特定秘密保護法案を問う:原発監視活動、困難に 「原発はごめんだ ヒロシマ市民の会」代表・木原省治さん /広島

毎日新聞 2013年12月01日 地方版

 ◇木原省治さん(64)

 東京電力福島第1原発事故で、情報がいかに隠されてきたか思い知らされた。緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の情報は提供されず、メルトダウンも長く明らかにされなかった。事故原因もうやむやだ。

 1978年から脱原発運動に関わってきたが、原発に関する情報は、電力会社社員や原発作業員からの内部告発で得ることが多い。私のところにも電力会社の株主総会前などには多くの情報が届く。現場の状況を伝える、福島第1原発の作業員もいる。だが、もし法案が成立したら、こうした内部告発者は萎縮するだろう。

 例えばプルトニウムを含む混合酸化物(MOX)燃料や使用済み核燃料などの輸送では、市民団体が輸送が適切に行われているかや、万が一の事故の場合に迅速に住民に危険を知らせるため監視活動をしている。輸送情報は極秘のため、内部からの情報提供によって得ている。我々はテロリストではない。放射線測定器を片手に監視しているだけだ。しかし、こうした活動も難しくなるだろう。

 また同法の運用は曖昧で、出してもよい情報か迷えば、行政は出さない道を選択するだろう。情報開示に対して「消極的な運用」がなされる可能性がある。「知る権利」が奪われるだけでなく、情報漏えいを調べる捜査機関などによって、逆に私たち市民の情報が吸い上げられる恐れもある。戦前の「軍機保護法」をほうふつさせ、暗い時代の到来を感じさせる法案だ。【聞き手・吉村周平】

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 ■人物略歴

 ◇きはら・しょうじ

 広島市出身の被爆2世。「原発はごめんだヒロシマ市民の会」代表。

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