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涌井秀章投手・ダルビッシュ投手を真似するメリット・デメリット

親友同士である涌井秀章投手と、北海道日本ハムのダルビッシュ有投手は今や日本を代表するエースピッチャーへと成長を果たした。多くの野球教則本を読んでも、最近ではそのほとんどに涌井投手かダルビッシュ投手、もしくは両方が良き手本として登場している。確かに涌井投手もダルビッシュ投手も素晴らしい投手だ。それに関しては筆者は一切異論を持たない。だが多くの教則本には一つ警鐘を鳴らしたいと常々考えていた。

涌井投手とダルビッシュ投手の投球フォームだが、彼らの投げ方を子どもたちが100%そのまま真似てしまうのは実は良くはないのだ。いや、もちろんこれは筆者個人の意見でしかなく、それが正しいと教える指導者もいて、筆者の意見と食い違う方の指導を批判するつもりは一切ない。

まずダルビッシュ投手だが、身長が196cmある。この長身からあれだけ上体に力みのない、下半身主導の投げ方で快速球を投げ込まれれば、打者としては一溜まりもない。だが、だからと言ってダルビッシュ投手のフォームをそのまま真似ることは筆者はオススメはできない。その理由は体型にある。筆者の身長は175cmと、ダルビッシュ投手よりも20cm以上も低い。それなのに腕の長さと、手のサイズはほとんど同じで、手のサイズ・指の長さ・太さに関してはまるで同じなのだ。ダルビッシュ投手の手の長さについては、松坂大輔投手がそれに気付いたというエピソードがテレビなどで紹介されたことがあったらしいが、まさにその通りで、ダルビッシュ投手は身長の割には腕が短いのだ。

この腕の短さが可能にさせているのが、リーディングアーム(グラブをはめた左手)の使い方だ。ダルビッシュ投手はセットポジションからリーディングアームを打者側に突き出す際、かなり三塁線側に向けて突き出している。本来これは的(キャッチャーミット)に向けたり、ほんの少し三塁線側(左投手なら右腕を一塁線側)に向ける程度だ。だがダルビッシュ投手はかなり深い角度でこの腕を三塁線側に向けている。これは、ダルビッシュ投手の身長に対し腕が短いからこそ可能になるフォームなのだ。つまり身長と腕の長さのバランスにより、遠心力が小さく抑えられているのだ。もし成長著しい子どもたちがこれをそのまま真似てしまえば身体は遠心力に負けてしまい、本来スローイングアーム(ボールを握った側の腕)をリードするはずのリーディングアームが、リードの役割を果たせなくなってしまう。リーディングアームがスローイングアームをリードできなくなってしまうと、スローイングアームは自らの動きのみで投球動作を行わなければならなくなる。つまり投球側の肩にストレスが局所集中してしまい、肩痛を引き起こしてしまう可能性がある。だからこそ筆者は、ダルビッシュ投手の真似をする子どもたちに対しては、グラブをはめた腕の使い方だけを直してあげるようにしている。だがリーディングアームの使い方以外の面では、ダルビッシュ投手は子どもたちにとっては最高の手本となる。それは間違いない。

さて、続いては我らがエース涌井秀章投手だ。涌井投手の投げ方にも子どもたちに真似をしてもらいたくない点が一つある。それはノーワインドアップから左脚を振り上げた時の動作だ。涌井投手は左脚を最高部まで振り上げると、そこで一旦動きを止めたような動作をする。そしてかすかに左脚をクンクンを二段モーション気味に動かすことで、次の動作へと移っている。元楽天の野村克也監督はこれを二段モーションだとアピールしたことがあった。

ここで二段モーションの復習をしておこうと思う。二段モーションとは、国際ルールと日本ルールでは若干解釈が異なる。本来の国際ルールでの禁止二段モーションは、投球動作を途中で一度停止して、再度始動させることを禁じている。例えば横浜の三浦投手や楽天岩隈投手、さらには小野寺力投手のかつての二段モーションは、国際試合においては基本的にはボークにはならない。なぜならクンクンと振り上げた脚をわずかに動かすだけで、動作そのものは停止していないためだ。だがもちろん度を越してしまえば審判の判断でボークとはなるだろう。

一方日本国内での二段モーションは、投球動作中で同じ動作を繰り返すことを禁じている。かつての二段モーションのように一度振り上げた脚を僅かに下ろし、もう一度上げてから再度下ろしてステップしていくような動きだ。この途中で動作が一度停止していれば国際試合でもボークを宣告されるが、そうでない限り、日本の二段モーションルールは国際試合ではボークとはならない。これは一説によれば、国際試合のルールブックを翻訳した方の解釈、訳し方の問題で相違が生まれてしまったという。だが不思議なのは、間違いに気付いたにも関わらず、それを正そうとしない日本球界の姿勢だ。だがそれはさておくことにしよう。そしてそもそも二段モーションを取り入れる理由は、大袈裟にタメを作ろうとすると、そこで動作が止まってしまいがちになる。それを次の動作へとスムーズに繋げるための切っ掛けとして、二段モーションを取り入れていたわけだ。

話は涌井投手に戻るが、二段モーションを採用していた投手たちの目的は、軸足にタメを作り出すことだった。軸足に最大限のタメを作り出すことで、そこから生まれるエネルギーをボールに込めようと考えていたのだ。だが下半身の筋力がまだ成熟していない子どもたちが涌井投手のこの動作を真似てしまうと、クンクンしている内にどうしても動作が一度止まってしまうのだ。そして子どもたち自身も、涌井投手が一度動作を止めていると判断していることがある。しかし投球動作とは、一連の動きの流れの中で行うべきものだ。投球動作中に動作の停止が発生してしまうと、それまでに生み出したエネルギーがその停止によってほとんどが解消されてしまう。つまりボールを投げるためには、そこから再度エネルギーを生み出す必要がある。だがそこから再度エネルギーを生み出すと、やはり頼ってしまうのは肩・腕の筋力だ。筋力に頼ってボールを投げてしまうと、将来確実に肩・肘の故障を引き起こすだろう。

だがこの二段モーション気味の動きを省けば、ダルビッシュ投手同様に素晴らしいお手本となるのが涌井投手だ。プロ2年目当たりに涌井投手がフォームを変えた際には、筆者は少し疑問を感じたことがあった。その理由は、高校時代にあった躍動感をすべて消してしまっていたからだ。そしてボールをより打者の近くでリリースさせることで、腕のスウィングが真っ直ぐに出がちとなっていた。もちろんそうなるとシュート回転もしやすくなる。だが今やそんな心配は無用に終わってしまった。涌井投手の投球フォームは、年々少しずつ進化している。特に際立つのはボールの出所の見にくさだ。打者からすれば、涌井投手の身体の後ろ側に隠されていたボールが突然出現し飛んでくる、という印象を持つはずだ。しかも球持ちが長い分、リリースからホームプレートまでの到達時間が普通の投手よりも速い。つまり簡単に差し込まれてしまうわけだ。

以上の2点にさえ注意してもらえれば、涌井投手とダルビッシュ投手の真似はどんどんすべきだ。ちなみに今でこそ本格派として名を通す2人ではあるが、プロ入り後数年までは共に変化球投手だった。だが涌井投手は渡辺久信監督に、ダルビッシュ投手は現楽天の佐藤義則投手コーチに指導を受けたことで、変化球投手からいつの間にか本格派へと変貌を遂げていた。涌井投手に関してはプロ1年目までは本格派に近かったが、1年目で通用しなかったことですぐに技巧派へと変身を遂げてしまった。だが2人を技巧派から本格派へ成長させた渡辺監督と佐藤コーチの判断・指導は正解だったと思う。技は経験を積めばいくらでも磨くことができる。しかし本格派の投げるストレートは、若いうちにしか投げられない。ストレートの大切さを学ぶためにも、本格派になったことは将来のプラスにもなるはずだ。だからこそ筆者は子どもたちには、涌井投手とダルビッシュ投手を目指して練習に励んでもらいたい。野球チームのコーチがあれこれと教えるよりも、子どもたちにとっては涌井投手やダルビッシュ投手を見ることの方が、はるかに勉強になるからだ。これこそまさに一聞は一見にしかずで、コーチは子どもたちの明らかに悪い動きだけを調整してあげればそれでいい。

涌井投手とダルビッシュ投手の2人には今季、昨年は見られなかった子どもたちに大きな夢を与えてくれる直接対決を魅せてもらいたい。9回を終わって両投手とも無失点好投、延長に入っても両者譲らず。そんな2人の直接対決を、今季は渡辺監督と梨田監督には期待したいと思う。

2011年01月31日 15:58

デーブ大久保コーチ対する、筆者の個人的考え

デーブ大久保前ライオンズコーチについての筆者の意見をリクエストとしていただいたので、今日はそれについて書き進めてみたいと思う。これまでも何度かデーブ大久保コーチのことは書いてきたが、正直なところ、筆者はデーブ大久保コーチの解職に納得はいっていない。実は解職された直後に、それに関する筆者の正直な感想を記事として書いたことがあるのだが、西武球団より掲載NGの要請が入り、お蔵入りしてしまった。

訴訟関連のことについては、ここではあまり触れないようにしたい。筆者自身、やはり報道で知る限りでしか把握していないため、それ以上のことは書けないためだ。この記事では野球選手を指導する同業者として、デーブ大久保コーチへの筆者の個人的意見に留め書き進めて行きたい。

その前にまずプロ野球界についてだが、プロフェッショナルなコーチは本当に数少ない。現在ユニフォームを着ているコーチの中では、恐らく両手の指だけで数え終わってしまうのではないだろうか。ではプロフェッショナルなコーチとは?筆者はそれは、技術でコーチ職を得ている人材のことだと考える。つまり自分が知りうる技術、信念を貫き、選手を第一に考えて監督・フロント・周囲に意見を発せられる人材だ。いわゆる技術屋としてのコーチで、時に選手を守るために監督やフロントと衝突することもある。だが選手からは絶対的な信頼を得ていることが多い。逆を言えば、1人のコーチが監督以上に選手から信頼されれば、それは監督としてはあまり面白くはないということになってしまう。

一方プロフェッショナルではない、プロ野球界の多くのコーチは人脈を優先としている。野球界では未だに同郷や同じ出身校の先輩・後輩を大切にし過ぎる風潮がある。それが悪いとは思わないが、しかしコーチ組閣というものを考えると、それを優先してしまうのはあまりにも危険だ。このような流れで入閣したコーチは、必ず選手よりも監督に近い場所に立ち位置を決めたがる。つまり監督の意見が選手に対しマイナスの可能性が強くとも、そのコーチは監督に嫌われて職を失いたくないがために、監督の意見を選手にそのままごり押ししようとする。そしてそういうコーチに限って大した理論を持たず、自分の経験談だけで指導をしようとする。いわゆる技術の押し売りだ。そのコーチの現役時代に役立った理論や技術が、指導する選手全員に通用するかと言えば、その可能性はほとんどない。

プロフェッショナルなコーチとして、現役コーチでパッと名前が浮かぶのは土井正博西武ヘッドコーチ、佐藤義則楽天投手コーチ、森繁和中日投手コーチ、西本聖ロッテ投手コーチ、金森栄治ロッテ打撃コーチあたりだろうか。もちろん他にももっといるのかもしれないが、筆者がプロフェッショナル(技術屋)だと感じるコーチは現役コーチではこの5コーチだ。個人的には西武の鈴木康友守備走塁コーチも、コーチとして非常に尊敬しているが、監督やフロントに対して、選手を守るために信念を貫けるかどうかは筆者にはまだ分からない。だがそれは今季の選手起用である程度見えてくるだろう。さて、この中に加えても良いと筆者が感じていたコーチの1人が、実はデーブ大久保コーチだったのだ。

筆者は、デーブ大久保コーチとは直接お会いしたことはない。だがその指導理論に関しては多くの本やテレビコメント、球場での指導風景などを見て、少しは分かっているつもりだ。特に打撃理論は感服してしまうものが多い。デーブ大久保コーチほど野球を勉強されている方は、プロ野球界では本当に少ないのではないだろうか。しかもデーブ大久保コーチの理論は、野球技術に留まらない。野球にプラスになることは、物理学や生理学なども勉強されているのだ。特に難しい野球物理学を、選手にも分かりやすく伝えられる技術は、デーブ大久保コーチは非常に優れていると思うし、尊敬に値する。現在はデーブ・ベースボール・アカデミーで子どもの指導に当たっているデーブ大久保コーチだが、彼の指導を受けられる子どもたちは本当に幸せだと思う。

だがそのデーブ大久保コーチも、2軍選手への暴行問題により昨年7月、西武球団より解職されてしまった。ことの顛末は、練習時間に遅刻したある2軍選手が、選手間で決めた遅刻に対する罰金をまったく払わなく、その態度を改めさせようとデーブ大久保コーチが話そうとしたのだがその選手の態度があまりにも悪く、平手で頭をはたいたというものらしい。もちろん叩かれた選手が吹き飛ぶほどの鉄拳ではなかったという。このように書いてしまうと時代錯誤だと言われてしまうかもしれないが、現在32歳である筆者の子どもの頃は、野球チームの監督やコーチ、そして先輩によく叩かれたし、ケツバットもたくさんもらった。正しくないこと、悪いことをすれば怒られたり殴られたりするのが当たり前で、殴られたら指導してくれた相手に対し「ありがとうございました!」と言うのが当然だった。だがそれが今は違うようだ。

デーブ大久保コーチの最大のミスは、現代っ子の性質を見誤ったことだろうか。現代っ子は打たれ慣れていない。学校でも家でもいわゆる雷を落とされることがほとんどない。そのため少しでも自分に攻撃的な態度を取ってくる相手に対しては、一気に殻を閉じようとしてしまう。愛情があるビンタだろうがなんだろうが、ぶたれたらそれはただ暴力としか彼らの目には映らないらしい。もしデーブ大久保コーチがはたくのではなく、延々としつこいくらい言葉で説得しようとすれば、当然結果は変わっただろう。

さて、プロ野球界の罰金についてだが、この風潮が生まれたのはV9時代の川上巨人からだ。遅刻や下手なミスをした選手には罰金が課せられ、その罰金はシーズンオフの飲み会代として使われている。中には罰金で金一封を包んでシーズンオフ、罰金を徴収した選手の奥さんに手渡しで還元する星野楽天監督のような人物もいるが、多くはシーズンオフの選手の発散代として利用されている。デーブ大久保コーチの問題が発生する前後、西武球団はデーブ大久保コーチに対し、罰金制度をやめるように指導していたようだ。だがデーブ大久保コーチは自分の信念を貫き、罰金制度を廃止することはしなかった。筆者はこの判断は正しかったと考えている。罰金云々ということではなく、選手間で一度やると決めたことを、そう簡単に反故にしてしまうのは選手の精神的成長を考えるととてもプラスになるとは思えないからだ。

司法の結果に筆者は異論はない。裁判所でどのような判決が下されようと、筆者はその真相を詳しく知ることはできない。だが一連の、デーブ大久保コーチのコーチとしての態度には筆者は支持を表明したい。確かに2008年オフの問題も含めて、まったく問題のないコーチでないことは確かだ。だが野球への情熱、野球に対する真摯な姿勢、コーチとして抱く選手への愛情は、デーブ大久保コーチは一流だったと筆者は感じている。

1軍には渡辺久信監督という、ある意味ではデーブ大久保コーチのお目付け役とも言える存在があった。だが2軍にも行澤久隆監督の存在がある。筆者が不思議だったのは、なぜ行澤2軍監督のデーブ大久保コーチに対するこの件の指導がまったく報道されなかったのかという点だ。デーブ大久保2軍打撃コーチにとって、行澤2軍監督は直属の上司に当たる。筆者として残念だったのは、現場で起きた問題がすぐに現場を出てしまったことだ。デーブ大久保コーチや行澤2軍監督を含め、もしもっと現場で意見交換が行われていたら、もっと違う結果になっていたのではないかと筆者は考えている。

しかし今さら一ファンが何を言おうとも、その結果が覆されることはない。この記事ではあくまでも、筆者のデーブ大久保コーチに対する、コーチとしての尊敬心を伝え残すために書き終えたいと思う。西武ファンの中にもデーブ大久保コーチへの賛否は両論多々あるとは思う。だがその中でも筆者はデーブ大久保コーチを支持し続けたいと今なお強く思っている。

2011年01月29日 16:15

涌井秀章投手の年俸調停の結果、大幅増で決着

ついに涌井秀章投手の年俸問題に決着がついた。西武球団は今季14勝8敗という成績を残した涌井投手に対し、現状維持の2億2,000万円+出来高という提示を貫いてきた。だがこれを不服とする涌井投手は、絶対に年俸を上げるつもりはないと言う前田球団本部長に不信感を示し、微増でもいいからということで基本年俸の増額を求めていた。報道によれば涌井投手は1,000万円でも2,000万円でも、アップすれば納得していたという言う。だが年俸調停委員会の出した答えは、15%アップの2億5,300万円という額だった。過去に行われた年俸調停で、ここまで大幅な増額が認められたのは涌井投手が初めてのケースだ。つまり、西武球団の涌井投手に対する評価は、それだけ公平性を欠いていたということになる。

しかし西武球団は決して経営が潤っている球団ではない。選手の年俸をできるだけ削りたいという思いもファンとしては十分理解できる。だがそれはあくまでも活躍できなかった選手に対して行うべきことで、チームの柱として一年間フル回転したエース涌井投手に対し行うべきことではない。少なくとも筆者はそう考えている。

涌井投手の年俸もまとまり、中島裕之選手も2億8,000万円でサインした。これで晴れてキャンプ前に全選手の契約更改が済んだことになる。紆余曲折はあったものの、全選手、これでスッキリとした気持ちでキャンプに挑むことができるだろう。そして涌井投手には今季、球団に有無も言わせぬような大活躍をして、さらなる大幅昇給を勝ち取ってもらいたいと思う。

2011年01月28日 16:15

栗山巧選手、まさかの春季キャンプ不参加という事態

来週から春季キャンプに突入するライオンズに、まさかのニュースが飛び込んできた。それは今季も主軸を担うであろう栗山巧選手の離脱だ。原因は左慢性副鼻腔炎。いわゆる蓄膿症だ。蓄膿症に関しては、過去東尾修監督が、駆け出しの頃の松井稼頭央選手に手術をさせている。恐らく今回の栗山選手のケースは、稼頭央選手よりも重傷なのだろう。

栗山選手が鼻づまりに悩まされ始めたのは昨年のことらしい。そしてオフになるとそれが一気に悪化し、頭痛や嘔吐を引き起こしているようだ。そして1月26日の検査で手術を受けることが最善策ということになり、キャンプインの2月1日に手術日程が組まれた。手術後は一週間ほどの入院が必要で、退院後も最低一週間は自宅療養が必要となるようだ。昨季はチームで唯一のフルイニング出場を果たしており、今季もフルイニング出場を宣言していただけに、チームにとってはあまりにも痛い離脱だ。

だが渡辺久信監督はそれほど悲観視はしていないようだ。最悪でも開幕戦に間に合ってくれれば良いと話している。確かに手術をするわけなのだから、いくらそれが内視鏡手術とは言え無理をさせるわけにはいかない。まずはしっかり治さないことには開幕戦出場も危ぶまれてしまう。

栗山選手の復帰までをかんたんに予測してみると、まず2月1日に内視鏡手術を受け、その後一週間の入院予定。退院後はさらに一週間の自宅療養。そこから最速でも運動できる身体に戻すには7~10日は掛かるだろう。ということは、キャンプ中のA班合流は現実的ではない。恐らく2月下旬にB班に合流し、身体の状態を見ながら3月上旬辺りにオープン戦に帯同するということになるのではないだろうか。だがこれはあくまでも筆者の最速で考えた場合の予測だ。実際にはこれよりも長引く可能性もありうる。

キャンプイン早々、主力の離脱は痛い。しかし栗山選手に代わってA班に合流する斉藤選手にとっては朗報だ。ファームの試合では大活躍をしている期待の新星には、このチャンスをぜひ物にしてもらいたい。キャンプやオープン戦の頑張り次第では、開幕1軍も決して夢ではないのだから、斉藤選手にはぜひレギュラーを奪うつもりで頑張ってもらいたいと思う。

ライオンズの外野陣でレギュラーがほぼ確約されているのは栗山選手だけだ。その栗山選手がキャンプに帯同できないのはチームにとっては大きなダメージだろう。だがそのダメージがチャンスとなる選手が多いことも事実だ。恐らく復帰後は、栗山選手を優先的に起用するのは間違いない。ということは1軍半の外野手たちは、それまでに目一杯のアピールをしなくてはならないことになる。栗山選手が抜けて、底辺が下げられたことで、ライオンズ外野陣の競争はさらに熾烈を極めるだろう。A班入りした斉藤選手にしろ、何かあればすぐB班の選手と入れ替えられるはずだ。この激しい競争を勝ち残った選手で組まれる外野陣は、間違いなく昨季の外野陣とは別物になるだろう。チーム内の競争が激しくなればなるほど、チームの底力はアップする。栗山選手の離脱は首脳陣からすれば大きな痛手だが、チームとしたら競争を激化させるためにはプラス材料とも言えるのかもしれない。

2011年01月28日 15:56

西口文也投手・平尾博嗣選手、ベテランたちの今季への覚悟

今季のライオンズはベテランに元気がありそうだ。その中でも西口文也投手平尾博嗣選手は特に元気がいい。西口投手はオープン戦の開幕投手奪取を宣言しているし、平尾選手も自主トレから帰国すると丸坊主になっていた。そのヘアスタイルからは「チャオ男」というイメージがすっかり払拭されていた。西口投手にしろ、平尾選手にしろ、今季に賭ける思いの表れなのだろう。

西口投手は今オフ、初めて本格的なウェイトトレーニングに取り組んでいるようだ。実は過去にもオフの自主トレでウェイトトレーニングに取り組もうとしたことは何度かあったのだが、それが続いたためしがなかった。もしかしたらこれまで組んだトレーナーとの相性の問題もあったのかもしれない。西口投手は非常に痩身な投手ではあるが、実は服を脱ぐと肩周りの筋肉はすごい。それは他の選手たちも惚れ惚れとするほどの筋肉だ。そういう資質も持っていたため、あえてウェイトトレーニングをする必要性を感じられなかったのだろう。だが昨季は南谷コーチとのコンビでウェイトトレーニングに取り組み、後半戦は見事な復活を成し遂げた。

この復活を具体的に説明すると、まずストレートの切れ・威力が戻り、スライダーが全盛期に近い曲がり方を取り戻した。ピッチングはストレートという球種なくして成り立つものではない。ストレートがあるからこそ変化球が活き、変化球が活きてくるとストレートがさらに活きてくる。つまり西口投手が復活するためにはストレートの切れが重要だったわけだが、それをウェイトトレーニングによって取り戻すことができた。さらに言えばスライダーだが、2006年以降の不調時には曲がるポイントがホームプレートよりもかなり手前にあった。早く曲がり始めてしまうと、それだけ打者に見極められる危険性が高まる。だが昨季後半のスライダーは、ホームプレートの手前ギリギリまで行って、打者の手元で曲がっていた。まさに全盛期の西口投手のスライダーに近いものだった。

西口投手は200勝という数字を目標にしている。それを達成するためには、最低でもあと1~2年は二桁勝利を挙げなくてはならない。そうしなければあと34勝はますます遠のくばかりとなってしまう。だが今季の西口投手は恐らくローテーション奪回まで非常に近い場所にいるだろう。オフにしっかりとウェイトトレーニングを行ったお陰で、肩のコンディションも良く、すぐにでもブルペン入りできるような状態であるようだ。オープン戦開幕で西口投手が好投する姿が目に浮かぶようでもある。

一方の平尾選手も今季に賭ける思いはひとしおだ。髪型だけではなく、常に戦力外通告を覚悟した野球への取り組みは、若手選手の手本にもなっている。昨季まではチャラ男を貫いた平尾選手だったが、年齢的にもチームでの立場的にも、やはりいつまでもチャラ男でい続けることはできないだろう。チームの屋台骨を支えるベテランとして、まだまだ若いチームであるライオンズをしっかり締めていける存在でなくてはならない。そしてそういう存在のベテランがいるからこそ、チームは強くなっていける。昨季、小久保選手のいたホークス、井口選手のいたマリーンズが勝負どころで強さを発揮できたのも、やはりベテランがしっかりとチームを牽引してくれたおかげだ。

だが今季はライオンズの番だ。西口・平尾両選手がチームを支え、そして牽引してくれれば、3年振りのV奪回も現実味を帯びてくる。優勝するチームには必ず精神的支柱となってくれるベテランの存在がある。2008年の江藤智選手のような存在だ。レギュラーを張るほどのプレー体力がなくても、ベンチでは大きな存在感を示し、後輩たちを力強く鼓舞してくれる。野手であり、投手と違って常にベンチにいられる平尾選手には、今季は江藤選手のような役割が求められているはずだ。2009年には清水選手、2010年は阿部真宏選手と、同じベテランをぶつけ続けられた平尾選手だが、今季はそれがなかった。ということは、西武球団も平尾選手に対しこれまで以上に大きな期待を寄せているということだろう。そして平尾選手がベテランとしての役割を果たしてくれると確信したからこそ、今季はベテランの補強を行わなかったのだと筆者は考える。

いずれにせよ、今季のライオンズV奪回の行方を握るのはベテランの存在だ。チームが優勝争いを続ければ、必ずどこかで息切れが生じる。その息切れが生じた時に、ベテランが若手に酸素を供給してくれるようになると、チームにはシーズンを通しての安定感が生まれてくる。プロ野球という最高峰の野球において、若手の勢いだけで日本一になるのは無理な話だ。ベテランたちの、ベテランとしての役割なしにチームの優勝は考えられない。だからこそ今季は、西口・平尾両選手のさらなるベテランとしての働きが必要なのだ。2人には今季、ぜひ最後まで怪我なく1軍でプレーを続けてもらいたいと筆者は願っている。

2011年01月27日 15:03

中島裕之選手と松井稼頭央選手、どっちがメジャー向きか

近鉄の野茂投手以来、日本人選手たちは本格的に海を渡り、野球の最高峰であるメジャーリーグを目指すようになった。だが多くの日本人投手が活躍するのに対し、野手で長年活躍し続ける選手はイチロー選手と松井秀喜選手くらいだ。ライオンズからメッツ入りした松井稼頭央選手でも、長年コンスタントに活躍することは叶わなかった。そして来季は中島裕之選手が新たに海を渡ろうとしている。

なぜ日本で最高のプレイヤーとしてメジャー入りした野手たちはメジャーでは通用しなかったのだろうか?また、どうすれば日本人野手はメジャーで通用するようになるのだろうか。実は筆者は、中島選手は非常にメジャーリーグ向きだと考えている。日本においては野手としての能力は打撃にしても守備にしても、中島選手は西武時代の松井選手には劣る。だが筆者は中島選手の方が、恐らくメジャーに適用しやすいだろうと考えているのだ。

まず日本とメジャーとの最大の違いはパワーだ。メジャーリーガーたちのパワーは日本人からすれば規格外だ。もちろん全部が全部ではない。リッキー・ヘンダーソン選手であったり、オレル・ハーシュハイザー投手のように小柄だったり、細身の選手も決して少なくない。だがメジャーの代名詞と言えば、やはりパワーだろう。

パワーと言ってもそれは、破壊力をイメージするようなパワーとは違う。野球選手にとってパワーとは、あくまでもスピード×エネルギーなのだ。つまり重量挙げができるようなエネルギーを生み出すことができても、スピードがなければそれは野球では活かすことはできないのだ。そしてこのスピードこそが日本人野手がメジャーで生き残るための鍵だ。

スピードと言えば、千葉のスピードスター西岡剛選手が今季はミネソタに渡った。果たして彼はメジャーでは通用するだろうか?筆者個人としては好きな野手であるため活躍をしてもらいたいという願望はある。だがそれを差し引いたとしても、西岡選手は慣れればすぐにある程度の結果を出すことができるだろう。

ここで結論を言おう。筆者が考える日本人野手がメジャーで活躍するための鍵はバットスウィングの速さと、考えることをやめる早さだ。この2つがあれば、ある程度以上の適応はできるはずだ。この理論を中島選手に当てはめると、中島選手は非常に野性的な打撃をする。タイプで言えば長嶋茂雄選手のように「来た球をポーンと打つ」というタイプに近い。つまり投球に対し、考えることを早めに終わらせる資質を持っているのだ。

ここで科学的な話を少し付け加えたい。140kmの投球を打つ際、ボールがピッチャーの手からリリースされてホームプレートを通過するまでの時間は約460ミリ秒とされる。つまり0.46秒ということになる。打者はこの時間内に球種やコースを判断し、バットを振るか振らないかを決め、実際にボールを打ち返さなければならない。ちなみに振るか振らないかの意思決定から実際にバットを振り出すまでにかかる時間は170ミリ秒だ(脳からの伝令が腕にまで届く時間)。

バットスウィングに要する時間(振り出してからボールにコンタクトするまでの時間)は、スウィングが速い選手で140ミリ秒、一般的な選手で160ミリ秒かかる。これらの要素をまとめると、スウィングの速い選手は意思決定からコンタクトまでにかかる時間は計310ミリ秒。一般的な選手では330ミリ秒かかる。

さて、先ほど時速140kmの投球がリリースからホームベースを通過するまでの時間は460ミリ秒だと言った。これを踏まえると、投手の手からボールがリリースされてから、打者がそのボールを打つか打たないかの判断をするまでの時間はスウィングが速い選手で150ミリ秒、一般的な選手では130ミリ秒しか与えられないことになる。130ミリ秒では、スウィングが速い選手のバットの始動から、コンタクトまでの時間にも満たない。

少々難しい内容になってしまったが、まとめるとつまりはこういうことだ。スウィングスピードを速くすることができれ、その分長く投球を見ることができ、ミートの確実性を高めることができるというわけだ。そしてこれを実践しているのがイチロー選手というわけで、バットのスウィングスピードが速くなくてはならない理由だ。

そしてもう一点、考えることをやめる早さについてだが、人間は考えれば考えるほど、瞬間的な反応スピードがどんどん鈍くなって行く。つまり投手がモーションに入ったら考えることはもう諦め、来た球に対して身体で反応していくことが必要になるということだ。そしてこの反応力に富んでいるのが筆者は松井稼頭央選手よりも、中島裕之選手だと考えている。

あとは中島選手は、スウィングスピードを松井稼頭央選手以上に高めることができれば、打者としてメジャーにもしっかり対応できるようになるだろう。メジャーは日本とは違い、変化球で交わす投手は少ない。どちらかと言えばファストボール系でどんどん押してくるスタイルだ。だからこそスウィングスピードをさらに速め、投球がホームプレートに近づく前に打つか打たないかの判断を下せるようにしなくてはならない。

この考え方は、もちろんメジャーにだけ有効というわけではない。ダルビッシュ投手などの速球投手を打ち崩すためにも有効だ。ライオンズ打線はなかなかダルビッシュ投手を打ち崩せずにいる。今季はライオンズ打線がダルビッシュ投手を確実に打ち崩すためにも、スウィングスピードの速さと、考えることをやめる早さが必要になるだろう。そうしなければ、今季も変わらずダルビッシュ投手の球に刺し込まれ続けることになってしまう。やはり優勝するためには、敵のエースを打ち崩さなければならない。それができるチームこそが、優勝という栄冠を手にすることができる。また一人の日本人打者として、メジャーリーグで活躍できるようになるだろう。

2011年01月21日 14:20

大沼幸二投手、横浜弥太郎投手とトレード成立

今日、西武球団は大沼幸二投手と横浜の坂元弥太郎投手のトレードを発表した。キャンプスタートを10日後に控えたトレードではあるが、両投手にとってプラスに働くトレードになってくれればと思う。特に大沼投手にとってはこのトレードは大きなチャンスとなるだろう。今季は大石達也投手に背番号15を明け渡すことになり、右腕リリーバーとしてもライオンズにはライバルが多い。昨年も故障によりシーズンのほとんどを棒に振ってしまったことで、チームからの信頼をまた一から取り戻すのは難しかったと思う。だがこのタイミングでトレードに出されたことで否応にも心機一転せざるを得なく、大沼投手にとっては良いトレードになる可能性が高いと言える。

ドラフト1位で入団してきた大沼投だったが、なかなか飛躍するきっかけを掴めずにいた。一時はローテーションに加わったこともあったが、安定した結果を残すことができず、リリーバーとしてや、谷間で先発するという起用法が続いていた。筆者は昨年二度ほど大沼投手の先発試合を観戦したのだが、その時は谷間の先発としてナイスピッチングを披露してくれた。つまり大沼投手には高い潜在能力がある。この能力を常時発揮することができれば、能力を安定化させることができれば、遅咲きの大器として横浜でブレイクする可能性もあるだろう。特に横浜は尾花監督、白井2軍監督と、高い信頼を得ている指導者が豊富だ。大沼投手も尾花監督の新たな指導法に触れれば、一気に実力を開花させられるかもしれない。

筆者が考えるに、大沼投手に足りなかったのはメカニズムの安定だった。上半身の力に頼って投げる傾向のある大沼投手は、調子が良い時はリラックスして切れのあるボールを投げ込むのだが、調子を落としてしますと力技で打者を抑えようとして、コントロールや切れを失ってしまっていた。この癖を矯正するためには、尾花監督のような理論派の投手指導者に徹底的に理論を詰め込んでもらうのが一番だと思う。キャンプで徹底的に理論を詰め込んでもらい、開幕するころにはその理論が考えなくても身体に染み付いているようであれば、大沼投手は必ずローテーションに食い込めるほどの存在になれるはずだ。大沼投手にはそれだけの資質があると筆者は一ファンとして確信している。

大沼投手のファンにとってこのトレードは寂しくもあるが、しかし大沼投手にとればこれは大きなチャンスでもある。ぜひ横浜で一皮むいて、交流戦や日本シリーズでまた元気な姿を見せてもらいたいと筆者は期待しながら、大沼投手を送り出し、そして弥太郎投手を西武ファンとして歓迎したいと思う。

2011年01月20日 14:14

ライオンズ次世代セカンドベースマン争いの行方

ライオンズは今後、中島裕之選手に代わる次世代ショートストッパーだけではなく、片岡易之選手に代わる次世代セカンドベースマンの育成にも力を入れていかなくてはならない。片岡選手がもし来季正式にショートへのコンバートに挑戦したなら、セカンドのポジションがそのまま空くことになる。本当に試合に出たいと望むのであれば、若手選手はその穴を貪欲に狙うことも必要だろう。少なくともショートよりは競争は激しくはないポジションだ。

ショートとセカンドというポジションは同じセンターラインを守るポジションだけあり、よく似た役割を担う。しかし実際の細かいプレーを見ていくと、同じ感覚で守ることはできない。まずショートは、セカンドと比べると運動量が非常に多い。つまり足腰に不安がある選手は守ることはできない。言い方を変えれば選手寿命を伸ばすためにショートからセカンド(もしくはサード)にコンバートさせられることがある。ライオンズで言えばかつての石毛宏典選手のサードコンバート、近年では中日井端選手のセカンドコンバートが挙げられる。

一方のセカンドは、ショートほどの運動量は要らない。ただそれ以上にボディバランスが求められる。セカンドはショートと異なり、走って行く方向と真逆に送球しなくてはならないことが多いためだ。例えば6-4-3のダブルプレー時がその典型だろう。二塁ベースに向かって走り、ショートからの送球を受けたら、今度は自分の背中側にクルリと振り向いて一塁に正確な送球をしなければならない。これは簡単そうで非常に難しいプレーだ。だからこそ名二塁手はピボットマンと呼ばれ讃えられている。

走りながら捕り、そこから背中側に向けて送球するという動作は、今自分がどの方向を向いているかが常に分かっていなければならない。そうでないと背中側に振り向いた時、まず一塁手を探す作業をしなければならなくなる。これは非常に大きなロスタイムで、ダブルプレーの完成を阻む要素だ。そしてボディバランスは、体躯の大きな選手よりもスマートな体型の選手の方が優れている場合が多い。これが二塁手に大柄の選手が少ない一つの理由だ。

このようなことを考えると、果たして片岡選手を継ぐ次世代二塁手は誰になるだろうか。大まかに候補を挙げていけば、浅村・美沢・黒瀬・林崎選手らになるだろうか。難易度から言えばセカンドよりもショートだ。そのためショート争いに敗れた選手がセカンドに回る可能性が高いだろう。だがこの中では浅村選手はショートとして起用され出し、原選手はサードメインで起用されている。となると競争は美沢・黒瀬・林崎選手らで行われることになるだろうか。筆者個人としては、林崎選手はショートよりもセカンドに向いていると感じている。チーム状況を踏まえれば、片岡選手の新人時代のように一年目からすぐにセカンドに回される可能性もあるだろう。

だがショートにしろセカンドにしろ、ただ上手いだけでは1軍では通用しない。それぞれの相性が良くなければ、二遊間コンビは成立せず、ダブルプレーを増やすことも難しくなる。渡辺監督鈴木康友内野守備コーチの判断にも寄るが、今後はショートだけではなく、セカンド争いからも目が離せそうにない。野球の基本はまずは守りだ。少年野球を経験したことのある方なら分かると思うが、野球チームに入ってまずやらされるのは守備練習だ。守備とは野球においてはそれほど優先されるべきファクターで、強力打線を持っていても守備がもろくては試合には勝てない。今季だけの話ではなく、鈴木康友コーチには12球団最強の次世代二遊間コンビを育て上げて欲しいと筆者は願っている。

2011年01月18日 14:42

佐藤友亮選手とスポーツ速読の効果

ここ1~2年のことだろうか。スポーツ速読というものがブームとなっている。ライオンズの佐藤友亮選手も実践している1人なのだが、効果は確かに実感しているようだ。筆者自身はスポーツ速読に触れたことはないのだが、速読自体はできる。今回の記事ではその速読と野球がどう結びつくのかを考えて行きたいと思う。

スポーツ速読の本の表紙には「150kmのボールが打てる」などと書かれているが、本当なのだろうか。まず筆者の出した結論から言わせてもらえれば、速読ができるようになれば150kmのボールは打てるかという問いに対し、自信を持ってノーだと言いたい。スポーツ速読ができるようになっても、150kmのボールを打つことは不可能だ。ただし、150kmのボールにバットを当てることはできるようになるかもしれない。打つという動作と、当てるという動作を一緒くたにしてしまうと、恐らくスポーツ速読の理解は深まらないと筆者は考える。

ではスポーツ速読とは一体どういうものなのだろうか。速読というものをベースに考えるならば、末梢神経系(視覚など)から得た情報を中枢神経(脳)に送り、その情報を元に何をすべきかを中枢神経から再び抹消神経(手・足など)に伝達するスピードを速めるということなのだと筆者は考える。つまり脳のコンディションを向上させるための何らかのチューニング(トレーニング)を行い、この速度を速めるということなのだろう。

これをバッティングに当てはめてみると、まず視覚から入ってきた投球に対する情報が脳に伝わる。すると脳はその投球がストレートなのか変化球なのか、外角なのか内角なのかを判断し、今度は手や腕にどのコースで、どのタイミングでバットを振るかを指示する、ということになる。つまりスポーツ速読とは、バッティングにおいては投球されたボールの情報を読み取るスピードを速めるということになる。

さて、筆者は速読はバッティングを向上させるものではないと先に述べた。その理由は簡単だ。人と車を例にすれば分かりやすい。人の脳に当たるのは車で言えばエンジンだ。そのエンジンがいくら高性能であっても、車自体が実は軽自動車だったり、タイヤが安物だったり、サスペンションなどの調整が曖昧だったりすれば、そのエンジンの高性能さを活用することはできない。最高級のエンジンを最大限活かすためには、やはり洗練された高級なスポーツカーでなくてはならない。ポルシェやフェラーリのエンジンを、ファミリーカーや軽自動車に搭載しても機能は活かせないということだ。

スポーツ速読の能力を高めたとしても、バッティングを行うためのスウィング技術、体力などが伴わなければ、150kmのボールにバットを当てることができたとしても、打ち返すことは不可能だ。この点は勘違いしてはならないと思う。ただし例外はある。それはバントだ。バントのように打つのではなく、当てる作業になる場合は能力はスポーツ速読によって高められる。現に佐藤友亮選手自身、スポーツ速読はバントに最も効果があったことを認めている。ということは、バントを上手くなりたい選手こそスポーツ速読をすべきものなのかもしれない。

バントをするにしても、脳を活性化させるためにしても、速読には脳に対し良い効果が期待できると思う。もし興味がある方は、速読する前と後でバッティングセンターの最速のボールを当てられるかどうかを試してみると面白いかもしれない。

2011年01月15日 15:30

故障者多い西武、投手はなぜ肩・肘を傷めるのか

ライオンズ投手陣はなぜここまで故障者が続出してしまったのだろうか。すぐに名前を挙げられるだけでも菊池岩崎木村グラマン松下大沼・田中・山本と切りがない。もしかしたら筆者が知らないだけで、もっと投げられない時期を過ごした肩・肘の故障者がいた可能性もあるだろう。上記の投手の中には岸投手を始め、1軍クラスの投手の名前もある。彼らが不在だったことで昨年は厳しい戦いを強いられたわけだが、1軍半クラスの投手がいないということも、投手陣の競争を生み出せないということに繋がり、層を薄くしてしまう。これまでも何度か書いてきたことだが、今季は故障者を出さないことがライオンズの最大のテーマだろう。そして故障者を最小限に食い止めることができれば、ゲーム差なしで2位に甘んじた昨季とは違った結果を得られるはずだ。

そもそも肩・肘はなぜ傷めてしまうのだろうか?大まかな要因を挙げていくとフォーム、モーション、メンタル(スランプ、プラトーなど)、疲労などがある。これらを簡単に解説をして行くと、まずはフォームとモーション、ライオンズの若手は特にこれが原因であることが多いと思われる。フォームというのは投球動作の見た目のことだ。例えばトルネード投法やマサカリ投法、サブマリン投法という見た目の要素がフォームということになる。そしてモーションというのはメカニズムのことだ。例えばトルネード投法とサブマリン投法は見た目はまったく違う。だが腕のスウィング時のスパイラル運動というモーションには共通点がある。モーションという要素は非常に難しいものだが、一言で言えば身体のメカニズムに則した肩・腕の使い方、動かし方ということになるだろうか。

例えば普通に見ればまったく同じ腕の振りをしている2人の投手がいるとして、ピッチングフォームもそっくりだったとする。この場合は見た目の要素となるフォームはそっくりということになるが、モーションに関してはどうだろうか。見た目はまったく同じであっても、投手Aの腕の振りにスパイラルモーションが掛かっているのに対し、投手Bはカタパルトモーションという場合がある。カタパルトモーションとは、古代の投石器のような動きで、アーム式バッティングマシンの腕の振り方だ。真っ直ぐ投法などとも呼ばれ、上半身の力に頼った投げ方のことだ。

スパイラルとカタパルトそれぞれのモーションでは、後者の方が故障のリスクははるかに高くなる。その要因は、カタパルトモーションだと投球に使う肩・腕の筋肉が一ヵ所に集中してしまうからだ。一番多いのは腕の内側の筋肉をあまり使わず、外側の筋肉に頼った投げ方をしてそこを傷めてしまうパターンだ。上から剛速球を投げ下ろすタイプの投手の故障は、このパターンが非常に多い。一方のスパイラルモーションは、腕を回旋させながら振っているため、肩周りの筋肉が均等に使われる。そのため投球時のダメージも各筋肉で分散することができ、どこか一ヵ所の筋肉を酷使するということもない。そのため故障のリスクは非常に低くなる。ライオンズでいえばスパイラルモーションタイプは西口野上星野武隈投手らがそうだ。肩・肘の故障がほとんどない投手ばかりということが分かると思う。

一方カタパルトモーションの投手は木村岡本大沼投手だ。3投手とも長期間投げられないほどの肩痛を経験している。そして昨季からカタパルトをスパイラルに修正し出している投手が小野寺力投手だ。腕の振り方が松坂大輔投手によく似てきている。つまりスパイラルモーションで、パンチングと呼ばれるリリース方法に変わってきているのだ。昨季はスパイラルがきれいに決まっている時は素晴らしい投球をしていたが、できていない時にはコントロールが甘くなってしまっていた。これは非常に顕著ではあったが、しかしモーションを変えて1年目の不安定さは仕方がない。なぜならモーションを変えるということは、今まで使っていなかった筋肉を使い始めるということであり、その筋肉がしっかり鍛えられ安定するまでは、ピッチングそのものが安定するということはないからだ。ということは、モーションを明確に変え始めて2年目となる今季の小野寺投手には、今までとは異なった期待を寄せても良いのかもしれない。

さて、続いてはメンタルと疲労ということになるが、先に疲労の話をしておくことにする。疲労とはまさにその通りで、疲れているにも関わらず無理をして投げてしまうことで故障を引き起こしてしまうパターンだ。菊池投手はまさにその典型だろう。1年前、まだ故障が癒えていないにも関わらず無理をして投げてしまったことで、取り返しのつかない肩痛を引き起こしてしまった。そして岸投手にも同様のことが言える。選手は基本的に「大丈夫か?」と聞いても、例えダメでも「大丈夫です」と答える人種だ。だからこそトレーナーがしっかりと選手個々の身体を把握してあげる必要がある。選手の疲労度をトレーナーの優れた能力により、科学的に数値化(言語化)させることができれば、監督・コーチもその数値を見て投げさせるか休ませるかを決めることができる。つまり昨季のシコースキー投手のように、重要な時期に疲労性の痛みを抱えるリスクを回避することができるということだ。

最後はメンタルだ。メンタルには大きく分けてスランプとプラトーという要素が影響してくる。スランプとは疲労に加え精神状態の悪化により、実力を発揮できない現象のことだ。一方のプラトーとは、あるレベルから次のレベルにアップする時期、パフォーマンスの向上が停滞することがある。実際にはベストパフォーマンスをしているのだが、そのベストがそれ以降なかなか向上を見せないため、選手はその停滞をスランプと勘違いしてしまうのだ。

例えば2009年の開幕、栗山巧選手は連続打席ノーヒットに喘いでいた。この場合は疲労性のスランプだったと言えるだろう。オープン戦で飛ばし過ぎてしまったことで、開幕に疲労が出てしまったのだ。一方のプラトーは中島裕之選手だ。ここ数年は毎年大きな期待を寄せられてはいるが、ある時期からなかなか劇的な進化を果たせなくなって来た。これは中島選手が次のレベルに移行するための停滞期間、つまりプラトーだと言える。これらは投手にも当てはめることが可能だ。例えば自信のあったフォークボールが落ちなくなってしまったというのは、年齢の問題を省けばスランプだと言える。一方毎年マックスが1~2kmずつアップしてきたストレートが、ある時期からまったくアップしなくなったというのは、プラトーだ。149kmまではコンスタントに伸びてきたが、なかなか150kmを超えることができないというパターンだ。

このスランプやプラトーにハマってしまうと、投手はなぜか実力以上のピッチングをマウンド上でしようと焦ってしまう。落ちなくなってしまったフォークを落とそうと、肩に無理な力を入れて腕を振ってしまったり、何とか150kmを超えようと力んでしまったり。これらの力みは、フォームやモーションを崩す一番の要因となる。フォームやモーションが崩れてしまえば、動作メカニズムが少しずつ狂うこととなり、どこか一ヵ所が狂ってしまうとそこからどんどん他の個所も狂っていってしまう。すると上半身と下半身の連動が上手く取れなくなり、バランスの悪い投げ方になってしまう。一度このバランスを崩してしまうと、元に戻すのには想像以上の時間を要する。そして元に戻している作業の間に肩・肘を傷めてしまうのだ。

簡単な説明であったため、伝え切れないことや分かりにくい点も多かったとは思う。だが投手が肩・肘を傷める主な要因が上述したことであると分かってもらえれば幸いだ。菊池投手にしろ、今季は石井貴・橋本両投手コーチのアドバイスに素直に耳を傾け、アドバイスを真摯に受け止めフォーム・モーションを改善していけば、必ず身体の状態は良くなっていくはずだ。石井貴投手は現役時代に肩痛を経験しているため、肩痛に関する知識は傷めたことのない投手コーチ以上に豊富なはずだ。菊池投手はその経験を借りることで今季は復調し、一度でも1軍のマウンドを踏んでくれればと思う。

今季のライオンズは「故障者さえ出なければ」なんて悠長なことを言っている場合ではない。チーム一丸となって故障者を出さない努力をしなくてはならない。そしてその解決に直結するのが、帆足選手会長球団に提言したトレーナーの増員だ。選手の身体をチェックするトレーナーが1人でも2人でも増えれば、故障者は目に見えて減るはずだ。「育成」を最大のテーマに掲げる西武球団において、故障者の続出は育成を阻む最たる要因となる。今季は昨季の反省を踏まえ、ぜひ故障者を最小限に抑える努力をフロント・現場で協力しながら行ってもらえればと筆者は考えている。

2011年01月14日 14:46

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