中国が尖閣諸島を含む東シナ海上空に防空識別圏を設定した。領土、歴史問題で対立する日本をけん制する目的があるのだろう。外交問題で国内のナショナリズムをあおり、貧富の格差拡大など内政問題から国民の目をそらすのが狙いとの見方もある。
中国の一方的な措置は、日中間に新たな外交摩擦を引き起こし、尖閣問題の平和的解決を難しくしてしまう。到底容認できない。
防空識別圏とは領空侵犯に備えるため、領空の外側に設定する空域だ。対外的に公表し、圏内に入る航空機には、通過位置や時刻の事前報告を求め、通報なく進入した場合は、迎撃戦闘機の緊急発進(スクランブル)の対象となる。
日本は実効支配していない竹島や北方領土の上空には防空識別圏を設定していない。中国が実効支配していない尖閣諸島上空を識別圏に設定したことは、いたずらに日中間の緊張を高める危険な挑発行為であり極めて遺憾だ。日本政府はその挑発に乗らず、国際法にのっとり冷静に対応してほしい。
防空識別圏が設定された当日、中国機2機が日本の防空識別圏に入ったため、航空自衛隊の戦闘機が緊急発進した。海上自衛隊もP3C哨戒機を警戒のため、周辺空域に連日派遣している。双方から緊急発進が繰り返されれば、武力衝突の危険が増す。最悪事態は何としても回避しなければならない。
今年1月には中国海軍のフリゲート艦が海上自衛隊の護衛艦に攻撃用の射撃管制レーダーを照射した。中国側は艦長の緊急判断による偶発的なもので、計画的な作戦ではないとの立場を説明した。
日中は偶発的衝突を回避する危機管理メカニズムの構築こそ急ぐべきだ。そのためにも、中国は防空識別圏設定で決して「膨張主義」に走ってはならない。
日中間では8月ごろから、経済や文化、地方政府同士の交流が復活し始めていた。今月19日には経団連の米倉弘昌会長を最高顧問とする日中経済協会の訪中代表団が汪洋副首相と会談した。識別圏問題が、こうした日中関係改善の動きの足かせになってはならない。
日中は非難の応酬をやめ、冷静な話し合いのテーブルに着くべきだ。安倍晋三首相と習近平国家主席は、外交問題は平和的解決しかあり得ないことを確認するため速やかに首脳会談を実施すべきだ。
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