このコラムの内容は、2008年(平成20年)9月現在のものです。
入退去時のクロス張り替え工事から、設備や器具等の交換、大規模な外壁などの塗り替え工事まで。
賃貸住宅のオーナーさんは、長く経営をしていく中でさまざまなリフォーム工事を行います。
それらの工事にかかった費用は税務申告において、どのように処理すればよいのでしょうか。
リフォーム支出についての考え方を解説します。
賃貸住宅のリフォーム(修繕)の工事支出は、確定申告において、「修繕費」として一度に経費処理できるのか。あるいは「資本的支出」として、数年間にわたって少しずつ「減価償却費」で処理していくべきなのか。オーナーさんは判断に迷うことがあります。その判定を、税法の規定に従ってわかりやすく示したのが、下の『「資本的支出」と「修繕費」の区分判定フローチャート』です。工事支出の金額や周期、目的などに沿って<YES・NO>で「資本的支出=減価償却費」か「修繕費」かの判定ができるようになっています。
フローチャートのうち、3番目のチェックポイントに「明らかに価値を高めるもの又は耐久性を増すもの」とありますが、通達ではこれに該当するものとして、下記の項目が例示されています。
また、4番目に「通常の維持管理のためのもの」がありますが、これに該当するものとしては、下記の(1)が例示されています。
(2)〜(4)は現在の通達にはのっていませんが、旧通達に例示されており、「修繕費」になります。
税法の規定は、必ずしも具体的ではありませんので、現実のリフォーム支出をどちらで処理するのか、不明瞭な点があることは否めません。納税者はできるだけ「修繕費」を選びたいのですが、税務調査で否認されることもあります。金額が大きくなると、悩ましい問題になりかねません。
ここで、いくつか具体例をQ&A形式でご紹介しましょう。
賃貸住宅のリフォーム工事で、エアコン ・TVモニター付きインターホン ・洗浄機能付き便座 ・給湯設備などの減価償却資産を取得した場合は、その「取得価額」に応じて税務の取り扱いが異なります。詳細は下記をご確認ください。なお、基本は消費税込みの金額で判定します。
では、わかりやすく事例をあげて考えてみましょう。以下のケーススタディをご覧ください。
この場合、エアコンの取得は修理改良などの支出ではなく、減価償却資産の取得です。そのため、「修繕費」か「資本的支出」かの判断基準の1つである「20万円未満」の金額基準とは関係ありません。
また、修理改良などの支出の場合には、例えば屋根や外壁の塗装工事など支出金額が高額でも、通常の維持管理のためのものは「修繕費」と認められるなど、判断基準が金額だけではありません。一方、減価償却資産を取得した場合の税務上の取り扱いは、上のケーススタディのように「取得価額」によりますから、この点も異なります。
プロフィール
税理士法人 四谷会計事務所、社員税理士。東洋信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)で個人の資産運用相談・経理システムの開発・本社経理税務部門等、幅広い業務を経験後、四谷会計事務所にて資産税を中心に担当。パナホームの各種相談会・セミナー・研修会等の担当講師。著書に『知って得するやさしい税金Q&A』(鳳書院・共著)。AFP 、2級FP技能士、宅地建物取引主任者資格をもつ。