欧州で拡大するレンタルやシェアリング―衣料品から家電まで

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  • RUTH BENDER

 アヌーク・ギリスさん(40)はネットで注文したオーガニックコットンのジーンズをよく身につけている。だが、それは自分のジーンズではない。

 ギリスさんは100ユーロ(約1万4000円)前後で販売されているこうしたジーンズを購入するのではなく、オランダの小さなファッションブランドのマッド・ジーンズと1年のレンタル契約を結んでいる。保証金20ユーロ、毎月の負担は5ユーロだ。

[image] Mud Jeans

マッド・ジーンズのバート・ファン・ソンCEO

 ジーンズを1年レンタルした後は、そのジーンズを購入もしくは返却することが可能で、別のジーンズに交換することもできる。

 マッド・ジーンズのバート・ファン・ソン最高経営責任者(CEO)は「高級ジーンズをすべての人にはいてもらいたい、という発想だった」と話す。レンタルされたジーンズはリサイクルされて新しいジーンズに生まれ変わるか、もしくはレンタル終了時に中古品として販売される。

 この仕組みは、懐具合が厳しい欧州の消費者を再び取り込むために企業が行っている取り組みの一つだ。欧州の消費者は衣料品から芝生の手入れに至るまでさまざまな財やサービスについて、レンタルやシェアリング(共同利用)、さらにはバーター取引(物々交換)といった手法にますます頼りつつある。ユーロ圏危機と欧州経済の回復の鈍さがこうした努力の必要性を高めている。高い失業率が個人消費の妨げとなっているためだ。

 スウェーデンの衣料小売り大手ヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)のような企業が、最近までネット関連の新興企業や消費者に支配されていた市場に一斉に参入しつつある。目先の目標の1つは消費者を店舗へ呼び込むことだが、より長期的な目標も追求している。

 英調査会社ユーロモニターで消費者調査を担当する責任者のサラ・バンフリー氏は「ブランド構築の手段としてシェアリングの手法を取り入れる消費財関連企業が増えている。だが、これは新たな収益の流れに発展する可能性を秘めている」と話す。

 H&Mは今年2月から、メーカーにかかわらず中古の衣料品を店舗に持ち込めば割引券などを配布する事業を世界42カ国で始めた。H&Mはその中古品をスイスに本拠を置く衣料と靴のリサイクル会社に販売している。

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 オランダの小さな町、ティルブルフに住むギリスさんは定期的にネットで中古品の衣服や靴を購入するほか、共同ガーデンで野菜を育てている。ローマへの旅行では、低予算で旅行する人々やレンタル用の部屋やロッジをもっている人のための仲介サイト「Airbnb」を利用し、部屋を予約した。

 フランス政府の支援を受けている調査研究機関で消費者調査の責任者を務めるパスカル・ヘーベル氏は「(欧州では)あらゆる物に対するこういった需要が強い」と指摘する。

 財やサービスのシェアリングやレンタルは新しいビジネスモデルではない。だが、2008年の金融危機とデジタル技術の拡大で大きく発展した。このためシェアリングに焦点を当てた新興企業が次々に登場。その多くはシリコンバレーに本拠を置いている。この考えを支持する消費者は欧州で増えている。高い失業率と政府の緊縮財政政策による将来の不透明さが、より長期に節約できる方法を彼らに模索させているためだ。

 BNPパリバ傘下の消費者向け小口金融セテレムの調査部門が発表した調査結果によると、調査対象となった欧州の消費者の68%が今後数年間のうちに中古品を購入するだろうと回答した。現在、中古品を購入していると回答したのは58%だった。また、財やサービスのバーター取引をするだろうと回答したのは53%で、すでにそうしていると回答したのは31%だった。

 コンサルティング会社のフロスト&サリバンは、欧州ではカーシェアリングに用いられる車が2011年の70万台から20年には1500万台に増えると予測する。

 今や消費財関連企業もこのビジネスモデルに参入している。7月には仏小売業者インテルマルシェが収益拡大を目指し、349ユーロ以上の家電製品や電子機器を対象にしたレンタル事業を開始した。今後はガーデン用の家具や繊維製品にも事業を拡大していく予定だ。

 インテルマルシェの大型スーパー責任者を務めるデービッド・ルクレール氏は「特に今日の若者は最新の電子機器を使いたがる。だが、必ずしも買う必要はない」と話す。

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