香川は左サイドでも輝ける――。ファン・ペルシー復帰後に求められるルーニーとの“三角形”
フットボールチャンネル 11月30日(土)11時19分配信
僕はオランダ代表FWの入団会見で、ファーガソン前監督が「一体半年前に誰がロビンのユナイテッド移籍を予想できたんだ!?」と、赤ら顔をさらに赤くして、興奮気味に語っていたのをよく覚えている。
つまり、ファン・ペルシーの獲得は、予定されていたものではなく、突発的だったということだ。移籍の噂はあったが、当時の英メディアは、オランダ代表FWの行き先はマンチェスター・シティが有力だと伝えていた。
しかし何よりも優勝を望んだファン・ペルシーは、シティではなく、13度もプレミアを制した名将の引力に引き寄せられたかのようにユナイテッドを選択。これはファーガソン前監督にとっても青天の霹靂だっただろう。
ファン・ペルシーは2011-12年シーズン、突如として本格化した。大器ではあったが、怪我が多く、それまでアーセナルに所属した7シーズンで二桁ゴールを決めたのは半分以下の3シーズン。それも11ゴールが2回に18ゴールが一回。ファン・ペルシーの才能、そしてセンターフォーワードというポジションからすれば、それほど際立った数字ではない。
ところが、初めてシーズンを通じて働けた2011-12年に30ゴール奪い、ゴールデンブーツも奪った。すると得点王の次は優勝だと言わんばかりに、ユナイテッドに移籍した。
開幕戦はベンチスタートだった。しかしルーニーが不発で、ファン・ペルシーは2試合目のフラム戦で初先発し、すかさず移籍後初ゴールを記録。そして続くサウサンプトンとのアウェイ戦で、2度先制されながら3度ひっくり返すという、強烈なハットトリックを決めて3−2勝利の立役者になった。この試合からファン・ペルシーは不動の先発レギュラーとなり、サポーターは新たなヒーローに忠誠を誓った。
ファン・ペルシーのユナイテッド移籍は香川だけでなく、ファーガソン前監督にとってもある意味誤算だったと思う。モウリーニョが明らかにしたことでも分かるように、昨シーズン当初、老将は香川を軸に新しいスタイルを築こうとしたのだろう。
この前年の2011年5月に行われた欧州CL決勝後、ファーガソン前監督は「もう少し競れると思った」と語り、バルセロナとの力量差を素直に認めた。
最も差があると感じたのは決定機の質だろう。とくにユナイテッドには縦の連携で相手の最終ラインを崩すクオリティが不足していた。そこで香川を獲得し、ルーニーをはじめとする攻撃陣と、ショートパスを交換する縦の関係を築こうとしたのだと思う。
ところが突如としてファン・ペルシーが獲得可能になった。とにかく彼にボールを集めればなんとかしてくれる、凄まじいフィニッシャーだ。連携もへったくれもない“飛び道具”といっていい存在である。
とくにスペースも時間もないプレミア戦でこれほど効果的な点取り屋はいない。どんなボールにも抜群の距離感とどんぴしゃのタイミングで対応し、ワンタッチで決めてしまうのだから。
結局、ファーガソン監督は、香川の相棒と見込んでいたルーニーが「フィットしていない」(これは今もサー・アレックスとルーニーの間で論争の的となっているが)と判断したこともあり、昨年の9月の段階で早くもファン・ペルシーを大黒柱として起用し始めた。
それから香川は左サイド、もしくは右サイドで出場するようになった。そんな折り、10月23日に行われたブラガとの欧州CL戦でひざをひねり、長期休養を余儀なくされた。これでファン・ペルシーの重要性がさらに増してしまった。
ところがあれから1年が経った今、ルーニーと香川が消えて、ファン・ペルシーが際立った昨シーズンと反対のことが起こりつつある。
最終更新:11月30日(土)11時19分