★ 『ルパン三世』ファーストシーズンを見ている。
まずはその作画である。
車が猛スピードでカーブを曲がる時に、外に大きく膨らむといったリアルな作画をしたのは、『ルパン』が初めてだろう。
ルパンの手のアップがあって、そこにムダ毛が生えているなんてのもリアルだし、初めて。
だが、一方でマンガ的なコミカルな描写もある。
車が爆発。煙の中から出てきたルパンと次元の髪の毛はチリチリ、服はボロボロ。車はエンジンとフレームとハンドルだけを残してキコキコ走ってる。
これなんかは非リアリズム。
『ルパン』には、リアリズムと非リアリズムが混在している。
あるいはこんな描写。
次元が走る時は、被っている帽子が風で飛ばないように手で押さえて走る。次元の帽子に対するこだわり。
これなんかは粋でカッコイイ。それがスタイルとして決まっていて、そのまま次元のキャラクターになっている。
★さて、第1話「ルパンは燃えているか」、第２話「魔術師と呼ばれた男」。
テーマは『女』だ。
第1話で、峰不二子に裏切られたルパンは語る。
「裏切りは女のアクセサリーのようなものさ。いちいち気にしてたら女を愛せない」
とハードボイルドの探偵のようなせりふを語る。
男は、いい女に翻弄されて生きる生き物なのだ。
このテーマは第2話にも引き継がれる。
裏社会の魔術師パイカル。手から炎を出し、宙に浮き、銃弾やバズーカ、手榴弾も通用しない不死身の男。
彼は、＜耐熱防弾効果の液＞の設計図を書いたフィルムを取り戻すために、不二子を追っているが、実は不二子を愛している。
不二子が望む＜強い男＞になろうとしているし、愛されたいと思っている。
だが、不二子が欲しいのは、パイカルではなく、＜耐熱防弾効果の液＞の設計図。
作品では描かれていないが、不二子は設計図を手に入れるためにパイカルに近づき、「愛している」と言ったのだろう。体の関係もあったのかもしれない。
結果、パイカルは不二子を愛してしまった。そして裏切られた。
だが、パイカルは不二子を諦めきれない。ルパンの様に「裏切りは女のアクセサリーのようなものさ」と割り切ることが出来ない。
そして、不二子の愛情を求め、得られないまま死んでいく。
何と哀しい物語だろう。
女の魔性に囚われ、翻弄されて死んでいった男の悲劇。シニカルでニヒルな物語。
こんなテーマを描いた作品は、前にも後にもない。
作画といい、物語といい、『ルパン三世』ファーストシーズンは本当にすごい。
大人になって改めて見ると、子供の時、わからなかったことが見えて来る。