あめ色のカーテンが何層にも重なる。お日さまを浴びてテカテカしている。
福島県伊達市梁川町五十沢地区の農業岡崎靖さん(51)は3年ぶりにあんぽ柿作りに精を出す。
ひと月干す。実が凝縮し、甘味が増す。
伝統製法は放射能も濃縮した。
福島第1原発事故の起きた2011年、基準値を超す放射性セシウムが検出され、全県的に加工自粛になった。
枝になった実を棒ではたいて落とした。木は500本。やけになって片っ端から落果させた。実は人の口に入ることなく、地面で腐った。
木はお構いなしに翌年も実を付けた。畑の隅に穴を掘って埋めた。地面に落としっぱなしだと、土壌汚染が進む。干し場は物置小屋になった。
「棚開けておきますから」。お得意さんの首都圏のスーパーの担当者から電話があった。「再開したら連絡ください」
ことし、伊達、国見、桑折の産地3市町が生産再開に向けて腰を上げた。幼い実を調べ、10ベクレル以下なら加工を認める。99地区中10地区がクリアした。五十沢地区もゴーサインが出た。
実が締まったらさおから下ろす。検査をパスしたら出荷する。
最初に電話する人は決まっている。
ペ ン・桐生 薫子
カメラ・小林 一成