に高らかに叫んだのは、誰あろう山本太郎参議院議員だ。「平成の田中正造」事件から1か月、少しは大人しくなったのかと思えばとんでもない。法案阻止のため、今度は「平成の安保闘争」を目論んでいるという。

100万人で国会を取り囲む!

特定秘密保護法案をめぐり、与党側は2013年12月5日にも参院国家安全保障委員会で「強行採決」を行い、さらに会期末となる6日に本会議で可決・成立するという戦略を描く。

これに対し国会・議員会館前では、反対派の市民団体などが連日のように集結、大声で「廃案!」を唱え続けている。耐えかねた自民党の石破茂幹事長が11月29日、「単なる絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらない」とブログで非難したものの(現在は撤回)、かえって火に油、その叫びはますます勢いを増す。

12月3日夜、そんな「荒れる」国会前に、山本太郎議員が姿を現した。以前から法案反対の立場を鮮明にしてきた山本議員だが、「強行採決」目前とあってこの日の演説はいつもにも増してヒートアップ、その中で法案阻止のための「奥の手」を明らかにしたのだ。

「(強行採決を止めるために)たった一つ、たった一つ方法があるかもしれない。できれば避けたい。でもやるならば、採決の日に、議員を国会に入れなきゃいいんですよ!」

市民で国会を「包囲」し、採決そのものを物理的に「阻止」してしまう――その奇想天外な策に周囲も驚きつつ、口々に「そうだ!」の声を上げた。勇気100倍、山本議員はさらに大風呂敷を広げる。

「議員会館、国会に議員が入れないくらい、人があふれるくらいに集まれば、これは阻止できる可能性がありますよね? 1000人と言わず、1万人と言わず、10万人と言わず、100万人ぐらいの人が国会周辺に集まりましょうよ!」

この演説はニュースサイトで中継されていたこともあり、たちまち話題となった。賛同する声もある一方、自民・三原じゅん子参院議員が「なんとお粗末な発想。ご自身が国会議員になられた意味はなんだったのか?」(4日のブログより)と述べたように、批判も強い。

「60年安保」写真に感動「これしかない」

デモによる国会封鎖といえば、参院での採決を実際に阻止した「60年安保」が思い浮かぶ。

実際、山本議員はここ最近、60年安保運動に何度も言及している。きっかけは11月27日、ツイッターを通じて、当時の写真を知ったことらしい。60年6月18日に撮影された、デモ隊が国会議事堂周辺を埋め尽くす光景だ。他のユーザーの投稿を通じてこの写真に触れた山本議員は早速リツイート、感動した様子で、

「来週はこれしかない」

とつぶやいていた。その後、山本議員は計3回にわたってこの写真を繰り返し投稿している。さらには3日付のブログでも、こう「予告」する。

「12月5日、6日は朝から、国会周辺が廃案を求める人々で埋め尽くされる事が、風見鶏政治家にとって、一番の恐怖だろう。やれる事、全てやってやろうぜ。後悔したくないから」

山本議員に呼応するように、4日昼には実に6000人(主催者発表)で、国会の四辺を「人間の鎖」でぐるりと取り囲むアピールも行われた。社民党の福島みずほ参院議員や作家の落合恵子さんも輪に加わり、

「私たち市民の声を聞けー! 強行採決許さないぞー! 戦争準備許さないぞー!」
「廃案だ! ハイアン・ハイアン・廃案だー!」

と「絶叫」する。簡易計測器で測ってみたところ、その音量は80〜90デシベル前後、「電車の中並み」だ。

もっとも平日の昼間とあって、参加者はのぼりを掲げた労組関係者が多く、中には「安保」世代と思しきお年寄りもいた。