ネット君臨:第1部・失われていくもの/3
◇上司・同僚、顔も見ず
操作していた職場のパソコンに突然、エラー画面が現れた。「違反です。あなたのIPアドレスを記録します」
東京に本社を置く大手IT(情報技術)企業の調査研究担当社員(41)が英文サイトで遺伝子組み換えに関する資料を探していた時だ。その中に「SEX(性別)」という文字があった。社内のネットワーク監視システムが「業務中に性的描写を見た」と判断した。
同じような経験は一度や二度ではない。社の管理部門に閲覧許可の申請書をいちいち出さなくてはならない。「仕事の能率がひどく落ちた。ITを万能と考えている経営者は裸の王様ですよ」
同じIT企業の「ITFOR」(東京都)はパソコンの操作記録を社員本人と上司が見ることができる。無駄な仕事をしない「抑止効果」が高まった。私用に使われやすい携帯電話をオフィスに持ち込むのも禁止。ICカードで開けるロッカーに入れ、1日に取り出した回数まで分かる。
仕事の管理、効率化、情報漏れ対策……。同社が3年前から導入した監視ソフトを開発する「MOTEX」(大阪府)の高木哲男社長(58)は「市場は将来も確実に伸びる」と予想する。米国にならい、企業の財務情報の信頼性を保つため08年から社内管理の徹底を法律で義務づける「内部統制」(日本版SOX法)が追い風になる。
企業の社員監視とネットワーク化が進むとどうなるのか。
150メートル先まで仕切り一つない広いオフィス。足音とキーボードの音だけが響く。大手企業の電子機器設計を担当する30代前半の男性社員は、静まり返った仕事場で言い知れぬ孤独感に襲われる。
目の前の相手にメールを打つのが当たり前になった。直属の上司は別のビルにいる。連絡もメールだ。自分が書いた報告書を読んでうなずいているか、首をかしげているのか。その顔が見えない。「昔のように仕事を直接教えてもらえなくなった。結局、自分で考えるしかない」
ペーパーレスになった職場で、紙の古い資料を見つけた。紙は組合のビラくらいしか目にしない。「稟議(りんぎ)書も人の手で回していたんだ」。新鮮な驚きがあった。今は「人と人の間に機械がはさまっている」と感じる。それでもネットを使わない仕事は想像できない。
同僚とのつきあいは確実に減った。上司には「会社で金を出すから飲み会でも開けよ」と指示されている。
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NTTデータ(東京都)は06年4月、ミクシィで一挙に普及したSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の社内版「Nexti」を開設した。提案した一人、竹倉憲也さん(35)は「息抜きしたり雑談できる場所をネット上に作った」と説明する。
社員が勤務中でも日記を書き、仲間がコミュニティーを作る。完全実名制で参加は自由。全社員の6割を超える約5000人が登録した。経営幹部の中には抵抗感があったが、社員のつながりの効用を説くと反対の声は収まった。コミュニティーの数は642に達し、仕事と私的な利用が半々で推移している。
昔流行したミニ四駆好きがレース大会を開き、結果を伝える新聞も発行した。竹倉さんもSNSで募った高校の同窓会に参加した。
昨年10月、同社はパソコンに内蔵された電子電話帳と社内ネットワークを結び、社員が席にいるかどうかを確認できるシステムを導入した。電話帳には、パソコンの使用状況などから在席している確率も表示される。社員の一人は「ちょっと外にいますとウソもつけない」と苦笑する。
竹倉さんは語る。「IT化を進める企業にいるからこそ思う。ネットは人をぎすぎすさせるのではなく、生活を豊かにするものであってほしい」
@ @
同社のSNSの一番目立つ場所にQ&Aコーナーがある。若い男性社員がそこに「エクセル(表計算ソフト)に関する『オススメ本』を教えてほしい」と書き込んだ。2日後、その社員の机に一冊の本があった。
誰が置いたかは、しばらく分からなかった。=つづく
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■ネット用語■
◇IPアドレス
インターネットに接続しているすべてのコンピューターに割り振られた識別番号。ネット上でコンピューターの場所を示す住所のようなもの。
束縛されすぎですね〜。なんだかどんどん自己を失う人がいっぱい出てきそうで怖いです。仕事場でもある程度プライバシーがあってもいいんじゃないかと思いました。
Comment by 一般人 — 2007年1月4日(木曜日) @ 09時46分29秒
私も長くIT系企業に勤めていますが、この記事にあるような「社員監視」はかなり穿ったモノの見方のように思います。
確かに、ネットワーク監視システムは社員個人のプライバシーを監視する使い方もできます。そうした使い方をしようとするのは、概ねマネージメントに自信の無い管理職者の発想だと私は思っています。
「コンピュータはソフトがなければただの箱」と昔から言われてきました。そのソフトさえ、運用するヒトがどう使いこなすかで善にも悪にもなります。
つまり、最終的にはシステムを使う側のモラルや人間性に行き着くのです。
「ネット社会」が悪い、「システム」が人間を駄目にする、などと言う短絡した考えに囚われてしまうと、何が正しいか見えてこないでしょう。いわゆる「木を見て、森を見ず」の状態に陥ります。
すべてをネットの悪とするのではなく、それを使う人間の問題として取材を一層掘り下げて下さるようにお願いします。
Comment by わに塚もりお — 2007年1月4日(木曜日) @ 10時06分43秒
鳴り物入りで始まった連載であったが、
早くも失速した感が否めない。
本日分の事例はそれこそ、
ごく一部の大企業の例にすぎない。
これをもって「ネットによって従来型の人間関係が
失われつつある」とするのであれば、
その論法は、「いざなぎ越えの景気回復」
を謳う政府の姿勢と何ら相違なく、
現実から目をそらしていると言わざるを得ない。
新聞社のような大手企業に在籍していると、
世の中全てを自分の尺度で見てしまうように
なるのは仕方がないかと思われる。
しかし、実際には大手企業で働く人は一握りである
ということを忘れてはならない。
また、大手企業においても情報通信系統の会社
を除けばこのような厳しい情報管理を徹底する所は
まだ珍しく、今回のような事例はまだレアケースで
あると言えるのではないか。
この連載はよくも悪くも注目を浴び話題になっている。
一読者としては、この連載がセンセーショナリズムに
終始するのではなく、中身を伴った連載に軌道修正
されることを願っている。
Comment by 斉藤庄助 — 2007年1月4日(木曜日) @ 10時50分31秒
私の勤務先での運用は
”ルールは厳しく作り、運用は弾力的に”
という印象を持っています。なんでも競馬サイトをみたら管理部署から警告メールが来るけど2ちゃんねるのニュース速報+をみても何もおきないとか。必要だと思ったツールやドライバを get したことがありますが警告メールは来ませんでした。面白かったのは、一度
「巨大な画像ファイル (文脈からするとポルノ画像としか思えない) をDLした社員がいます。しかるべき理由を説明できない限り該当社員の外部アクセスを停止します」というメッセージが社内の掲示板に出たことです。ツボを押さえた管理法ではないでしょうか?
というわけで、見てもないのに
「業務中に性的描写を見た」と判断するような運用をする会社の管理が低レベルだ、という判断でいいのではないでしょうか。
また、管理といえば GPS 付で働いているタクシーの運転手さんの方が大変じゃないでしょうか?お客に一番近いタクシーが動くように指示されたり、そのお客を乗せたことがある人が優先されたり (行き先を知っているから) とかあるそうじゃないですか。一服入れる暇もないのでは?
Comment by rm — 2007年1月4日(木曜日) @ 11時08分56秒
今時こんな会社のほうが珍しいと思いますけどね。
全体の何%ぐらいですか、こんな会社?
詰めが毎回甘い記事しか書かないのか。
それとも意図的にそう書いているんですかね。
Comment by kk — 2007年1月4日(木曜日) @ 12時08分29秒
テーマに直接関係ないことで、恐縮ですが、「ネット君臨」が始まってから、「まいまいクラブ」への投稿に対して承認制を取っていることついて、毎日新聞社は「都合の悪い」意見は掲載しないのか、という批判があるようですが、それは誤解ではないかと思います。
「都合が悪い」とは、どのようなことなのかは、明確に定義されてませんが、私から見て、かなり毎日新聞社や記者諸兄姉に手厳しいコメントも掲載されているように思います。そして、それをもって殊更に毎日新聞を称賛し、評価する必要もないと思います。
それらに誠実に応えるという点ではかなり不満がありますが・・・。
私見ですが、恐らく「まいまいクラブ」の管理人氏から見て、著しく品位に欠けるコメントや誹謗中傷と判断できるものを不可としているのではないでしょうか。私のコメントを含めて、悪口、批判、非難もかなり載ってますので、「都合の悪い」コメントは載せてないとの批判は必ずしもあたらないと思います。
Comment by 四間飛車 — 2007年1月4日(木曜日) @ 12時08分40秒
いわゆる、『IT企業』と言われる会社になるほどこの現象は顕著になっていくようですね。
個人情報やセキュリティーの保持が大前提ですから仕方がないことではあるのですが…
Webの閲覧規制はある程度目をつぶるしかないとして、
問題は、口頭でのコミュニケーションの減少でしょうか。
自由に休憩を取って、短期集中で仕事に取りかかるような欧米ではこのスタイルで良いのですが、日本人の場合、国民性からか深みにはまってしまって、少しずつ精神を病んでしまうように思えます。
休憩時間外でも時々会話ができる環境を作り出さないと、作業効率や精神衛生の面で問題が噴出するような気がします。兆候はすでに現れているんでしょうけども。
以前から言われていたとは思いますが、人間が機械をつかう時代から使われる時代へと確実にシフトしている感じですね。
在席率がpcの利用状況から把握できるシステムなどは、
省力化やコスト削減を声高に叫んで進んだ結果なのですが、人間として必要な無駄まで省いていくのはいかがなものか思われます。
Comment by MA-chin(g) — 2007年1月4日(木曜日) @ 13時26分47秒
「ネット君臨」のいくつかの記事とコメントを読ませていただきました。しかしいまだに「ネット君臨」というタイトルがどのような意味で使われているのかわかりません。毎日新聞社がどのような意図をもってこのブログを運営しているのか。いつでも誰でも見ることが出来る場所に書かれている事。これってコメントをつける人間との間に「両者のスタンスの違いに対する誤解」を生まないために重要だと思います。このページを開くと「暗くおどろおどろしい見た目のバナー」が最初に目に入ります。その真下にでも「ネット君臨」という面白い言葉の説明が書かれていると親切なのでは。「道具を使いこなそうとする努力」が失われているように見えてならない。このコメント機能についても、大量の投稿に対するリアクションの素早さに感心する一方で、管理者からの個々の書き込みに対する対応が目に見えて現れていないことに不満もおぼえます。コメント機能を閲覧者との有意義なコミュニケーションの場として活用できないような状況を、いつまで続けられるのでしょうか。
Comment by gf — 2007年1月4日(木曜日) @ 13時56分04秒
内部統制と個人のプライバシーは背反する概念だから、致し方ない面はあると考えます。
(※と言うか業務を遂行する上で、従業員に「個」が存在することは許されない。)
なにもメールやweb以外の通信を禁じられているわけじゃありませんし、帰宅後の通信までは束縛されませんからね。
社用メールの検閲は確か合法とする判決が出ていたはずです(通信の秘匿の対象外)。
ましてや、従業員個々のメールやweb閲覧を統制することなく情報漏えいが発生すると、貴紙をはじめマスコミはここぞとばかりに叩くでしょう。
貴紙のこれまでの取材と論調は、「個人で利用するネットもこの会社のような強力な監視体制下に組み込むことで犯罪を抑止しよう。」とおっしゃるように感じます。
Comment by 既得権益 — 2007年1月4日(木曜日) @ 14時10分00秒
たった一つたりとも結論が見当たりません。
今回の記事を文章構成的にまとめると、
具体例、具体例、問題提起、その後具体例のみ、となります。
個々の例がそれぞれどう問題なのかが明示されていないので、
書いた人のITへのマイナスイメージしか伝わってきません。
隠れやすいITの負の部分を暴くというコンセプトに沿って、
しっかりと暴いて頂けたらと思います。
今後の記事に期待します。
Comment by LLA — 2007年1月4日(木曜日) @ 14時14分39秒
記事本文に加え、コメントの方も新鮮な意見が多く、とても面白く読ませてもらっています。
一つだけ残念なのは、せっかく双方向性を謳っているにもかかわらず、新聞社側スタッフの肉声があまり聞こえてこない点です。ネットの特性である即時性が生かされておらず、これでは政府の何とかミーティングと変わらないと思います。
恐らく取材班内部でも様々な意見が飛び交っていたと思います。編集会議でこういった話が出た、反省会でこういった声が上がったといった事を差し支えない範囲で書き連ねるだけで構いません、連載進行中の舞台裏の様子をもう少し覗いてみたい気がします。
それから読者の個別のコメントに対しても必要と思われるものには返答した方が良いと思います。すべてに答える無理ですが、一部だけでも読者の印象は大分違ってくると思います。磯野彰彦さんのブログなど参考になると思います。
例えば執筆者各人の氏名が載っていないといった指摘に対しては、即座に対応すればあらぬ誤解が避けられるのではないでしょうか。私は紙面の制約や共同執筆の性格上、最終回にまとめて出ると理解していますが。
他の方のコメントにもありましたが、是非ネット上の意見も紙面上で紹介して欲しいです(原文はネット上で見てもらうとして、総集編で十分だと思います)。それから記事に対する反対意見や当事者の記事に対する言い分なども適宜載せるようにしてもらえるとうれしいです(福岡の西日本新聞の長期連載「食卓の向こう側」はその種の意見も丁寧に取り上げることで被取材者の信頼を得ています。もう何冊か本になっていて、先日は梅田のジュンク堂書店でも平積みになっていました)。
長くなりましたが、今後の展開を楽しみにしています。
Comment by 波平 — 2007年1月4日(木曜日) @ 14時52分06秒
個々の会社には独自のルールがたくさんあります。
新人が朝早く来て上司の分まで掃除をしたり、朝ラジオ体操をしたり、会社の歌を歌ったり、営業目標が達成できないとおかしなペナルティがあったり、、、貴社のサイトの「ああ会社」に面白い投稿がたくさん集まっていましたね。
中にはネット利用を監視している会社もあるだろうな、という感想しか持てませんでした。
もし今問題になっている会社の管理する個人情報や機密情報の過失による流出も防げるなら有用な仕組みだと思いますが、特にそういうことには触れてらっしゃらないようなので、そうではないのですよね。
今話題のホワイトカラー・エグゼンプションの導入により在宅勤務の導入が可能になり、介護や育児中の社員の助けになることがあったとしても「顔が見えない」「直接教えてもらえない」ことになりますが、特に触れてらっしゃらないので関係ないんですよね。
Comment by るみ — 2007年1月4日(木曜日) @ 15時03分36秒
ITシステムが人間を管理できるようになったという点で思い出したのは、例えば子供にICタグを持たせて校門を出た時間を記録したり、GPS携帯を持たせて親が子供の居場所を突き止められるようになったというニュースです。
つまり現代の子供は、家庭によっては親に四六時中見張られて、寄り道すら許されなくなったというわけです。
ユビキタス社会はコンピューターで人間をあたかもスーパーの商品の如く管理できるようになったわけですが、これが一プライベートカンパニー内で行われているうちは部外者がとやかく言うことではありませんが、例えば国家権力によって万一悪用されたら、日本を物凄い監視社会にすることも、技術的に容易になったと言うことでもあります。
そうならないよう、毎日新聞にも常に気を配っていて欲しいところであります。
Comment by 団体職員 — 2007年1月4日(木曜日) @ 19時34分25秒
今回の記事は当初の論旨から全く外れてしまっているようです。本来個人情報を扱う機関であればこれ以上のセキュリティーは当然求められてしかるべきです。当然職種によります。クリエイティブなセクションではもっとゆるい運用がなされると考えられますが、顧客等の個人情報や最先端の開発機密を扱う部署では当然過ぎる対応と考えます。その位しなければ過去に「産業スパイ天国」といわれた日本の汚名は晴らせないのです。そのストレスに耐えられない方はそこで支払われる給料に応じた特性を持っていないのですから、もっと自分の能力を生かせる職場を探すべきなのです。登場する上司の金は出すから皆で飲み会でもしなさいという働きかけは実際はスパイのあぶり出しが目的であることが多いそうです。アメリカのホワイトカラーが長期休暇をとらされる理由はストレス解消のためではなく、その間に業務に不正が無かったかを監査するためといわれています。今後グローバリゼーションが進むに従って、こういう企業は増えるものと思われます。というか各省庁こそ率先して導入してもらいたいものです。
言い換えれば、ネット社会の闇でもなんでもない。
的外れもいいところといえます。
Comment by 善良なる管理者って誰 — 2007年1月4日(木曜日) @ 20時32分32秒
この記事で、一体なにが「失われた」というのでしょうか。
ぜひ、記者の方には、コメントへその意図を寄せていただきたい。
職場は常に騒がしく「活気に満ちて」いて、
上司や同僚とは毎日ヒザを突き合わせて話をしないといけないのでしょうか。
近くにいればメールなどせずに直接指示や報告を行い、記録は不要というのでしょうか。
無駄な仕事や私用をこなして、本来の作業はしなくても良いというのでしょうか。
紙に書いてハンコをついて、手で回すことに意義があるのでしょうか。
在席状況を知らせずに、どこにいるか探し回ることが必要なのでしょうか。
なんてナンセンスな。
「昔は良かった」「世知辛い」ということでしょうか。
実にナンセンスな。
この記事で問題にすべきは、IT技術の効率的な導入方法であり、それを利用するための「リテラシー」そのものだ。
調査研究担当社員(41)の例では、
・仕事の能率が、どれほど落ちるのか、
・閲覧許可申請に必要な付帯作業がいかほどか、
・現在の検閲ワード設定変更稟議に必要な時間はいかほどか、
・上記について議論して、応急対処と恒久対処を検討するのに必要な時間はいかほどか、
・これらの要因が、経営的観点からどれほどの損害をもたらすのか、
・つまり、検閲がなくなった場合のリスクは費用換算すればいくらなのか、
ということを論ずる必要がある。
その上で、利用者と経営者のリテラシーの差異を明確にするべきだ。
「ITFOR」(東京都)の例では、
・パソコンの操作記録を社員本人と上司が見ることができる
・携帯電話をオフィスに持ち込むのも禁止
・ICカードで開けるロッカーに入れ、1日に取り出した回数まで分かる
という対策により、どれほどの効果があったのか、数値的に実証されているのか、という点が問題になる。
費用対効果、それも、「見えないリスク」に対して、
どれだけの費用換算をしているのか、という点だ。
これらが明確でない限りは、「無駄な仕事をしない「抑止効果」が高まった」かどうか、判別がつかない。
それにしても、情報漏えいを重大な課題と考えている企業においては、当然といえる対応策と言える。
もはや何も提起できるレベルの情報がない。
大手企業の電子機器設計を担当する30代前半の男性社員の例では、
・目の前の相手にメールを打つのが当たり前になった
のがナゼか、を明確にする必要がある。
記録を残す必要があるから、なのか、
業務と無関係の私語をするためにも単純に声を発しづらい環境にあるから、なのか。
その場合には、私語が禁止されているのか、否か。
・上司には「会社で金を出すから飲み会でも開けよ」と指示されている。
という環境であれば、それを活用しているのか、否か。
そしてそれはナゼか。
そこに、IT環境に対するリテラシーが見て取れるはずだ。
NTTデータ(東京都)の例では、
・社員が勤務中でも日記を書き
ということにより、業務効率や業績にどのような変化があったのか。
・社員のつながりの効用
とは、どういうことなのか。
そしてそれがどのような影響を与えたのか。
社員は、どのようなルールを決めて、それをいかに守っているのか、
というところが、実に興味深い。
・企業の社員監視とネットワーク化が進むとどうなるのか。
この問いには、答えが書かれていない。
環境が変わったことで、「従来の環境下でしか物事を考えられない」ような未成熟な人間は、
当然、生き残ることはできない。
環境の変化は、ノイズでしかない。
やっていることは、同じだ。
ヒトとヒトが話していたことが、メールに変わる。
伝達すべき内容は、同じだ。
手段が違うだけだ。
手段が違えば、当然ながら、伝え方も変わってくる。
ここを理解していなければ、ノイズを除去して必要な情報に辿り着くことができない。
このスキルこそが、リテラシーといえる。
記事のタイトルにある「失われていくもの」というのは、リテラシーということでしょうか。。。
Comment by 米山龍道 — 2007年1月4日(木曜日) @ 21時02分19秒
興味深い意見を拝見しました。
この記事を書かれた記者がインターネットとイントラネットの区別を理解しているのか不安に思いました。
記事で取り上げられている内容は会社独自のイントラネットでの取り扱い規則であり、このことをインターネットを含むネッワーク全体にまで拡大解釈することは余りに無理があります。
イントラネットの使用基準はその設置者で独自に決められ、使用者はそれに従う義務があります。
それに反してインターネットの存在自体は全く自由であり、企業のネット監視とは全く無縁な存在でしょう。
両者の区別を明確にして議論したいものです。
Comment by 一言居士 — 2007年1月4日(木曜日) @ 21時04分18秒
組織のネットワークを管理する側の立場とすれば、ネットワークを監視することは当然と思います。ただ、近年では以下のような使われ方もするそうです。
人事のリストラ担当がリストラしたい人物のネットワーク利用のログ等を徹底的に監視し、職務に関係ない利用をしたことを理由に解雇するそうです。社内規則の片隅に不正使用は社内規則違反と記載しておけば解雇しても合法とされるようです。
このような使い方はさすがにやりすぎと感じますが、基本的には組織の中では監視は必要だと思います。
自分のいる組織のネットワークは掲示板・SNSの利用規制はしていませんが、掲示板・SNSにも光と闇の両面があるため規制をしようか悩むこの頃です。
Comment by wawa — 2007年1月4日(木曜日) @ 22時45分17秒
まず、記者・投稿者共に
>11 波平 さん
の投稿を読んでいただければ誤解を少しは避けられるのではないかと。
連載記事の特徴として、最終回におそらく取材班の名前を出しますから、
今回も出ることでしょう。署名記事の毎日が匿名を貫く事はないかと。
(ですよね?毎日さん。)
また、取材班は空いた時間でいいので簡単な記者同士の
議論などを書いていただければ双方向性が強まるのではないかと。
コメントに対して100%回答しなさいなんて無理なことは言いませんので。
(言っている人もいますが)
では、記事に対する感想です。
私はある会社でネットワークの担当をしています。
私がいる会社ではネットは自由に閲覧できます。
しかし、このような会社は最早珍しくなってしまいました。
多くの企業では情報セキュリティ対策として、
フィリタリングソフトを導入したり、外部記憶媒体や
私物のパソコンの持込を禁ずるようになりました。
その結果、不自由さを強いられています。
また、閲覧記録などのログを取る事はセキュリティ対策上、
企業としては当然のこととなりつつあります。
記事にあるような「静かな職場」「システムが社員監視」
という状況が正しい事なのかどうか、私はわかりません。
少なくとも対策をせずに(もっと言えばしても)情報流出があれば、
企業は存亡の危機に陥れられるほど時代は過敏になっています。
安全と安心を追及する事によって、人間らしさが失われていく
状況が生まれつつあります。
NTTデータの試みは重要だと思います。
ネットは既に目の前にあるのです。
その中で新たなつながりを創造していく姿勢が大事なのではないでしょうか。
Comment by おすぎ — 2007年1月5日(金曜日) @ 00時45分24秒
この特集の拙劣さを指摘している人が多い。
散漫で何が言いたいのかわからない、結果がない、などなど・・・
それこそ国語教育が等閑にされた結果かな。
新聞には新聞の役割がある。
新聞は事実は書くが、答えは書かない。
(うそを書いて国民をあおる国もあるが・・・)
それが新聞の役割であり、限界でもあります。
そこから先は、読者が自分で答えを出さなきゃ。
こういう声が上がるのは、昨今の教育は自分で考えることをさせないからかな。
なるべく簡単に、すぐに答えが出るような問題で子供の負担を軽くしているから。
コメントを書いていて、ますます根の深さを感じます。
Comment by touten — 2007年1月5日(金曜日) @ 21時53分53秒
この特集は結局、ネットを枕に現代日本社会の問題点を列挙してみました、ってことなんでしょうか? インターネットならではの問題点や落とし穴の具体例とその対策を期待していただけに、少々落胆しています。
ネットが存在したからこそ起こるネット特有の犯罪、トラブルなどの記事が読みたかったです。例えばwinnyやウイルス、情報流出、ネットオークション、パソコンの有無による情報格差の問題などなどです。
そういった事象を偏った視点なしで、情報として提供していただけると有益です。「winnyに感染したウイルスによって情報が流出するのは、昔のような人と人との温かい触れ合いを失ったからだ」とかそういう結論は、できればなしで。お願いします。
Comment by いーすと — 2007年1月5日(金曜日) @ 22時08分50秒
ビジネスでのコンピューターネットワークの利用は、あくまでも「プロセスをスマートにする」ためのひとつの手段で使われるのが理想です。
例えば、プロキシサーバーは、本来、ネットワークトラフィックの負荷などを調べ、社内クライアントコンピューターを外部コンピューターネットワークから保護するための道具です。ただ、その運用時に、プロキシサーバーにつないでいるクライアントコンピューターがどんな情報を外部のネットワークとやり取りしているか、すべて見えてしまいます。
このように、ビジネスシーンでは、道具の運用時に出力される付帯的な情報が、社員の管理に使われることが往々としてあります。
一方で、人間は、何かと、ほかの人の行動を見たがったり、ほかの人を思い通りに動かしたがる欲求が少なからず存在しています。本来は、社内資源の有効活用や、ビジネスの遂行プロセスをより実効性のあるものにするためにあるひとつの選択肢が情報システムなのですが、先の「欲求」と絡んでしまうと、それは監視の道具になり、命ある人間である社員を、数値をはじき出すただの機械部品としてでしか見なさなくなる装置になります。もしくは、数値「コレクションマニア」としての要求を満たすための悪趣味な道具へと変貌します。
一番怖いことは、それらの道具が出力するあまりにも限定的な世界を、組織(世界)のすべてと勘違いする人間側の思考回路の汚染を引き起こすことです。
これには、システムの特徴も大きく関与します。
20歳以上の友人やお父さんのカードを寸借、偽造すれば、誰でもお酒が買えてしまうように、システムは、それが設定した条件に当てはまるものなら「どんなもの」でも受容(もしくは、拒絶)してしまう特徴があります。加えて、システムには、出力された結果が「どのように」生まれたか、そのプロセスは一切解釈してくれないという特徴があります。
ここは大変重要なことなのですが、経験上、しっかり理解している人がちょっと少ないかな、と思います。
ビジネスをスマートに行う道具としての情報システムが、逆に、ビジネスプロセスの無駄やムラを生み、不必要な場面にまで及ぶ社員監視のために使われる事例がものすごく多いのは、これによるものでしょう。
これは、言い換えれば、人間のほうが未熟なことを示します。おそらく、道具のあるべき方向でのパフォーマンスを引き出せるレベルに、人間のほうが到達していないことが原因でしょう。
Comment by A.きっしー — 2007年1月7日(日曜日) @ 00時28分27秒
この記事の事例のSEXという文字列のお話は、説得力に欠ける。むしろ笑い話の
ひとつしてぐらいしか使えませんね。取材不足を感じてしまいました。
「「業務中に性的描写を見た」と判断した。」ってのも変ですよね。
業務中に、SEXという文字列が入ったサイトを閲覧したことを記録されるなら
なんら問題なく業務はできるはずです。見たサイトが記録されているわけです
から、正統な証拠が残ってる。だから一定の理解力があれば、「馬鹿なシステム
がなんかゆーてる」って感想がふつうじゃないかと。英語が読め、遺伝子組み換えに
関する情報を必要とする人物がそんな間抜けでしょうか。
・・・なんか、作り話にしか私は見えない。合点がいかないです。
Comment by ヘルマン — 2007年1月7日(日曜日) @ 18時25分54秒
車は非常に便利ですが使い方を間違えたら人を傷つけますよね。酔っ払いが運転して事故を起こしたからといって車だけがダメとはいえないのと一緒です。
車が誕生した当初は運転免許制度というものはありませんでした。その後、車による事故が多発したために運転免許制度ができました。
乱暴ですが、それと同様だと思います。
毎日新聞社の記者、総務の方が私用電話を延々としたりしては駄目とか規定されているのと一緒ですよ。
私用のネットを使うだけならまだしもネットを使って機密情報をメールで利害関係者もしくは第三者に送信したり、コンピュータウイルスに感染されたら問題がありますよね?
コンピュータのネットワークですから伝票をチェックしたり通話記録を簡単に調べるわけには行きませんから監視をしているわけです。
上の人でもかいていますが、うちの会社でも監視は厳格に行って運用は弾力的です。
それとも、毎日新聞はネットが邪魔だからネットを排除したいのでしょうか?
Comment by omega — 2007年1月10日(水曜日) @ 19時49分53秒