もう少し子どもたちの力を信じよう。日本の子どもの学力は国際的にみて高い。足りないのは自信である。

 世界65の国と地域が参加した国際学力調査PISA(ピザ)の成績が公表された。日本の高校1年生は、読解・数学・科学3分野とも、順位と得点が向上した。課題だった学力の上下格差も、改善の傾向にある。

 弱点ははっきりしている。以前よりはよくなったが、相変わらず自信がないことだ。

 試験を受けた生徒へのアンケートによれば、日本は実際は数学が世界7位なのに、「数学の授業についていけないのでは、とよく心配になる」子が多く、自分は「成績がいい」と思う子はとても少ない。

 好成績の割には、答えを書かずに失点する割合も高い。ダメでもともと、できるかもしれないから解いてみるという積極性に欠けるようだ。

 謙虚さは成長に大切だし、謙譲を尊ぶお国柄もあろうが、過ぎたるは及ばざるがごとしだ。「社会に出て、先生がいなくなっても自分を高められるかどうかは、前向きに学ぶ心の有無にかかっている」と、PISAの分析担当者は指摘する。

 近年、日本の子どもたちは「学力が下がった。規範意識が低い」と言われ続けてきた。

 首相きもいりの教育再生実行会議が2月に出した提言に、象徴的な一節がある。

 「陰湿ないじめが相次ぎ、世界に伍(ご)していくべき学力の低下などが危惧される中、教育の再生は我が国の最重要課題となっています」

 「誇りある日本」を説く割には、次代を担う子どもたちに対して悲観的すぎないか。

 引き金の一つは、2003年の第2回PISAで日本が急落したことだった。学力低下批判に油を注ぎ、「脱ゆとり教育」への転換を決定的にした。

 だが、09年に続き、これで2回続けて成績は上がった。学力向上策の成果もあるかもしれないが、そもそも「不振」とされた時期でも、数学や科学は先進国の中では上位だった。

 規範意識も、そんなに低いか疑問だ。今回の調査では、日本は遅刻や授業のサボりが参加国で最も少ない。政府調査や統計で、いじめの被害経験や少年犯罪の動向をみても、悪化しているとは言いがたい。

 勉強ができない、だらしないと怒られ続けて、できるようになる子は少ない。どうすれば子は自信を取り戻し、力が伸びるか。まずは大人が色眼鏡で見ないことから心がけたい。

この記事に関するニュース
  • レコメンドシステムによる自動選択