<パリ航空ショー>

AW609ティルトローター

 パリ航空ショーの2日目、ベル・ヘリコプター社とアグスタウェストランド社は、両社共同で進めてきたBA609民間向けティルトローター機の開発を、今後はアグスタウェストランド社だけが単独で進めることになったと発表した。この開発のために、両社はこれまで合弁で「ベル・アグスタ・エアロスペース社」(BAAC)を設立し、その統括の下に仕事を進めてきたが、ベル社がBAACの持ち株をアグスタウェストランド社へ売り渡すことにしたもの。最終的な契約発効までには米国および欧州当局の独占禁止法に関連する承認が必要となる。

 ただしベル社は、今後も技術面、製造面で協力する。また将来、1機売れるごとにライセンス料をアグスタウェストランド社から受け取ることになっている。

 BA609の開発について、両社の協力は10年ほど前に始まった。しかし最近数年間は開発作業が停滞気味で、アグスタウェストランド社は苛立ちを示していた。そして結局、単独で開発を進めることになったもの。

 原型機はこれまで、アメリカとイタリアで1機ずつ飛んでいたが、アメリカ機は今後もテキサスの開発拠点で飛行を続け、さらに追加2機がイタリアで製作される。

 これでBA609はAW609と呼ばれることになり、FAAの型式証明も全てアグスタウェストランド社が取得する。取得目標は2015年。

 ベル社はBA609を手放すことにより、ティルトローター機の開発にかかわっていた精力を軍用V-22オスプレイに集中できるようになる。これで同機の新たな改良計画も進むはずで、いわばAW609への移行は両社にとって利害が一致したことになる。

 アグスタウェストランド社としては、ティルトローター機のように垂直飛行と高速・長航続の巡航飛行ができる航空機は今後、必ず大きな需要につながると見ており、積極的な販売促進につとめると意気込んでいる。

 用途は一般民間市場のほか、警察、消防、そしてイタリア国防省にも売りこむ計画。

 量産機の引渡し開始は2016年の予定。

(西川 渉、2011.6.29/加筆2011.6.30)

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