ほどなくして、ギルド連合による襲撃作戦は完全に完了した。
ジークやヤクモといった各ギルドのトップ達が集まり、それぞれの被害状況をまとめたところによると、どのギルドも少なからず被害はあったようだ。
酷いところでは、ほぼ全滅に近いパーティもあったらしい。
『シルバーナイツ』では死者こそ出なかったものの、重傷者は幾人か出たと聞いた。幸い、『エデン』の世界では、回復魔術も回復アイテムもある。現実世界ではまず助からないような重体状態でも、生きてさえいれば助けられるのだ。
効果の高い回復魔術やアイテムの需要が高騰するのも当然といえる。おかげで、先刻見た監禁小屋での惨劇のような状況をも作り出せてしまう結果になっているが、これは開発者の意図しない使い方だと信じたい。
ともあれ、今となっては重傷者も全員無事に回復したそうだ。
仲間を失ったギルドでは、メンバー達が暗い顔をして戦後処理を行っていた。対人戦、しかも予想に反した裏切りによる巧妙な罠もあった。
被害が出るのも当然の状況であったが、こうしてその結果たる彼らの様子を実際に見ると心が痛んだ。しかし、俺としてはどうしようもない。
こればかりは現実世界と同じく、死んでしまっては取り返しがつかないのだ。今回仲間を失ったギルド達も、新たな仲間を見つけて体勢を立て直し、乗り越えていくしかないのだろう。
また、強盗プレイヤーのアジトに監禁され今回救出されたプレイヤー達だが、とりあえず『ブラッククロス』主導で保護され、日常生活に復帰できるように支援を受けるようだ。
彼らもしくは彼女らは、長い監禁と虐待の日々で心身共に深い傷を負った者も多かった。完全に心を閉ざしてしまって、こちらからの呼び掛けにも全く反応しないようなプレイヤーも少なくなかったのだ。
強盗プレイヤー達の鬱憤と欲望の捌け口だった彼ら。さすがに、俺が見た惨劇ほど酷い虐待が行われていたのは一部らしいが、それでも自尊心を砕くような相当に酷い扱いを受けていたらしい。
今となっては、その加害者である強盗プレイヤーの大半は殲滅され、一応報いを受けた形にはなっている。だが、被害者達の戦いと苦しみはしばらく続くだろう。
夢を持って『エデン』にログインしたプレイヤーの一人として、こんな惨状が起きてしまったことに酷く虚しさを覚えるが、今は一人でも被害者達が立ち直って復帰するのを願うばかりだ。
一方、敵方の強盗プレイヤー達だが、前述した通り大多数はギルド連合の攻勢によって倒され『エデン』世界から退場している。
しかし、倒されたのは主に低ランクから中ランク程度のプレイヤーだ。彼らの実力は、トップギルドに所属するプレイヤーからすれば歯牙にも掛けないほどではあるが、そんな彼らも数が揃えばそれなりに厄介な存在になる上、戦闘力に乏しい生産系流派のプレイヤーにとってはかなりの脅威だっただろう。
そんな集団が消えたのは、一般プレイヤーからすれば喜ばしいことだ。そういう意味でも今回の作戦は成功と言える。
だが、真に警戒すべき高ランクプレイヤーに属するやつらを倒すことはできなかった。
報告によると、今回裏切りが発覚したのは『ライオンハート』だけではないらしい。実力的には『ライオンハート』には及ばないものの、他にもいくつかの有名ギルドが裏切りを犯し、ギルド連合のパーティに被害を与えたようだ。
もちろんギルド連合側もやられっ放しではなく、反撃を加えて何人も仕留めることに成功している。
それでもクドーをはじめとして、かなりの人数に逃亡された。
既にギルド連合内では裏切ったギルドについて情報公開がされており、これは始まりの街ダラスに戻った際に一般プレイヤー向けにも公開されるようだ。
今まではトップギルドとして大手を振って生活していた彼らだが、これからは肩身の狭い思いをするだろう。
ここまで直接的な敵対行為を行ったのだ。いくらダラスにギルドハウスを構えているとはいえ、今後もそこを使い続けるほど彼らも愚かではないだろう。恐らくはダラスでの拠点は放棄され、地下に潜ると考えられる。
『エデン』の世界は広い。今回のアジトのように、街に拘らなければフィールド上に拠点を建設することも可能だ。もちろん、しっかり生産系流派の使い手を揃える必要はある。
だがトップギルドからもギルド単位で裏切りが出た現状、もはやどこまで彼らの手が伸びているかはわからない。生産系流派の使い手も多数彼らに同調している可能性はあった。
また、彼らは腐っても高ランクに属するプレイヤーだ。もし彼らがグランドクエスト攻略の妨害を諦めていなければ、再び攻略組の前に立ち塞がるだろう。
今回連合に参加したギルドについても、特に罠と奇襲によって死者を出したギルドは復讐に燃えている。
近い将来、高ランクプレイヤー同士の泥沼の争いが待っている気がした。
クドーが去り際に見せたあの憎悪の眼差しを見る限り、恐らくは俺も無関係ではいられないだろう。
様々な問題を残しながらも、こうして強盗プレイヤーのアジト襲撃作戦は終了した。
俺達は保護したプレイヤー達を引き連れて、始まりの街ダラスへの帰路につく。
始まりの街ダラスへの道のりは、何事も無く過ぎた。
一応、再び裏切者達による襲撃があるかもと警戒はされていたが、特にそんな事態にはならず、せいぜいが途中のフィールドで度々モンスターが襲ってきた程度だ。
モンスターといっても場所が序盤に近いフィールド、当然出現するモンスターもそれに習って弱いモンスターばかり。
対するこちらは最精鋭の攻略組の集団だ。戦闘とも呼べないような一方的な攻撃で、モンスター達は一瞬で消し飛ぶ。
索敵でモンスターを発見次第、場違いな威力の魔術攻撃か矢といった遠距離攻撃が勢いよく殺到するのだ。モンスター側にしてみればたまったものではないだろう。
おかげで、俺のような近接戦闘専門の流派を選択しているプレイヤーは暇な事この上なかった。
まあ、俺にとっては普段中々お目にかかれなかった高ランクプレイヤー達の魔術や弓術の腕をゆっくりと鑑賞できたので、良い経験になったと言える。
「ああああ! マジ暇だわ~。俺らほんとやることねーじゃん」
「はは、楽できて良いだろ」
嘆くハヤトにタクヤが笑いながら答えていた。
それに対してジト目で返すハヤト。
「そりゃそうだけど、こう歩くだけってのもつまらな過ぎる……雑魚相手でも剣振れれば、スカッとするんだけどな」
「気持ちはわかるけど、レイドパーティになったらいつもこんなもんでしょ。特に今回なんか最前線ダンジョンボス攻略よりもメンツそろってる可能性あるくらいだぜ」
肩をすくめるタクヤに対して、トールや他のメンバーもウンウンと頷いている。
そもそもがパーティ戦の経験も碌にない俺なので、この帰路はそれなりに新鮮ではあった。これだけのプレイヤーがぞろぞろと並んでフィールドを闊歩する姿は、中々珍しい光景だ。
しかし、ハヤトの言う通り暇で面白味がないのも同意できる。
「ん~……あ、そうだ!」
しばらく一人唸っていたハヤトだったが、何かを思いついたのか急に声を張り上げた。
何事かと周囲のプレイヤー達が彼の方を向く。
しかし、彼はそれを一顧だにせず、周囲をキョロキョロと見渡し始めた。
誰かを探しているのだろうか。
そんな疑問を持った矢先、彼の視線が何故か俺の方を向いて固定され、ニヤリと笑うのを【心眼】視界で確認する。どうしようもなく嫌な予感しかしない。
ハヤト達からは若干離れて歩いていたのを幸いに、速度を速めてさらに距離を取ろうとした。
「ん? 急にどうしたんだい?」
「何かあったの?」
俺の隣で歩いていたリンが不思議そうに頭を傾げる。反対側を歩くミーナも驚いて小走りになった。
「おい! 師範代! ちょっとこっち来い!」
そこへハヤトの叫び声が響き渡る。
リンとミーナが思わず声の出所へと顔を向け、俺は苦い顔をした。
仕方なくハヤトを見る。
……いやに満面の笑みを浮かべているイケメンがいた。
リンとミーナは怪訝そうに彼を見ている。
「何あれ?」
「さあ、何だろうね」
「何だかあの笑顔気持ち悪いわ」
「私も同感だ」
何気に酷い科白を吐いている彼女達の会話は聞かなかったことにした。
ハヤトは変わらず満面の笑みで手を振り、こっちへ来いと催促してくる。
無視したいところだが、そうすると後で面倒そうだ。
「悪い。呼んでるみたいだからちょっと行ってくるよ」
仕方なくリン達に断りを入れる。
「またくだらないちょっかい出されたらちゃんと言いなさいね。私からガツンと言ってあげるから!」
鼻息荒く胸を張るミーナに思わず苦笑を隠せない。
「ははは、じゃあその時はよろしく頼むよ」
「うむ、任せたまえ!」
何故かミーナではなくリンが自信満々に答えてくれた。出番を取られて目を丸くするミーナ。後ろではキースがニヤニヤ笑っている。
「リ~ン~!」
「ふふふ」
新たに勃発した争いに背を向け、俺はハヤトの元へと急いだ。
今の彼女達とのやりとりで、またさぞかし機嫌が悪くなっているだろうと思いきや、先ほどと変わらない満面の笑顔。
思わず警戒する俺だったが、そんな俺の様子など全く気にせずハヤトが俺に肩車をしてくる。
「よ~し、よく来た師範代。おい、お前らもちょっと来いよ。面白いこと思いついた」
そのままタクヤやギン、トールなどパーティメンバーを集め始めるハヤト。
ハヤトの言う面白いことに興味がわいたのか、メンバー達が好奇の顔で集まってきた。
「面白いことってなんだよ」
みんなで顔を寄せ合い、小声でタクヤが尋ねる。
「ほら、あまりに暇だからさ。ちょっと賭けでもしようぜ」
「賭け?」
不思議そうに尋ね返したのはギン。それに対してハヤトが大きく頷く。
「そうだ。んで、負けたやつには当然罰ゲームが待っている」
罰ゲームという言葉を聞いて皆がピクリと反応した。
「ほう……どんな罰ゲームだ?」
メガネをかけてもいないのにメガネの位置を直す仕草をするトール。そんな彼へハヤトは不敵に笑いかける。
「そうだな……男への公開告白、例えばキースの兄貴へ……なんてどうだ?」
それを聞いた瞬間、俺を除くメンバー全員の口端が吊り上がった。
なんだこれ。
「ククク、面白い。負ければリンさん達の目の前で公開処刑ってわけか。やってやろうじゃねーか。それで賭けの内容は?」
「ズバリ、次に出現するモンスターの名前当てだ」
「つまりゴブリンか、コボルトか、ハングリーウルフか、暴れイノシシかってところだね」
皆と同様に不敵な笑みを張り付けて、ギンがスラスラとモンスターの名前をあげる。
確かにこの辺りで出現するモンスターと言えば、その4つにほぼ絞られるだろう。
「その通り! それで当てたやつから順番に抜けていき……最後に残ったやつが罰ゲームってわけだ」
ひどく嬉しそうな顔で宣言するハヤト。それに呼応するように周りからは噛み殺した笑い声が零れた。
「よし、じゃあ師範代。お前からいってみようか」
「え?」
いきなりの指名で思わず聞き返してしまう。
「え? じゃないよ。今の聞いてただろ? さあ早く!」
当然のように俺も参加することになっていたようだ。ハヤトの催促の声が激しい。他のメンバーはジッとこちらを観察するように見ている。
場の空気が恐ろしく重い。今更辞めますなんてとても言えない雰囲気だ。俺の背筋を冷たいものが流れ落ちた。
ここは最早覚悟を決めるしかあるまい。
俺は意を決して答える。
「じゃあ、ゴブリン」
「よぉぉし、ゴブリンだな!? もう待った無しだからなぁ!?」
オデコがくっ付きそうな距離で叫ぶハヤト。ちょっと顔が近すぎる。思わず顔が引き攣った。
そんな俺など無視してハヤトが次々と他のメンバーに意見を聞いて行く。ハヤトだけではない。皆の背後に燃え盛る炎が見えた気がする。
そのあまりの熱の入りように俺は圧倒された。
そして始まる真剣勝負……。
幾度かの勝負を終えた時、俺はハヤトとの一騎打ちを迎えていた。
「くっ」
呻き声が口からもれる。
最早なんで自分がこんなことに参加しているのかわかっていなかった。
ここで負けると悲惨な未来が待っている。負けるわけにはいかない。
ただそれだけが俺を突き動かしていた。
対するハヤトも似たような気持ちだろう。それでもやつは、まだ笑う余裕すらあった。
その事実に俺は戦慄する。
「俺は……ハングリーウルフ。こいつに全てを賭ける!」
ハヤトの宣言。それに対して俺も答えた。
「俺はゴブリン! 今一度初心に戻って俺が勝つ」
俺とハヤトの視線が交差する。
そんな俺達を見つめるパーティメンバー達。誰もが固唾を飲んで見守っていた。
無言で時が流れる。
やがてその時は来た。
突然フィールドの茂みから飛び出してきたモンスター。
それは……。
「ゴブリンだ!!」
「マジかぁぁぁぁあああああ」
俺の喜びの声とハヤトの絶叫が重なった。
「ぎゃははは、リーダー負けてやんの!」
「プックククク!! リーダーが言いだしっぺなんだから約束守らないとね~」
タクヤ達が好き放題に囃し立てる。
俺は危機を脱したことで、全身の力が抜けて一緒に騒ぐ元気などない。
下手をするとモンスターと戦い続けた時より疲れたかもしれない。
ハヤトは絶叫しながら俯き、しばらくプルプルと震えていた。やがてガバリと顔をあげると、腹を抱えて笑うタクヤ達へと指を突き付ける。
「くっそ! お前ら俺の生き様をしっかり見てろよ!」
「うははは、逝ってらっしゃい、リーダー!」
なおも笑い続ける仲間達を一睨みすると、ハヤトはズンズンと足音荒く進み始めた。
その先にいるのはリン、ミーナ、そしてキース。
ハヤトはそこへ脇目も振らず一直線に歩み寄る。
急に寄ってきて、真横に立ったハヤトへと彼女達が怪訝そうな目を向けた。
その時。
「キースさん! 好きだ! 結婚してくれ!」
「な?」
「え?」
突然のハヤトの行動にその場の空気が凍った。
リンとミーナの完全に呆けた顔というのも珍しいかもしれない。それでもその美貌が損なわれていないあたりさすがと感じる。
「うわ、リーダーほんとにいったぁぁ」
「うははは」
「やっぱリーダーはできる子!」
様子をうかがっていたタクヤ達が口々に騒いでいた。もちろん小声でだ。
言われた張本人のキースも驚いたように動きを止めたが、すぐにニヤリと男臭い笑みを浮かべた。
「へぇ、お前にそこまで好かれてるなんてなぁ。よし、じゃあ今から二人で愛を深めに行くか!」
「は?」
予想外のキースの返しにハヤトが固まる。見てる俺達も思わず固まった。
一体何が起きている? 混乱が俺達を襲う。
そんなハヤトや俺達の状況など構わずキースは笑顔を張り付けたままハヤトへと手を伸ばし、肩を抱こうとした。
しかし、肩に触れた時点で危機を察したのか、再起動を果たしたらしいハヤトの顔が盛大に引き攣る。
「いぃぃやぁぁぁぁぁぁぁ」
奇声をあげながらハヤトは飛び上がり、そのまま明後日の方角へ駆けだした。スピード特化として有名な二刀流系の剣術流派の使い手だけあって、その俊足は素晴らしい。
あっという間にその姿が見えなくなる。
「あ、リーダー!」
「ブフッ、お~い! 待てよ~! 」
ハヤトを追いかけてタクヤ達も走り出した。
腹を抱えて笑いながらも、ハヤトを心配して追いかけるのは彼ららしいと妙な所で感心してしまう。
やがてその場には俺とキース、硬直したままのリン達が残された。
「やれやれ、あいつもまだまだ青いねぇ」
顎の不精髭を擦りながらキースが笑う。
「冗談……だったんだよな?」
恐る恐る俺が尋ねると、キースの笑みが深まった。
「だと思うか?」
「え?」
戸惑う俺にズイッと近づくキース。
「ダメェェェ!」
叫び声と共に飛び込んでくる小さな人影。
ミーナだ。
小さな身体で精一杯腕を伸ばし、通せんぼの状態でキースの前に立ちはだかる。
「いくらキースでも、師範代さんには手出しさせないんだからね!」
「そうだぞ! 師範代君には私がついているからな!」
そして、いつの間にか俺の真横に陣取り、俺の腕を抱いてキースを睨むリン。
突然の展開で驚いたとはいえ、全然気づかなかった。
そんなリンに気づいたミーナが叫ぶ。
「あ~! リン! 私が身体張ってるのに何やってるのよ!」
「すまないミーナ。君の犠牲は忘れない!」
「ちょっと、リン~!」
結局また二人で争い始める彼女達に俺は苦笑いだ。見るとキースも似たような笑みを浮かべている。
「がはは、モテる男はつらいな。大変だろうけど頑張れよ! あ、さっきのは冗談だから本気にするなよ。俺の好みは男なんぞじゃなくて、グラマーな熟女だからな」
豪快に笑いながら俺の肩を叩くキース。
「ははは、左様ですか」
もう俺としては笑って相槌を打つしかなかった。
俺がリンとミーナの争いを止めた頃、ようやくハヤト達が帰ってくる。しかし、ハヤトは妙にビクビクしてこちらには近づいてこようとはしなかった。
むしろそれを面白がってキースがわざと近づき、ハヤトとの追いかけっこになったのは良い笑い話だ。
まあハヤトもいずれ冗談だとわかるだろう。というか既に半分冗談だとわかっていて、あえて面白おかしく演じている気もした。
ハヤト達のノリの軽さは、男子校のそれのようで何とも懐かしい気分にさせられる。思わずくだらない話で盛り上がってしまったのもそのせいだった。
3年前に別れを告げた現実世界。今まで必死に生きてきたせいで、随分と昔の話のように思える。
―――はたして俺の身体はどうなっているのか?
―――親は、友達はどうだ?
―――戻ったとして、俺の居場所はあるのか?
かつて幾度となく悩んだ疑問がぼんやりと脳裏を過ぎっていた。ハヤト達との絡みで現実世界での記憶が刺激されたからだろう。
しかし、以前ほど気にはならなかった。ここまでくると、今更悩んでいても仕方がないという開き直りである。
それに今は目の前にもっと考えるべきことがあるのだ。
連なる様々な因縁、『エデン』の謎。グランドクエストとゼファーが目指すクリア。
ここ最近で俺を取り巻く環境は随分と変わってしまった。今まで平凡な生活を送ってきたというのに、どうしてこうなったのだろうか。
でも、こうして進んできたのは俺の意思だ。だからこそ、これから先も後悔しないために考えていかなければならない。
そして、それら全てが片付いてから改めて、現実世界のことを考えても遅くはないのではないか。
―――でも、今くらいは感傷に浸るのも悪くないかもしれない。
若干色褪せた現実世界の記憶を頭の片隅に思い出しながら、俺は歩き続けた。
いくら足手纏いとなるプレイヤーを多数抱えているとはいえ、『ブラッククロス』を筆頭とするギルド連合に隙は無い。行程は無事に消化していった。
コーウェルの森は乗合馬車のルートからは外れている為、街へと帰るには自力で帰らなければならない。保護したプレイヤーを中心に、外側をギルド連合のプレイヤーが固める形でぞろぞろと長蛇の列を成しながら、徒歩で始まりの街ダラスを目指す。
高ランクプレイヤーともなれば自分だけの騎乗用の馬を持っていたりするが、今回救出されたプレイヤーは大半が低ランクプレイヤーであり、そんな便利なものは持っていない。それどころか、捕まった際にほぼ所持アイテムを奪われていたので、そもそもが無一文だ。
その為、所々で休憩を挟みながらも徒歩で帰るしかなかった。
そんな過程を経て約1日、慎重に歩を進めたせいか往きに比べて大分遅くはなったが、ようやく俺達はダラスへと帰ってきた。
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