「機動戦士ガンダム」などの大ヒットアニメを世に送り出している富野由悠季監督(71)が、2013年もっともブレイクしたマンガ「進撃の巨人」を徹底的にこき下ろしているとしてファンの怒りをかっている。
富野監督は、意気地なしのいじめられっ子が自分の鬱憤を晴らすために書いたような作品であり、過激な性表現以上に公序良俗に反する部分があると断定。自分なら出版させないし「絶対に読みたくない」などと持論を展開している。
富野監督は日本大学芸術学部映画科から、アニメ「鉄腕アトム」などの作者、故手塚治虫さんの虫プロに入社し、フリーになってからは「海のトリトン」「宇宙戦艦ヤマト」といった制作に関わってきた。監督としては1975年の「勇者ライディーン」を皮切りに、1979年には社会現象となった「機動戦士ガンダム」を送り出す、といったアニメ界の重鎮中の重鎮だ。
一方の「進撃の巨人」は13年最も注目された作品の一つで、これまで単行本が11巻、累計発行部数が2500万部以上、海外でもファンが多い大ヒット作品となっている。13年春からアニメ化もされてDVDやBDがバカ売れ。巨人が街を襲う恐怖と、主人公の目の前で母親が食い殺されるというシーンも話題になった。
そうした中、富野さんが2013年11月19日付けのメールマガジンで「進撃の巨人」を叩いた。作者の諫山創さん(27)について、かつては意気地なしのいじめられっ子で、その鬱憤を漫画で晴らしている、と切り捨てた。そして、あれだけのエロとグロが混じり合う世界をマンガにすることは絶対に認めたくないし、「絵にしてはいけない」
としたうえで、
「僕個人としては絶対に読みたくないし、評価もしたくない作品なのです。そういう漫画がこうも受けているというのは、今という時代がかなりひどいということ。」
さらに、そうはいっても作者の諫山創さんは「進撃の巨人」を描かねばならなかった彼なりの理由が垣間見えるし、作品を作り上げるための努力や、漫画家である前に作家になろうとしている努力があるから諫山創さんに関しては許せる、と一応の評価は示した。そして、許してはいけないのは編集者だと話を変えた。編集者の「売れるかも…だったらやっちゃえ!」という思惑があからさまに見えるからだという。
富野さんは、
「編集者は作者の思いを理解した上で、あれとは違う表現方法を探すべきなんです。そういうふうなコントロールをせずに、『進撃の巨人』をああいう形のまま出版するというのは、過激な性表現以前の問題じゃないかと僕は思います」
と語った。売れるという目線しかなくて、こういったマンガを平気でパスさせる無神経さが理解できないし、社会には良識というかインテリジェンスというものが存在していて、大衆の愚にはブレーキがかかるものだと思いたいが、実際にはインテリジェンスがそのように働くことはまれで、「進撃の巨人」をニュースとして取り扱う人たちにも制御は働いていない、などと嘆いた。
ネットではこうした富野さんの考えに納得できないという「進撃の巨人」ファンが多くいて、
「偉そうに。漫画はただ面白かったら良いんだよ」
「ガンダムもファンから見れば面白いかも知れないけど、俺から見たらつまらん」
「巨人よりガンダムのほうが強い!ということですか富野さん」
「また老害爺の嫉妬?」
などといった批判の声が挙がっている。
一方で富野さんファンだと思われる人たちからは「監督の言う通りだ」といった声も出ていて、特に、嫌いなものは貶しまくる富野監督が、作者の諫山創さんについて少し褒めている部分があることに驚いている。
「トミノがこういうって事は、進撃は名作ってことだな」
「嫌いなもの、評価しないものをここまで熱く語るわけないだろw富野にとっては最大級の評価だよ」
「これはベタ褒めじゃん」
などといった意見もネット掲示板やブログに出ている。
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