猪瀬都知事:5000万借金は内規違反、職員なら免職も

毎日新聞 2013年11月30日 16時00分

定例記者会見で5000万円問題について答える猪瀬直樹都知事=都庁で2013年11月29日午後2時55分、西本勝撮影
定例記者会見で5000万円問題について答える猪瀬直樹都知事=都庁で2013年11月29日午後2時55分、西本勝撮影

 医療法人「徳洲会」グループから5000万円を提供されていた東京都の猪瀬直樹知事が「個人的な借り入れだった」と主張している問題で、当時副知事だった猪瀬氏の行為は利害関係者からの借金などを禁じた「都職員服務紀律」違反に当たる疑いがあることがわかった。都によると、違反した職員は免職など懲戒処分の対象になるが、知事になった猪瀬氏は対象外といい、専門家から「知事は一般の職員以上に倫理面の厳しさが求められるのに」と批判が上がっている。【川口裕之】

 都職員服務紀律は1943年に制定され、職務上の「利害関係者」からの利益供与を禁じている。都人事課によると、借金も利益供与とみなされ、職責の大きさや職務への影響、信用失墜の度合いなどを踏まえて処分の程度が決まる。

 徳洲会グループは都内に二つの施設を持つ。介護老人保健施設「武蔵野徳洲苑」(西東京市)は昨年5月に開設され、都は開設準備などに2010年度から3年間で8億1387万円を補助した。05年開設の東京西徳洲会病院(昭島市)には08年度以降、救急事業や医師勤務環境改善事業などで1億4676万円の補助金や委託料を払った。さらに15年には西東京市に新病院がオープン予定で、都は昨年10月に開設許可を出しており「利害関係者」に当たる。

 猪瀬氏はこれまでの記者会見で、徳洲会が都内で病院などを運営していることを「知らなかった」とし、所信表明で「徳洲会グループに便宜供与を図ったことは一切ない」と強調したが、借金した時点で紀律に違反した疑いがある。ただ紀律が定められた当時の都知事(東京都長官)は官選だったため、都知事は適用対象外。退職した元職員にも適用されない。都によると、猪瀬氏はいったん都職員(副知事)を辞めてから選挙で知事になっており、紀律は適用できないという。

 都は紀律のほかにも「懲戒処分の指針」で、一般職員が利害関係者から利益供与を受けた場合は懲戒処分にすると定めている。これまでに▽02年に都発注の電気工事で知り合った業者から99万円を無利息で借りた主税局主事を懲戒免職▽11年に、かつて指導・監督する立場だった福祉施設の関係者に50万円の借金を申し込んだ主事を停職3カ月−−などの処分にしている。

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