NHK:受信料の義務化、会長人事に影響も
毎日新聞 2013年12月03日 18時44分(最終更新 12月03日 22時06分)
NHK執行部が会長の任命権を持つ経営委員会の要請に対し、受信料の義務化を明記した回答文書を示したことの波紋が広がっている。3日の衆院総務委員会でも取り上げられたほか、来年1月24日に任期満了を迎える松本正之会長(69)の業績評価にかかわることから、経営委が人選を進める会長人事に影響を与えるのは必至だ。
パソコンやスマートフォン(多機能携帯電話)の普及に伴い、番組を放送と同時にインターネットに配信するサービスの実現など通信分野への進出が、今後の放送界の死活問題になっている。だがNHKが本格参入するにはテレビ放送の受信機の有無を徴収の根拠とする現行の放送法を改正し、受信料制度を見直す必要がある。松本会長をトップとする執行部が義務化を示したのは、ネット利用者からも受信料を徴収できるようにするためだ。
経営委が今年2月に受信料制度の見直しを求めたのに対し、執行部は8月、「義務化」を明記した文書を提出。9月には末尾に疑問符を付けるなど後退した内容にして提出し直した。これに対する経営委員の受け止め方はさまざまだ。「ネット時代に向け、一歩前進」と評価する声がある一方で、「トーンダウンしてがっかりだ」と改革路線が弱まったと見る委員も。別の委員は政治介入を招きやすくするとして「自由に番組が作れなくなる」と義務化に反対する。
3日の衆院総務委では、浜田健一郎経営委員長が野党委員から、事実確認を迫られる一幕もあった。今回の執行部の対応は、経営委が「改革姿勢」あるいは「腰砕け」のどちらと見るかによって松本会長続投の追い風とも逆風ともなる。経営委は今月中に新人候補と現職を比較して新会長を選び、決まり次第、義務化を含めた受信料制度の見直しに向け、議論を本格化させたい考えだ。【土屋渓、有田浩子】