脳神経外科医 吉村紳一

 こんにちは、吉村です。この欄では「脳卒中予防に関する最新情報」を紹介しています。皆さん、一緒に勉強しましょう! 今回は「定位放射線治療」についてお話しします。

 さて放射線治療は、通常は腫瘍に対して行われます。脳血管の病気にも有効なのでしょうか?

 そう、放射線治療は脳においても主に腫瘍に対して行われますが、「定位」放射線治療は脳卒中の原因となる脳動静脈奇形という病気にも有効なのです。「定位放射線って何?」という声が聞こえてきそうですね。簡単に言えば頭を固定しておいて、脳の一部に向かって多方向から放射線を当てる方法です。そうすることで狙った部分だけに高い量の放射線を当てることが可能なのです。

 脳動静脈奇形は血管の塊なのですが、その構造が複雑なため、外科手術が難しい病気です。しかし、定位放射線治療を行えば2〜3年で徐々に小さくなり、消えてしまうのです。頭にフレームなどを付けて、1時間ほど寝ているだけで切らずに治るのです。保険診療で、入院も2〜3日です。すごい治療ですね!

 「じゃあもう手術なんてやめて、全部この治療でいいじゃないか!」と思いますよね? 私も当初そう思いました。ところが、この治療法には一つだけ弱点があります。血管の塊が小さくないと消えないのです。具体的には最大径3センチ以下が良い適応とされていて、それ以上のサイズでは治る確率がグンと下がってしまいます。それでは大きなサイズの人は諦めないといけないのでしょうか?

 いいえ、そうではありません。放射線治療ができるように小さくすればよいのです。どうやって小さくするか? そう、血管内手術で周囲の部分を詰めればよいのです。詰めて3センチ以下になったら放射線をかけるのです。私もこれまで多くの患者さんにこの組み合わせを行ってきましたが、治療成績は非常に良好です。体に優しい治療の組み合わせで治るなんてすごいと思いませんか?

 以前は不治の病とされていた病気が、医学の進歩によって体に優しい治療で治るようになってきているのです。日本は世界一の長寿国ですが、同時に世界一の高齢化国でもあります。ですから体に優しい治療も世界一でなくてはならないはずです。今後も気を引き締めて頑張りたいと思います。

 (兵庫医科大学脳神経外科主任教授、大垣徳洲会病院外来担当)