就活のオキテ

就職のオキテや会社のオキテの著者である、サカタカツミの、就活について、サクッと読めるけど、意外に役立つコラム。

就活生を戸惑わせる企業。

学生が就活生となり、最初に戸惑うのは『自分が何をしたいのか、考えること。そして、それを言葉にすることを求められること』である。ただ、この戸惑いにはいくつかの要因が複合的に絡み合っている。『やりたいこととやりたい仕事は違う問題』が、顕著な例だろう。この二つを混同すると就活は混迷を極めていくのだが、指摘できる人は少ないし、この二つを意図的に混同している人は少なくない。結果として、仕事のことを考えれば良いのに、人生を考えさせられてしまう。

「この会社に入って、なにがやりたいですか?」という質問を就活生に投げかける採用担当者は少なくない。この質問がとても重要であると考えているのだろう。まるで息を吐くようにこの台詞を口にする。しかし、この質問こそが、新卒採用という仕組みのゆがみを象徴しているといえる。新卒採用ではなく中途採用の現場でこの質問をする採用担当者がいたら、その人は馬鹿である。人が足りない、こういう能力を持つ人が欲しい、即戦力を採用する、という流れがごく一般的な中途採用である。

企業は人を雇う時に本来は「こういう仕事があります。こういう能力を持っている人にお任せしたいです。誰かいませんか?」というのが筋なのだ。ところが新卒採用において、人を雇う時の大原則のようなものが実施されているケースはほとんどない。ウチの会社は素敵です、先輩社員は生き生きと働いています、活躍できるフィールドは無限です、と採用担当者は謳い、その延長線上で、元気な人、リーダーシップのある人、自律的に活動できる人が欲しいと、曖昧な話を重ねる。

従来の新卒採用という仕組みは、安価に労働力を確保する手段としてはまだ機能していると考えても良い。が、採用プロセスの形骸化は著しい。その最たるものが『人材要件定義が曖昧であることのしわ寄せを、就活生に押し付けてしまっている』点だろう。就活生を戸惑わせ、混乱に陥れている張本人の一人は、間違いなく「あなたはこの会社で何がしたいですか?」と、いまだに質問している採用担当者だ。その質問に真面目に答えてもその仕事をさせてくれるわけでもない、というオチまでつく。

就活や転職に関する連載をしています。
就活生にお勧めする五冊を紹介しています。