特定秘密保護法案:衆院通過 「過ち繰り返すな」 戦争体験者ら抗議の声
2013年11月27日
◇原発事故避難者「命守れなくなる」
26日夜に衆院本会議で可決された特定秘密保護法案。与党側は同日の衆院特別委員会で強行採決したうえ、本会議に緊急上程する強引な手法で衆院を通過させた。国家による情報統制と言論封圧を肌で知る戦争体験者、放射性物質を巡る情報が住民に伏せられた福島第1原発事故からの避難者−−。山梨県内でも「歴史の過ちを繰り返すな」「自分の命を守れなくなる」などと抗議の声が上がった。【春増翔太、藤河匠】
「戦時中、国は国民に事実を伝えずに多くの命が犠牲になった。それを繰り返すつもりだろうか。反対意見が多いのに可決するのはおかしい」。第二次大戦に従軍した元陸軍中尉、神宮寺敬さん(93)=甲府市=は憤った。
戦時中、政府・軍部は退却を「転進」と言った。中国の前線にいた神宮寺さんは「必ず勝つ」と信じたが、戦友は次々と命を落とし、日本は焦土と化した。「真実が伝わらないことは国民にとって大きな不利益で危険だ」
25日に福島市で同法案の地方公聴会が開かれ、慎重意見が相次いだ翌日の採決。福島第1原発事故で福島県須賀川市の自宅を離れ、甲府市で暮らす小河原律香さん(31)は「政府が住民に正しい情報を伝えなかった過ちが正当化され、繰り返されようとしている」と訴える。
事故当時、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の情報などは住民に伝えられなかった。小河原さんは「何を信じて行動すればいいのか分からなかった」と振り返る。原発に関する情報は「テロ防止」の観点から特定秘密に当たる可能性がある。「私たちの命を守る自治体に、必要な情報が伝えられないのではないか」
昨年7月から甲府市で毎週金曜、脱原発集会を企画している向山邦史さん(70)は「反原発活動が監視対象になれば、集会参加をためらう人もいるだろう。自分の意見を言えない暗い社会になる」と危惧を表明した。
一方、情報公開請求を通じて行政活動をチェックしてきた県市民オンブズマン連絡会議の山本大志代表委員は「県内には陸上自衛隊北富士駐屯地などがある。自衛隊に関する情報は出てこなくなるだろうし、他にも『特定秘密』に触れるとして行政が情報を出してこない可能性もある。市民による行政のチェックは困難になる」と指摘した。