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【放送芸能】

ドライバーと45年 文化放送「走れ!歌謡曲」

 文化放送「走れ!歌謡曲」(火―土曜午前3時)が、放送開始から45周年を迎えた。女性パーソナリティーのおしゃべりと演歌や歌謡曲でつづるシンプルな番組にはファンが多く、長距離トラックの運転手からは特に熱い支持が寄せられている。静寂に包まれる時間帯、番組の親しみやすさがドライバーの孤独を癒やしているようだ。 (藤浪繁雄)

 「一人で頑張っているドライバーの精神的なナビゲーター(走行助手役)になれれば」。南里慎二プロデューサー(67)は番組の狙いを語る。一九六八年十一月十八日に放送が始まって以来、番組に携わってきた。

 放送されている午前三〜五時に働いている人を意識していたが、大型車メーカーの日野自動車がスポンサーで、トラックにかかわる情報も番組で流れることから、ドライバーが多く聴くようになったという。

 パーソナリティーは初め、局の女性アナウンサーが中心。その後、フリーアナに交じって、八〇年にはまだ無名だった演歌歌手・川中美幸が登場。その後、坂本冬美、香西かおりもマイクに向かった。「歌手はアナウンサーと違い、しゃべりはうまくないが、個性を出してくれれば」と南里さん。「番組からスター歌手を生もう」というリスナー、スタッフの思いも強く、番組の親近感を生んだ。

      ◇

 木曜担当の演歌歌手の井上由美子は、二〇〇六年からパーソナリティーとして登場。関西弁の明るく陽気なトークが人気だが、「素の自分を正直に出すように心掛けている。『眠い』『疲れている』とかも言いますよ」。

 番組に台本はなく、自由な語りだが、南里さんからは「作り話やうそはやめるように」と言われている。

 放送前日の午後十時ごろに局入りし、はがきやメールに目を通す。悩み相談など紹介する内容を本番までに選び、流す歌も決めていく。生放送中に届くメールのリクエスト曲をかけることもある。

 天気や交通情報のアナウンスも重要な役目だが、「つっかえたり、アクセントを間違えたりで今も大変です」と苦笑い。ドライバーからは「ヒヤヒヤするので車を止めて聴く」「自分の走っている地域はこんな天気」などのメールが寄せられる。「リスナーがいつも一緒にいてくれる」というのが実感だという。

 井上の「元気なトークがいい」とひいきにしているドライバーで「国際水産急行」(埼玉県秩父市)専務・引間誠さん(37)は「聴いていると精神的に落ち着くし、演歌や歌謡曲はリラックスできる。情景が浮かぶ鳥羽一郎さんの歌が好き。(番組を)聴き始めて十五年になりますね」と話す。

◆番組HPづくり リスナーが尽力

 はがきやメールを寄せるだけでなく、番組のホームページ開設にも携わったリスナーもいる。

 埼玉県上尾市の「栄陸送」を営む弘田一雄さん(56)は、大型車運転歴約30年で、トラックやクレーン車などを自ら運転し、各地に納入している。十数年前からは、目的地から戻って来るドライバーに仕事を紹介しようと「陸送村」というシステムをネット上に立ち上げた。約170の業者が登録して重宝されている。

 システム作りでネットとの関わりができたおかげで、番組ホームページ作りに協力できたという。「声しか知らないパーソナリティーがどんな人なのか気になりますからね」

 放送されているのは眠気を我慢して運転する時間帯。「パーソナリティーからペンネーム(ラジオネーム)を呼び掛けられ、『安全運転で頑張ってくださいね』と語り掛けられた時は格別。リクエストした曲が流れると、眠気を通り越し、興奮してしまいます」

 トラック業界はドライバーの高齢化が進み、弘田さんの会社も平均50歳以上。「若い人はスマートフォンですが、私たちはラジオが頼り。演歌も好きなので番組はずっと続いてほしいですね」

 

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