1票の格差:7月参院選「違憲で無効」…広島高裁岡山支部
毎日新聞 2013年11月28日 10時10分(最終更新 11月28日 13時19分)
さらに「仮に47選挙区全ての選挙が無効になったとしても、長期にわたって投票価値の平等という憲法上の要請に著しく反する状態を容認することに比べ、弊害が大きいとは言えない」と判断。選挙の効力については有効と扱うべきだという「事情判決の法理」の適用は相当ではないと結論付けた。
弁護士グループが選挙無効を求めた訴訟の判決は、28日の広島高裁岡山支部を皮切りに年内に全国14の高裁・支部で示される。
岡山県選挙管理委員会の岡本研吾委員長は「非常に厳しい判断がなされたと受け止めている。判決内容をよく検討し、国とも協議の上、今後の方針を決定したい」との談話を発表した。【原田悠自】
◇解説…国会の現状を断罪
判決は、格差是正に向けた抜本改革が進まない国会の現状を厳しく「断罪」した。1990年代から小手先の是正を重ね、今回も「4増4減」で格差をわずかに縮めたのみ。「びほう策」に司法がしびれを切らし、「他の懸案に優先して取り組むべきだ」と国会に強く迫った形だ。
参院は選挙区定数の「8増8減」(95年選挙)や「4増4減」(2007年選挙)といった是正を施したが、5倍前後の最大格差が常態化。最大格差5.00倍の10年選挙を「違憲状態」とした昨年10月の最高裁判決は、都道府県単位の選挙区割り自体の限界を指摘したが、司法の警告はこれが初めてではない。
07年選挙(最大格差4.86倍)を巡る訴訟の09年9月の最高裁判決は「定数振り替えだけで格差の大幅縮小は困難だ」と制度見直しの必要性に言及した。今回の判決はこの時点から約3年9カ月の期間があった点を重視し「改革に真摯(しんし)に取り組んでいたというには大きな疑問が残る」と述べ、16年選挙での新制度導入方針についても「見通しは甚だ不透明」と不信感をあらわにした。
選管側が上告するのは確実で、最高裁が来年には統一判断を示す見通しだ。最高裁は今月20日、昨年衆院選について国会の裁量権に最大限配慮した判決を出しており、今回の無効判決が確定する可能性は低いが、抜本改革に至らなければ、将来的に最高裁も厳しい判断を示す可能性は否定できない。【和田武士】