東日本大震災:原発事故で帰還困難区域の54人、東本願寺・報恩講で再会 宗派が招待、法要参拝 /京都

毎日新聞 2013年11月28日 地方版

 ◇福島・3カ寺の僧と門徒ら

 真宗大谷派の本山・東本願寺(京都市下京区)で営まれている「報恩講」に27日、原発事故で帰還困難区域となった福島県内の3カ寺の僧と門徒54人が参拝した。現在は全国各地に避難している門徒らは久しぶりの再会を喜びながら、御影(ごえい)堂で静かに手を合わせた。

 報恩講は宗祖親鸞の命日に合わせた法要で、各地の寺院でも毎年あり、門徒らの集いの場となっている。しかし大谷派で帰還困難区域となった正西寺(浪江町)、西願寺(富岡町)、正福寺(双葉町)の3カ寺では門徒らが離散し、報恩講も営めなくなっている。

 今回は、連絡が取れた門徒らを宗派が招待した。26日の夕方に集合し、27日の法要に参拝した。

 正福寺の門徒で現在は福島県いわき市に住む小野寺典子さん(62)は、震災当時は大熊町にあった県立双葉翔陽高校の校長だった。避難の混乱で教員や生徒たちがバラバラになり、「全員の居場所を把握するのに2週間かかった」と振り返る。その後、生徒らは四つの「サテライト校」に分散した(現在はいわき市に移転集約)。「仲間と離ればなれになるのは本当につらい」と知っているからこそ、この日の再会はうれしさもひとしおだったという。「同じ言葉が飛び交い、ああ同郷の人たちと一緒なんだと実感した」と笑顔を見せた。

 正西寺の小丸真司住職(58)は「浪江町ではあらゆるものが失われ、元通りのコミュニティーを復活させるには何十年もかかるだろう」と話す。しかし「いつか本堂も修理し、再びみなさんと集まれる日がくればいい」と前を向いた。【花澤茂人】

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