来年度の税制改革の焦点の一つが、自動車への課税だ。

 総務省の有識者会合がまとめた報告書には、販売が好調な軽自動車の税金を重くする考えが盛り込まれた。

 報告書にはうなずける点も少なくないが、国と地方の縦割りを前提に、税収の帳尻あわせにとどまっている。複雑になりすぎた自動車税制を、根本から見直す視点が必要だ。

 自動車には、購入時に自動車取得税が、車検時に自動車重量税がかかり、さらに「保有」に伴って自動車税や軽自動車税が毎年、課される。課税者は国と都道府県、市町村の3者に分かれ、税収を国と地方、都道府県と市町村の間で配分するなど、複雑きわまりない。

 このうち、購入時に価格の5%を払う取得税(地方税、年約1900億円)が「消費税と重複している」として、消費税率が8%に上がる14年4月に軽減され、10%となる時点で廃止される。

 そこで、取得税の減収にどう対応するか、地方税を担当する総務省の有識者会合が対応を検討してきた。

 報告書の基本的な主張は、こんな内容だ。地方側の税収は確保する▼取得税にはエコカー減税の仕組みがあり、その効果を自動車税に組み込む▼軽自動車税は自動車税と比べて低すぎ、適正化が必要――。

 エンジンの排気量が660cc以下の軽自動車税(自家用)は現在7200円。一方、660cc超の自動車税は排気量が大きくなるほど段階的に高くなる。最も安くても、軽自動車税の4倍強である。

 これが市場や貿易をゆがめているとして、貿易自由化交渉でも海外から批判されている。軽自動車の性能が高まって一般の小型車との差は縮まっており、手直しは必要だ。

 ただ有識者会合の姿勢は、与党からいろいろな注文をつけられたためとはいえ、目先の対応にとらわれすぎていないか。

 消費増税分は社会保障に充てられるが、財政が楽になる自治体もあると見られる。自動車分野の減収を自動車がらみの増税で単純に穴埋めすることに、納税者が納得するだろうか。

 技術革新は急ピッチだ。ガソリン車の燃費競争に加え、ハイブリッド車に続いて電気自動車なども普及すると見られる。

 さまざまなエコカーを後押しするのに、どのような税制がふさわしいのか。ガソリンなど燃料への課税のあり方を含め、国・地方にまたがる税制の全体像を描き直さねばならない。