株式会社シンプレクス・コンサルティング

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連載コラム 金融・ITの最前線から コンサルタントが語る最新トレンド グローバルレベルで変わりつつある金融業界でいま何が起きているのか。この大きなうねりを越える施策とは。金融ビジネスの最前線を走るコンサルタントが激変する業界トレンドを考察します。

Vol.3 シンプレクス流「大規模開発手法」[前半]

「大証FX」取引所システム開発を成功に導いた独自の開発手法。そのポイントを弊社PMの小松がご紹介します。


最近のシステム開発で問題が発生しているのは、開発メンバーが30名以上の規模になるような大規模開発だろう。開発メンバーが10名程度の小規模開発であれば、優秀なエンジニアが一人いれば、力技でも無事にリリースにたどり着くことができる。ところが開発メンバーが30人を超えたあたりから、とたんに問題が多発する。これは、顧客要件の複雑化やアーキテクチャの複雑化、ビジネス要求による納期の短縮化などが要因と考えられる。従来のウォーターフォール型開発では、これらの要因がクリティカルとなり大きな問題を発生させる。しかし、これらの問題を解決すべく考案されたアジャイルや統一プロセスなどの開発手法をマニュアル通りに導入しても、プロジェクトは難航し、エンジニアたちはストレスを抱えることになる。これはアメリカで考案された開発手法をそのまま日本に適用しようとしているからである。


例えば、アジャイル開発は、変更を受け入れるプロセスのため、アメリカのようにユーザー企業が直接エンジニアを雇用して行われる開発スタイルにはマッチするが、日本のようにSIerに対してシステム開発全体を一括発注するような場合、コストや納期の問題が発生する。この一括発注のスタイルはなかなか変わっていかないため、日本の開発には日本なりの方法を確立する必要がある。そこで、我々は統一プロセスとアジャイル開発をベースにした新たな開発手法をつくった。この開発手法は、2009年にリリースした大阪証券取引所の大証FX「取引所システム」でも適用しており、プロジェクトを成功に導いている。また、現在取り組んでいる次世代インターネット取引システム開発プロジェクトにおいても大幅な生産性向上を実現している。今回は、この新たな開発手法であるシンプレクス流「大規模開発手法」のポイントを2回に分けてご紹介したいと思う。前半ではポイントのサマリーを、後半では具体的な手法の各論をお伝えする。


大規模開発成功の3つのポイント

シンプレクス流「大規模開発手法」のポイントは次の3つである。

1)チームビルディング 2)開発プロセス 3)アーキテクチャ

この3つが融合して初めて大規模開発は成功する。それぞれのポイントのサマリーをご紹介しよう。


1)チームビルディング 「大規模開発は団体戦である」

大規模開発での失敗の多くは、開発メンバーを同じベクトルに向かせられないことに起因している。開発は個人戦ではなく、団体戦である。メンバー全員が開発を成功させるために、同じ目標に向かい、一人ひとりが主体的に判断できる自立型チームをつくりあげることが大規模開発ではポイントになる。では、このようなチームをつくりあげるにはどうするか。それには、スケジュールやナレッジ共有に基づいた人的マネジメントが鍵となってくる。


2)開発プロセス 「プロジェクトにあわせてプロセスをつくる」

マニュアル通りに成果物を計画的につくりあげていくことが開発プロセスだと思われているが、このようなやり方は上手くいかない。開発プロセスとは、早い話が「情報を伝達するルール」である。このルールは、プロジェクトの内容(対象システム、規模、体制、環境等)によって異なる。例えば、顧客を含めたプロジェクト関係者が同じロケーションにいるような場合は、対面での意思疎通が十分に可能であるため、中間成果物であるドキュメントの作成は最小限でよい。しかし、プロジェクト関係者が異なるロケーションにいるような場合は、対面での意思疎通が制限されるため、ドキュメントを作成して意思疎通を図る必要がある。つまり、プロジェクトによって「情報を伝達するルール」は変わってくるためプロジェクトにあわせてプロセスをつくることが重要となってくる。


3)アーキテクチャ 「パフォーマンスと開発生産性」

アーキテクチャを選定するにあたって重要なポイントは2点ある。1つはシステムに要求されるパフォーマンス、もう1つは開発生産性である。システムのパフォーマンスは、アーキテクチャでほぼ決まる。アーキテクチャが要求されるパフォーマンスを考慮した設計になっていなければ、まずパフォーマンスはでない。次に開発生産性だが、大規模開発になると人数が多くなるため、開発メンバーが一定以上のパフォーマンスを出すための仕組み(フレームワークや開発ツール等)をどれだけつくれるかが大規模開発では重要となる。


以上が成功のポイントのサマリーである。後半ではポイントの具体的な手法について説明していきたいと思う。

株式会社シンプレクス・コンサルティング
小松哲平

≫VOL.4 シンプレクス流「大規模開発手法」(後半)

シンプレクス・コンサルティング
金融フロンティアグループ
バイスプレジデント
小松哲平

1999年大学卒業後、国内メーカー系SIにSEとして入社し、販売物流システムの開発を経験。2002年、大手ユーザー系SIに転職。アーキテクトとして金融系基幹システムのDB設計やフレームワーク開発に携わる。2005年、ITコンサルティング企業へ。コンサルタントとして開発プロセス導入のコンサルティングや会計システムの要件定義コンサルティングで実績を残す。2008年1月より当社。大証FXの清算決済サブシステムのリーダーを担い、「大規模開発手法」を構築。現在、PMとして次世代インターネット取引システムプロジェクトの指揮を執る。

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