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【特定秘密保護法案】

<国家のヒミツ>帝国議会でも同様論戦 76年前に軍機保護法改正

 「秘密の範囲は」「憲法違反じゃないか」−。特定秘密保護法案をめぐる国会審議とよく似たやりとりが、七十六年前、帝国議会で交わされていた。スパイ活動に対する重罰化などを盛り込んだ軍機保護法改正案をめぐり、乱用を危惧する国会議員は厳しい質問を繰り返していた。 (飯田孝幸)

 改正軍機保護法案は日中関係が緊迫する一九三七年二月、「明治期に制定された現行法は時勢にそぐわず、不十分」として政府が帝国議会に提出した。

 議員「予算審議するには、軍隊の組織、内容、軍の動きも調べる必要があるが、これは軍機保護法で処罰されるのか」

 政府側「秘密と知りながら質問すれば秘密の探知・収集にあたる」

 秘密に指定された事柄は国会で十分に審議することができない。その懸念は今の特定秘密保護法案にもつながる。帝国議会で質問した議員は政府答弁に対して「憲法政治の破壊だ」と批判している。

 大臣が秘密を決めることで、恣意(しい)的な運用が広がることへの懸念も指摘された。

 議員「現行法は何が軍事上の秘密かを裁判所が決めている。改正案では大臣が命令で決めたものが秘密になり、その命令に基づいて処罰することは憲法上問題だ」

 延々とやりとりが続いた後、政府側は「裁判になった場合は、(秘密をめぐる大臣決定の妥当性を)裁判所が決める」と答弁した。

 国が秘密と言えば秘密なんだ、という姿勢が垣間見える場面もある。議員の一人が、どういうものが秘密にあたるか、次々と質問していく。そして…。

 議員「一個師団が何人かというのは秘密か」

 政府側「そうです」

 議員「そんなこと小学生でも知っている」

 審議の結果、軍機保護法改正委員会は「高度の秘密なるをもって本法の運用にあたるべし」という付帯決議を採択し、法の乱用に歯止めをかけようとした。これを受けて海軍大臣は「法の適用にあたって、慎重に考慮して誤りのなきようやりたい」と答弁している。

 しかし、日中戦争が始まった後の三七年十月に施行された改正軍機保護法は乱用される。内務省がまとめた外事警察概況などによると、三七年の摘発人数は三十八人だったが、三八年五十人、三九年二百八十九人(四〇年は不明)と年々増加。趣味で写真を撮影していて軍事施設を写してしまったというケースも多く、起訴率は4%にも満たなかった。このため、四〇年には憲兵本部司令部長が「法の解釈に適切さを欠くものがある」と現場に注意している。

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