中国・内モンゴルに暮らす一組の夫婦。妻・ユウジェンと夫・ワンシャン、黄砂の震源地となる内モンゴルのモウソ砂漠に奇跡を起こした。19歳の時、砂漠の中にぽつんと建てられた家に一人で暮らすワンシャンの元に、ユウジェンは妻として連れてこられた。父親が勝手に決めた結婚で、突然知らない男性と、砂漠の真ん中で生活しなければならなくなったユウジェンは絶望していた。しかも食べるもの、飲み水も限られ、死まで覚悟するほど。しかし猛烈な砂嵐が吹き、息もできないような状況になったとき、助けてくれたのは夫・ワンシャンだった。近くにいてくれた彼がたくましく思え、二人の心は通じ合った。そしてしばらくすると彼女は子供を身ごもった。そして生まれてくる子供のために、彼女はある大きな決意をする。それは砂嵐から身を守るために家の周りに木を植えるというもの。砂漠に木を植えるなど無理だと思い最初は反対した夫・ワンシャンであったが、妻の強い思いを感じ、2人で協力して砂漠に木を植える決意をした。まず隣の村で苗床の仕事をもらい、賃金の代わりに苗木をもらう。その苗木を家の周りに植えていった。しかし容赦なく吹き荒れる砂嵐に1本残らず吹き飛ばされてしまった。希望を失い、大きなショックを受けた妻は、実家に帰りたいと相談。母親に植樹失敗のことを話すと、もう一度がんばれと励まされる。元気を取り戻したユウジェンは夫の元に戻り、父親からもらった羊を苗木と交換し、300本の苗木を手に入れた。今回は木の周りに囲いを作り木を支えるという工夫をした。その後も2人は必死に働き、苗木をもらっては植えるという過酷な生活を続けた。すると、ユウジェンの身に悲劇が訪れる。子供を流産してしまったのである。絶望感に襲われるが、1人でひたすら植樹を続ける夫の姿に励まされ、再び植樹を始める。砂嵐に吹き飛ばされては植えてをあきらめずに続けた結果、2000本もの苗木を砂漠に植えた。そしてついに努力が報われるときがきた。2000本の内、10数本が新しい芽を出したのである。次の年も、その次の年も木を植え続け、植樹のほかにも作物の栽培にも挑戦。野菜を生産し始め生活も安定していった2人は、農業で得たお金で家畜を育て始めた。生活のためだけでなく、その糞尿を木の肥料にするためでもあった。そして2人は、ついに砂嵐にも負けないレンガ造りの家を建て、さらに3人の子供を授かった。植樹の成功が、2人の未来を次々に切り開いていった。2人の努力で、砂漠の様相は一変した。国からの資金を1銭ももらわずに2人が成し遂げた植樹は、中国全土に知れ渡り、内モンゴル自治区は、ユウジェンの功績をたたえ、模範労働者の賞を与えた。これまでの25年間で、2人が植えた木の数は80万本。その広さは、4600ヘクタール、東京の練馬区の広さに相当するという。砂漠に緑をよみがえらせた夫婦の植樹はこれから続く!