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いちごの遺伝情報の解読に成功
11月27日 4時54分

いちごの遺伝情報の解読に成功
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いちごのすべての遺伝情報の解読に、千葉県の研究機関などのグループが世界で初めて成功したと発表し、各地で品種のブランド化が進むなかで、効率的な品種改良につながると期待されています。

発表したのは、千葉県木更津市の公益財団法人「かずさDNA研究所」と千葉県農林総合研究センターなどの研究グループです。
研究グループは、DNAを構成する塩基の配列を読み取る装置を使い、食用のいちごについて遺伝情報の分析に取り組んだ結果、すべての情報の解読に世界で初めて成功したということです。
その結果、食用のいちごには、およそ6億9800万対の塩基があり、このうち1億2300万対が遺伝子として働くことや野生のいちごとの比較を通して食用のいちごに特有の遺伝子も特定できたということです。
研究グループは、これらの遺伝子が甘さや赤い色の濃さ、それに病気への強さなどにどう関わっているのか、さらに分析を進めていて、別々の品種を交配した場合にどう遺伝するか今後明らかにし品種改良に役立てたいとしています。
かずさDNA研究所植物ゲノム応用研究室の磯部祥子研究室長は、「品種改良が格段に進めやすくなる成果だ。日本のいちごは非常においしいが、さらに品質を高め痛みにくい品種の開発ができれば海外への輸出にも弾みが付く」と話しています。

いちご遺伝情報どう活用

農林水産省によりますと農作物の品種改良では、2種類の品種を掛け合わせ、目的にあった性質を持つ苗の交配を繰り返すことで、新たな品種の開発が行われてきました。2種類の品種を掛け合わせてできた苗がどういった性質を持つかは、成長させて実際に実や葉ができてから病原菌への耐性や糖度などを測定したりして確認する必要があります。
このため品種改良には時間がかかり、農林水産省によりますと、最終的に新たな品種を開発するためには一般的にはコメで10年、野菜で12年から15年、そして、果物では20年ほどかかるとされ、品種改良にかかる時間の短縮が課題になっていました。
こうしたなか農作物の遺伝情報の解読の成果は素早く性質を見極められるため効率的な品種改良などにつながるのではないかと期待されています。
今回のいちごの遺伝情報の解読では、食用のいちごに特有の遺伝子が特定され、千葉県の研究機関などのグループは、今後、代表的ないちごの産地の栃木県や福岡県などと協力して甘さや大きさ、病気への耐性などに関わる遺伝子の配列を特定したうえで研究成果を共有したいとしています。
そのうえで千葉県独自のブランドを開発し、他県に負けない品種の開発につなげたいとしています。千葉県農林総合研究センターの前田ふみ研究員は「品種改良で重要なのは交配する苗の特性を把握したうえで選ぶ点で、それだけで長い時間がかかってしまう。遺伝情報の解読は大きな一歩になると思う。千葉県としても研究成果を基に効率的に開発を進めたい」と話しています。

品種改良続く背景は

農作物の品種改良を巡っては、新たな品種を開発した人や団体の権利を守るため、種苗法に基づいて、「品種登録制度」が設けられています。新たな品種として登録されると、開発者には「育成者権」という権利が認められ、許可なくその品種を栽培できなくなります。
農林水産省によりますと、例えば自治体が「育成者権」を獲得した場合、公費で新たな品種を開発したという観点から、独占的に育成したり販売したりする権利をもつ自治体が許諾料を受け取るケースが多いということです。
ただ「育成者権」には有効期間があり、その後は自由に栽培できるようになります。
さらに農林水産省によりますと、いちごは消費者の甘さや大きさなどの好みが変化しやすいということで、より競争力があり知名度の高いブランド品種として売り出せるいちごを作りだそうと、新たな品種の開発が続いてきたということです。
たとえばいちごの生産量が日本一の栃木県が平成8年に品種登録した主力の「とちおとめ」は、2年前に育成者権がなくなりましたが、栃木県は、とちおとめを広く流通させて全国シェアを上げることを目指し、許諾料を支払えば別の地域で栽培してもよいという戦略をとっていました。
また「とちおとめ」の後継として「スカイベリー」という品種が開発され、高級ブランド品として育てるため栃木県内での普及が図られています。
一方、福岡県のいちごの主力品種として知名度が高い「あまおう」の名称は商標で、品種登録では「福岡S6号」となっています。
県固有のブランドとして育てるため、福岡県以外では育苗や栽培が認められていません。
また加工品の分野も含めて商標としての権利を持つことでブランド価値を高める取り組みが続いています。

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