諦める力~勝てないのは努力が足りないからじゃない[Kindle版]

為末 大 プレジデント社 2013-06-06
売り上げランキング : 2656
by ヨメレバ

為末さんの「諦める力」がすばらしかったので、何日かに分けて紹介していこうと思います。これ必読。もっと早く読みたかった…。

為末大「諦める力 」:もっと早く読んでおきたかった…と思わせる一冊 : ihayato.書店
「頑張る」人は一流になれない : ihayato.書店

「向いてないよ」と伝える優しさ

成功する確率の低い若者には「きみは、この先に進んでも成功するのは無理だよ」と言ってあげる大人が必要なのではないだろうか。「きみが成功する確率は万馬券並だ。だから今の競技は諦めて、こっちに進んでみたらどうだろう。僕はきみがこっちに向いていると思うよ」。


ぼくはしばしば「イケダさんみたいに、ブログだけで食っていけるようになりたいんですが、どうしたらいいですか?」相談を受けます。

そういうときは、部外者であることの特権として、なるべくその人の可能性を断ち切ることを意識してアドバイスします。

つまり「なるほどー、率直に申し上げて、あなたはブログだけで生計を立てるのは難しいと思いますよ。もちろん、毎月2〜3万円なら稼げるとは思いますが…もっと他に、やるべきことがあるかと」と伝えてしまうのです(見込みがある場合は「いいですね!2〜3年くらい本気で毎日更新やってみるといいと思いますよ。最大限アドバイスします」と伝えます)。

こうしたアドバイスは嫌われるリスクも伴いますが、彼・彼女の今後の人生を考えると、そのリスクを取る価値はある答えです。

何度も強調してますが、プロブロガーになるのはそんなに甘い話ではありません(何度も言うけど、「ブログで食う」のはマッチョな道ですよ)。確率的に言っても「プロ野球選手になりたい」という願望とそう変わらないと思います。幼ければ夢を見させるのも良いかもしれませんが、いい大人に叶わない夢を追求させるのはかえって可哀想です。ダメならダメ、と可能性を切ってあげます。


可能性がなくなっていくと聞くと抵抗感を示す人もいるけれど、何かに秀でるには能力の絞り込みが必須で、どんな可能性もあるという状態は、何にも特化できていない状態でもあるのだ。できないことの数が増えるだけ、できることがより深くなる。

この世には無限の選択肢があります。プロブロガーなんて無理ゲーな道を目指すことに時間を割くなら、もっと別の道を模索した方が効率的です。「この道は自分には無理だ…」という経験を繰り返していけば、次第と「このくらいしか自分にはできることがない。でも、これなら進んでみてもいいと思える」という道に出会うことができます。


誰かが語る「あなたにはこの道は無理だと思うよ」というアドバイスが、間違えている可能性もあるでしょう。が、ある意味無責任ですが、それはそれでいいと思うんです。

「あなたには無理だと思うよ」と言われても、やる人はやります。ぼくもツイッターとかで「イケダハヤトみたいな未熟な人間が、プロの物書きなんてなれるわけない」と何度も言われてきました。が、ぼくは見ての通り、物書きとしてメシを喰ってます。何を言われようと、関係ありません。否定的なアドバイスというのは、本気の人には届かないのです。

また、そういうアドバイスは、次のような意味での「優しさ」も含んでいます。

北野武さんが、あるインタビューでこんな話をしていた。子どものころ、武さんが何かになりたいと言ったとき、武さんのお母さんがこう言ったそうだ。

「バカヤロー。おまえがなれるわけないだろ!」

武さんは、お母さんのことを「ひどいことを言う母親だろ?」と言わず、「そういう優しい時代もあったんだよ」と言った。

何にでもなれるという無限の可能性を前提にすると、その可能性をかたちにするの本人(もしくは親)の努力次第といった話になってしまう。しかし「おまえはそんなものにはなれない」という前提であれば、たとえ本当に何者にもなれなくても、誰からも責められない。もしひとかどの人間になれたら「立派だ、よくやったな」と褒められる。武さんは、それを「優しさ」と言ったのではないだろうか。


ぼくらはつい、人の可能性を潰したくない、人を傷つきたくない、嫌われたくない、という思いから、他人の可能性を否定することを避けます。が、自分がよく知っている道については、後に続こうとする人たちの可能性を「切る」ことは、先人の責務だとすら思います。

というわけで、「私、プロブロガーになれますか?」という相談をしたい方はお気軽にご連絡ください。かなりイケてるならお手伝いしますし、難しそうであれば、率直に「無理だと思いますよ」と伝えます。可能であれば、ぼくがわかる範囲で、他の領域の適性についてもお伝えします。

無限の可能性を断ち切りましょう。そうして、道は狭く、深くなっていきます。ぼくは死ぬまで、文章を書きつづけようと思っています。


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