辺野古容認 県民への公約を破るのか
「公約」の意味をご存じですか-と聞いてみたくもなる。
自民党沖縄県連が、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古地区への県内移設を事実上、容認する方針を決めた。同県連所属の自民党国会議員5人が「辺野古移設容認」を表明したのを受け、県議団総会を開いて意思を集約したという。
これは沖縄県民との公約の一方的な破棄であり、看過できない。
自民沖縄県連は、普天間飛行場の辺野古移設を目指す自民党本部と一線を画し、昨年の衆院選や今年の参院選で「県外移設」を独自公約に掲げて戦ってきたからだ。この間、議員らは「県外移設」の公約のもとで当選している。
普天間問題では民主党が2009年衆院選で「最低でも県外」と訴え勝利したものの、鳩山由紀夫首相(当時)が辺野古移設へ逆戻りして県民を怒らせた。自民党は民主党の迷走を批判してきたが、これでは批判する資格はない。
沖縄の地元紙は社説で「議席を返上し、補欠選挙で信を問え」と訴えている。もっともな怒りである。公約について、こんなご都合主義がまかり通るようなら、選挙の意味さえ失われかねない。
今回、自民党県連に「辺野古容認」を迫ったのは安倍晋三内閣と自民党本部だ。普天間問題は、仲井真弘多知事が移設先の埋め立て申請を承認するかどうかが、当面の焦点となっている。
来年1月には名護市長選が実施される。市長選で辺野古移設が争点化する前に、年内にも知事を「辺野古容認」に転換させ、埋め立て承認を表明させたい-。これが政権の描くシナリオとされる。
こうした政治日程をにらみ、最近の安倍政権は沖縄への働き掛けを強めている。沖縄振興策にも余念がないが、先に県連に方針転換させ、知事を「容認」決断へと後押しする戦略だろう。
しかし「公約破棄」をてこに物事を動かそうとしても、うまくいくだろうか。県民との信頼関係を軽んじ、しゃにむに県内移設を目指す政権の手法は強引すぎる。
=2013/11/29付 西日本新聞朝刊=