「黒子のバスケ」事件:脅迫400カ所、中年の単独犯か
毎日新聞 2013年11月30日 07時15分
人気漫画「黒子(くろこ)のバスケ」の単行本や関連商品を扱う店舗などに販売中止を求める脅迫文が届いている事件で、警視庁捜査1課は文面の特徴から同一犯との見方を強めている。送付先は約400カ所に上り、毒物まで脅しの材料に使う手口からは、作者への強い恨みや「劇場型犯罪」の先駆けとされるグリコ・森永事件への意識がうかがえる。一方で、犯人特定につながりにくい郵便や東京都外のインターネットカフェを使うなど巧妙さも目立つ。【松本惇、山崎征克、神保圭作】
◇作者に強い恨み/「グリコ・森永」意識
発端は2012年10月12日。作者の藤巻忠俊さんの母校、上智大キャンパス(東京都千代田区)で「俺は藤巻が憎い」という脅迫文と硫化水素を発生させる液体入り容器が見つかった。上下とも黒い服装の細身の男が容器を運ぶ姿を複数の学生が目撃している。
同じ時期、千葉県浦安市のインターネットカフェから、犯行声明とみられる文面がネット掲示板に書き込まれた。店の防犯カメラに上智大の時と似た男が映っていたが、店側は身分証の確認をしていなかった。
都はネットカフェの匿名性が犯罪の温床として、10年から利用者に身分証提示を義務づける条例を施行したが千葉県にはない。脅迫手段の郵送にしても、消印から郵便局の管轄範囲までは割り出せても、それ以上の追跡は困難なのが実情だ。
いったん鳴りを潜めた犯人は先月、「セブン−イレブン・ジャパン」の本社(千代田区)に対し、浦安市内の店舗に毒入り菓子を置いたとする脅迫文を郵送。約1500店から関連商品を回収したところ、ウエハース菓子の一部から毒物のニコチンが微量検出された。防犯カメラには手袋をしたマスク姿の男も映っていたが、特定はできていない。
脅迫文では、標準語の「喪服の死神」と関西弁の「怪人801面相」を使い分ける。やはり関西弁を操った「かい人21面相」を名乗り、1980年代に食品メーカーを次々と脅した末、未解決に終わったグリコ・森永事件を強く想起させる。
実際、「グリコ森永事件の約30年ぶりのリバイバルや」などの記述もある。青酸入り菓子に「どくいり きけん たべたら しぬで」との紙が貼られてばらまかれた同事件をまねるように、今回も「毒入り危険」とのシールが貼られていた。