<新機種>

ベル・ヘリコプター2題

マゼラン

 ベル・ヘリコプター社が新しいヘリコプターの開発に乗り出すもよう。愛称「マゼラン」と呼ばれる中型双発機で、現用ベル412の後継機となるが、412より大きく、航続距離が長く、経済性にすぐれた機材をめざすという。

 主目的は海洋石油開発の洋上支援飛行。他にもさまざまな民間用途を想定し、軍用にも使われることを期待している。海底油田は近年、技術の進歩によって比較的深い海でも油井の掘削ができるようになったことから、開発地点が沖合遠くまで広がり、ヘリコプターも長航続の大型機が求められるようになった。それに応じて、アグスタAW139を初め、ユーロコプターEC175やシコルスキーS-76D、S-92など新しい機材が勢いを増し、ベル機はじりじりと後退を余儀なくされてきた。

 新しいマゼランは、そうした動きをはね返し、競合機に対抗して、充分なペイロードと航続性能をもつ機材として開発される。詳細は今年3月フロリダ州オーランドで開催されるヘリエクスポで公表される予定。

モデル429

 ベル・ヘリコプター社では現在、民間むけにはモデル206L4、407、412、そして新しい429の生産が進んでいる。

 ベル429は2005年に開発が始まり、2009年7月に型式証明を取得した。その後1年半、2010年末までの引渡し数は8機にとどまったが、今年末までには約75機を生産する見込み。

 その1機が近く日本にも登場する。浜松の聖隷三方原病院を拠点とするドクターヘリ事業に使われるもので、目下アメリカで救急装備の取りつけと確認飛行にあたっている。2月末にはアメリカを出て、日本へ向かう予定。

 以下の写真は院長補佐の岡田眞人先生に送っていただいた。いずれも今年初めアメリカで撮影された由である。


 ベル429ドクターヘリ。見慣れた塗装のようだが、
アメリカ国籍の登録記号(Nナンバー)をつけている点が珍しい。


尾部には不思議な形をしたテールガードがついた。
切迫した時間に追われる救急関係者が、
うっかりして尾部ローターに巻き込まれるのを防ぐため。


 ベル429は片発停止でも飛行が継続できるカテゴリーAの能力を持ち、
パイロット単独の計器飛行も可能。
エンジンはプラット・アンド・ホイットニー207D1/D2(729shp)が2基。


救急ヘリコプターとしてはキャビンが広くて柔軟な運用ができ、
速度が速くて、高温高地性能にもすぐれている。
また整備作業がやりやすく、コストもかからない。
救急患者に対しては迅速かつ安全で、信頼性と品質の高い治療が可能。

 三方原病院向けのベル429は夜間飛行に備えて暗視装置(NVG)を装備している。また計器飛行装備も持ち、将来いつの日か病院ヘリポートに向かってポイント・イン・スペース方式の計器進入をすることになろう。これが航空局の承認になれば日本では初めてのことになる。

 また、最終的に、この新しい機種をドクターヘリに使うためには、機長の30時間以上の飛行経験が必要。したがって三方原病院で実用化するまでには、5人のパイロットが30時間ずつ、合わせて150時間の慣熟訓練飛行をすることになっている。これには今年5月頃までかかるらしい。

【関連頁】
   ベル429日本に飛来(2010.4.21)

(西川 渉、2011.1.28)

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