今回の「これでなっとく」は12月から本格化する就職活動で注意すべきポイントがテーマです。
今、新卒の学生が数年で退職をする“離職率”の高さが問題になっていますが、その理由の1つとして働く環境の悪化が指摘されています。
最近は企業の労働環境を見抜くためのノウハウを教える講座が大学や就職予備校で人気を呼んでいます。一体何を教えてくれるのでしょうか?
若者の労働問題に取り組むNPOが開いたセミナーを訪ねると、労働環境が悪く仕事を辞めた人たちが参加していました。みな、就職した後で、初めて実態を知り困惑したといいます。参加した男性に話を聞くと・・・
「夜遅くまで残業する会社という印象は一切持っていませんでした。
残業が月に100時間超えていたときもありました」。
主催者の今野晴貴さんは、「就活で学生は“自分は大丈夫だろう”と過信してしまう傾向があります。入社後、半年とか1年で働き続けられないという相談が非常に増えている」と感じているといいます。
企業の実情をどう見極めるために、学長を筆頭とした研究チームを立ち上げた大学があります。昭和女子大学です。
求人情報に加え、ある資料を参考にすると、労働環境の分析ができると言います。
それは企業総覧です。市販されていて図書館などで閲覧することもできます。
投資や企業間の取り引きに活用される資料ですが、就職活動でも役に立つ指標が数多く掲載されています。
例えば、各企業の平均の勤続年数は、長く働けるかどうかの目安になります。
中には月々の残業時間を公表している企業もあります。
特に注目すべきは毎年の離職者の数です。
労働環境を推測する手がかりになるといいます。
研究プロジェクトを立ち上げた坂東眞理子学長は次のように語ります。
「学生たちは有名な企業、大きな企業に魅力を感じがちで、
企業の様々な状況のデータを客観的に見るというチャンスが少なかった」
様々なデータをもとにグループワークを行った学生に聞いてみると・・・
「大手企業以外に、自分が知らない企業でこんなにもいい企業がたくさんあると知ることができよかった」と話してくれました。
具体的なデータを見ると、企業を見る目が大きく変わるんですね。
都内の就職予備校でも「企業の見抜き方」を学ぶ講座が人気です。
講師は人事コンサルタントの新田龍さん。就職セミナーのほか、各地の大学でも講演しています。
氾濫する情報の中からどうやって企業の実情を見抜くか、具体的な方法を教えます。
まず最初に注目するのはインターネットなどで簡単に見ることができる求人情報だといいます。例えば、一見よく見かける求人情報ですが・・・。
まずは初任給に注目しました。
新田さん
「初任給は26万円。一般的な新卒の初任給20万円ぐらいなので、
何か裏がある可能性ある。残業代こみとか、深夜残業代こみの場合が想像される」。
次は、採用予定人数です。従業員数1000人に対し、採用予定数が300人の企業の場合は?
新田さん
「社員数の25%超えて採用しようとする会社は、教育する気がなくて
やめていく前提で大量採用している可能性が高いので要注意」。
さらに応募した後でもポイントがあります。それは面接の回数です。
企業の中には面接の回数が非常に少なく、簡単に内定を出すところがあるといいます。
こういうケースは要注意です。
新田さん
「普通は3回ぐらいの面接で選抜をしますが、労働環境悪い会社の面接の特徴はあっさり終わってしまうこと、頭数がそろえばよいという考えであることが想像されます」。
今回、様々な方法を紹介しましたが、これらはあくまでも目安なので、疑問を感じたら、さらにほかの資料を読み込んだり、会社の方に話を聞くなり自分で納得するまで調べることが重要です。
また、学生は厳しい競争を戦っているわけですから、なかなか冷静な目で企業を見極めることが難しいのが現状です。親が、社会人の先輩として経験してきた仕事や会社の組織について話すことも重要なヒントになると新田さんは話していました。
◇若者の労働問題に取り組むNPO
「NPO法人POSSE(ポッセ)」
東京都世田谷区北沢4-17-15 ローゼンハイム下北沢201
電話:03−6699−9359
◇企業研究の取り組みをしている大学
「昭和女子大学 女性文化研究所」
東京都世田谷区太子堂1-7-57
電話:03−3411−5096
◇セミナーを開いていた就職活動予備校
「内定塾」
東京都中央区日本橋3-8-14 日本橋ビル4F
電話:03−3276−1712
◇セミナー講師
「株式会社ヴィベアータ」新田龍さん
東京都世田谷区玉川2-28-7
電話:03−3708−3660