アイソン彗星:破片群の光は確認…1等星の暗さに

毎日新聞 2013年11月29日 23時34分(最終更新 11月30日 03時03分)

【右】太陽観測衛星「SOHO」が捉えたアイソン彗星の姿。右下から太陽に近付き、崩壊したと見られる。【左】最接近前よりは弱い光の尾を引きながら飛び続ける(円の左上)=米航空宇宙局、欧州宇宙機関提供
【右】太陽観測衛星「SOHO」が捉えたアイソン彗星の姿。右下から太陽に近付き、崩壊したと見られる。【左】最接近前よりは弱い光の尾を引きながら飛び続ける(円の左上)=米航空宇宙局、欧州宇宙機関提供

 太陽最接近の際に大きく崩壊したとみられるアイソン彗星(すいせい)について、国立天文台の渡部潤一副台長が29日、米航空宇宙局(NASA)と欧州宇宙機関(ESA)の太陽観測衛星「SOHO」の画像から、一部の破片が複数残っていることを確認した。しかし、崩壊した彗星は寿命が短くなるため、今後再び地上から確認できるかは未知数だ。

 アイソン彗星が太陽に最接近した後のSOHOの画像では、太陽の左上方に尾を引く姿が確認できる。NASAは、別の太陽観測衛星「SDO」で、最接近の予測日時(日本時間29日午前4時9分)を過ぎても姿を確認できないため、「バラバラになり蒸発したとみられる」と発表していた。

 国立天文台によると、最接近後の明るさは、さそり座の1等星「アンタレス」と同程度。当初は金星(マイナス4等)より明るい「マイナス6等程度」と期待されたが、実際にはそれより暗くなる。大部分が崩壊しており、破片群が残る程度という。破片の大きさも分かっていない。

 崩壊の要因として高温で内部の蒸気圧が高まったことなどが考えられるが、詳細は不明だ。NASAはホームページで「この彗星の運命はまだ確定していないが、どうやら旅を続けられなかったようだ」と記している。【渡辺諒】

 ◇「見える可能性もある」…天文学の専門家

 これでアイソン彗星は見えなくなってしまうのか。

 京都産業大の天文学者でつくる有限責任事業組合「京都虹光房」が運営する私塾「アストロ・アカデミア」の運営メンバー、小林仁美さんは「崩壊したとはいえ、軌道上に破片が残っている。地球に最接近する12月下旬まで破片が残っていれば、地球から見える可能性もある」と期待する。今後も私塾のフェイスブックで、アイソン彗星の情報を提供していくという。国立天文台の縣秀彦准教授は「すべてが消滅したわけではない。夜空が明るい市街地では、肉眼で楽しめないかもしれないが、明け方の東の空に、彗星の尾を見つけられるかも」と望みをつなぐ。【渡辺諒】

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