国防

軍事研究の禁止を最近 になって明文化した東京大学「国家(基本)戦略」を確立し、体系的に戦略を整備せよ

2013.11.26(火)  樋口 譲次

 国家戦略室は、「税財政の骨格」を決め、「経済運営の基本方針」を立てることを主任務とし、その他、年金制度や社会保険・税に関わる番号制度に関する検討など内閣の重要政策に関する基本的な方針等の策定に取り組むこととされていた。

 先の自民党政権下では、内閣府に「経済財政諮問会議」が設置され、「骨太の方針」を定め、それに基づいて日本経済の進路と戦略(新中期方針)、日本21世紀ビジョン、グローバル戦略、経済成長戦略大綱などについて検討し、政策に反映された。また、「総合科学技術会議」では「知的財産戦略について」、またIT戦略本部ではe-Japan戦略が練られた。

 民主党政権下で新設された国家戦略室は、「戦略なき国家」と揶揄される我が国において、国家戦略を立て、戦略的政策決定と問題解決(戦略的アプローチ)の新しい仕組みを構築するのではないかとの期待を抱かせたのは間違いなかろう。しかしながら、その任務は前述のとおりであり、対外向けの組織の英語標記も National Policy Unit となっていた。

 つまり、国家戦略室は、主として経済財政政策を取り扱っていたに過ぎないのである。いかに我が国が「経済第一主義」を採っているからとはいえ(実は、経済以外に有効な対外手段を持ち合わせていないが)、これをもって国家戦略(National Strategy)であると内外に宣明するのはいささか憚られたのではないか。

 民主党政権の目玉として作られたこの機関は、実態において自民党政権下の経済財政諮問会議などと何ら変わらない、むしろそれ以下というのがその正体であり、真に国家戦略の強化を望む国民の期待は、大きく裏切られたと言えよう。

 なお、玄葉光一郎・国家戦略担当大臣は、平成21(2009)年10月19日、記者会見を行った。

 その中で、国家戦略室について、重要政策の企画立案や総合調整を行う機能に加え、内政・外交の幅広い分野で総理大臣に政策提言を行うシンクタンクの役割を担わせるなどの機能強化を図るため、国家戦略室を「局」に格上げするための関連法案を第176回臨時国会で成立させたい旨を表明した。

 政府のこの動きは、尖閣事案の教訓などを踏まえたものであったかは定かでないが、結局、不発に終わり、我が国の戦略強化の途は、再び閉ざされてしまった。

「戦略なき国家」日本にも戦略の芽生え(NSCとNSSの策定)

 第1次安倍晋三内閣で構想されていた国家安全保障会議(日本版NSC)は、第2次安倍内閣において実現の方向に向かっている。

 外交・安全保障政策の新たな司令塔となる国家安全保障会議を設置するための関連法案が平成25(2013)年10月25日、衆院本会議で審議入りした。政府・与党は、法案を早期に成立させ、NSCを年内に発足させることを目指している。

 同時に、政府は、10月21日、「安全保障と防衛力に関する懇談会」を開き、外交・安全保障政策の指針となる「国家安全保障戦略(NSS)」の概要をまとめた。

 「積極的平和主義」を柱とするこの国家安全保障戦略は、「防衛計画の大綱」の上位文書となるもので、年内にその最終案を作り、新たな防衛大綱と併せて閣議決定する運びとなっている。

 国家安全保障会議は、「我が国の安全保障に関する重要事項を審議する機関」であり、国家安全保障戦略もその重要審議事項に含まれる。

 経済戦略に類するものについては、自民党および民主党…
Premium Information
楽天SocialNewsに投稿!
このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

バックナンバー

Comment

アクセスランキング
プライバシーマーク

当社は、2010年1月に日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)より、個人情報について適切な取り扱いがおこなわれている企業に与えられる「プライバシーマーク」を取得いたしました。

Back To Top