第1は、占領軍によって押しつけられた受け入れ難い現行憲法下の国家像を廃棄し、我が国本来の目指すべき国家像(国柄)を確立したうえで、国益を明確に定義すること。
第2は、経済に偏重した歪な国力造成の方向を修正し、外交、経済、軍事などの面における「均衡のとれた国力」を整備増進すること。
第3は、日米安保中心主義を改め、「自分の国は自分の力で守る」を基本とした自助自立の体制を確立すること。
第4は、国家目標の達成を目指し、国益を明示してその追求のための基本的・総合的な指針や方策を示す「国家(基本)戦略」を策定するとともに、それを基に作られる外交戦略、経済戦略(資源戦略等を含む)、国家安全保障(国防)・軍事戦略、心理戦略、民間防衛戦略などその他の戦略を体系的に整備すること。
安倍首相が、1番目に「国家安全保障戦略」の策定に着手したのは極めて適切であると評価されよう。
なぜならば、国家あっての国民であり、国家の生存と安全が確保されてはじめてその繁栄ならびに国民の福祉と幸福を増進することができるからである。つまり、国家の存立を図ることが国家の基本的使命であり、最優先の課題であるからに他ならない。
その意味で、安倍政権は、戦後体制の困難を克服しつつ、極めて大きな戦略的発展の第一歩を踏み出したと言えよう。
しかし、前記課題の根源である憲法改正は、容易には進展せず、相当の年月を要するであろう。その中で、安倍首相の卓越したリーダーシップの下、ようやく我が国においても戦略が創出され、その運用・指導の下に国家運営がなされようとしている。
この動きについては、全面的に支持・支援したい。そして、今後、我が国政府が、可能なところから積極的に課題の解決に取り組み、始まったばかりの戦略的アプローチを大きな体系として発展させ、戦略本来の目的である国益の増進と国家目標・国家像の追求のためのスマート・パワーとして定着させることを大いに期待したいものである。