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汚染牧草一時保管限界 独自の炭化処理法模索 宮城・蔵王
 | 牧草地の一角に一時保管されている汚染牧草。一部は腐敗が進んでいる |
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宮城県蔵王町は、福島第1原発事故で放射能に汚染された牧草に関し、独自の処理方法を模索している。国の基準(1キログラム当たり8000ベクレル)以下の汚染牧草について県は、市町村が一般廃棄物と混ぜて焼却処理する方針を示しているが、住民の合意形成が難しく進んでいないのが実情。汚染牧草の一時保管を続ける蔵王町内の畜産農家からは、汚染拡大や風評被害を懸念する声が強まっている。
肉牛と乳牛約120頭を育てている蔵王酪農センター(蔵王町)は、原発事故が起きた2011年産の汚染牧草ロール約1000個を牧草地の一角に一時保管している。
「カラスが保管袋に穴を開け、雨水を吸った牧草は腐敗している。近くの川に流れ出れば、汚染が広がりかねない。風評被害が起きたら、もう酪農はやっていけない」。同センターの菅井啓二常務理事はため息をつく。
畜産が盛んな蔵王町内には国の基準以下の汚染牧草ロールが約3000個あり、畜産農家26軒が一時保管している。町は1カ所に集めることも検討したが適当な町有地がなく、町内での焼却処理は住民の理解が得られないとして見送っている。
町は8月末、生産団体や地元農協などでつくる対策協議会(会長・菅井常務理事)を設立した。宮城大食産業学部の富樫千之教授(バイオマス)の協力を得て、新たな処理方法の開発に取り組んだ。
富樫教授は炭化物が放射性セシウムを吸着する性質に着目し、汚染牧草と炭化したもみ殻を混合した上で、セシウムの沸点(671度)以下の400〜500度で炭化する実験を試行。混ぜるもみ殻の量でセシウム濃度をコントロールでき、重さや容積を減らせるという結果を、11月中旬の対策協で報告した。
富樫教授は「汚染牧草のセシウムは炭化物に封じ込め、大気中への飛散もほとんどない」と安全性を強調。排出される炭化物は放射性セシウム濃度が低くなるよう調整し、道路の基盤材料などに活用するよう提案した。
町は実験結果を基に、汚染牧草の炭化処理を国の補助対象とするよう環境省に要望した。ただ、低レベルでも放射性物質を含む炭化物の利用には反発も予想され、実現できるかどうか不透明だ。
町は「汚染牧草はたまる一方で、畜産農家はいつまでも持ちこたえられない。近隣自治体にも理解を呼び掛け、連携して問題解決に取り組みたい」と説明する。
2013年12月02日月曜日
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