アイドルが割拠する今、「アイドルになりたい」という女のコの夢のハードルは下がり、同時に「アイドルを育ててみたい」という本懐を遂げるチャンスも増えている。本特集では、素人ながらアイドルのプロデュース業を始めた人々の紆余曲折と喜びを紹介。膨張し続けるアイドル業界。これを読めばキミもアイドルプロデューサーになれる!?
◆アイドルで地域振興を目指す!奮闘する現役公務員
・10COLOR’S×上野勝彦氏(仮名・地方公務員)
現在は6人で活動中。さらなる成長を目指し、公式サイトでは研究生も新規募集している
山口県下関市を中心に活動する地方アイドル「10COLOR’S」。元HKT48の古森結衣が所属しており、アイドルオタク界隈では注目を集めている。そのプロデュースを手掛けるのは、同市の公務員・上野勝彦氏(仮名)だ。
「アイドルを呼んでの町おこし事業に携わり、その後、自分たちでイベントを企画したりもしていたんです。そのうち、街を盛り上げるためにもう少し頑張ってみちゃろかなって。ちょうど古森がHKT48を脱退した頃で、出身地である下関市でやりたいという話があり、これはチャンスだ、と」
同じタイミングで福岡のアイドルグループにいた女のコの参加が決定。上野氏は職場の許可を取り、プロデューサー活動を開始する。トントン拍子で結成から1か月もたたずに初ライブが実現。2人の知名度もあり、集客は確実。が、場所はなんと……道の駅だった。
「私は音楽好きでもアイドルオタクでもないので、アイドルイベント=ライブハウスなんて思いもしなくて。とにかく無料でできる会場を探したら、仕事で懇意にしていた道の駅の方が、快諾してくれまして。結果として、“インストアライブ”になりました(笑)」
そう、プロデューサー業に必要なのは知識よりも人脈。追加メンバーの募集をかける際には、地方紙が記事として取り上げてくれ、山口県内はもちろん、鹿児島や静岡から50人の応募が集まった。その選別は地元FM局と組み、商業施設で公開オーディションを行うなど華々しくコトは進んだ。
「プロデューサーになってから頭を下げることが増え、何事も下から見るように変わりました」との言葉に苦労がにじむ
が、現実は厳しい。聞けば、「ポスターを印刷したら、どうやら相場よりずいぶん高かったこともありました」「『営業してくれる』と言われたのでお任せしていたら、私がとってきた仕事に対してもマージンを引かれていたみたいで」。とまあ、いろいろあり、活動開始前250万円あった貯金は「若干は残っている」程度に。それでも、「僕自身は騙されたとは思っていない」とキッパリ。その一方で、お世話になった人には米俵を抱えてご挨拶に行く。そんな人の良さが奏功してか、同じように地方アイドルを手掛ける芸能事務所の協力などを得て、九州各地のイベントへ定期的に参加するようになった。公務員である上野氏はこの活動で利益を得ることはないが、10COLOR’Sとして独立採算できるまでに成長した。
「とはいえ、ある程度、グループが認知されるようになっても、『結局、女のコが好きなんやろ?』と言われるなどキモヲタ扱いですよ。こういう偏見をどげんかしたいんです。この街に文化として根付かせるまで、引くに引けません」
以前は野球に熱中していたという上野氏。週末を過ごすのはグラウンドではなくライブハウスとなったが、多忙になった今も毎日のランニングとウエイトトレーニングは欠かさない。闘志を向ける先が少し(だいぶ?)、変わっただけなのだ。
【10COLOR’S情報】
下関市を中心にほぼ毎週末、地域イベントに参加。福岡などの九州地区のほか、大阪・名古屋への遠征も行っている。ライブ情報の詳細は公式サイト(
http://shimonoseki-project.com/)でチェックを
― 素人でも[アイドルプロデューサー]になれる!【2】 ―