1票の格差:広島高裁岡山支部の「選挙無効」判決要旨
毎日新聞 2013年11月28日 18時17分(最終更新 11月28日 22時25分)
1票の格差を巡り、参院選岡山選挙区の選挙を無効とした28日の広島高裁岡山支部の判決要旨は次の通り。
国政選挙における投票価値の平等は、国民主権・代表民主制の原理及び法の下の平等の原則から導かれる憲法の要請である。国会は投票価値の平等を実現するように十分に配慮しなければならない。
2010年選挙後、議員定数を4増4減する改正がされたが、それでも本件選挙の最大格差は4.77倍であり不平等さは顕著だ。
09年大法廷判決は、07年選挙の最大格差はなお大きな不平等が存する状態で、国会が速やかに適切な検討をすることが望ましいと判示した。国会は遅くとも大法廷判決が言い渡された09年9月30日から、選挙制度の抜本的改革を内容とする立法的措置を講じる責務があった。
しかし、本件選挙までの約3年9カ月間、議員定数を4増4減する改正にとどまり、抜本的見直しに真摯(しんし)に取り組んだというには疑問が残る。16年選挙に向け、抜本的な見直しをした法案が成立する見通しは不透明だ。
不平等状態の是正は他の懸案問題に優先して取り組むべきものであり、東日本大震災の対応や景気回復等の課題が山積していることを考慮しても、不平等状態を是正する案を国会に上程すらできなかったことの合理的理由があるとはいえない。国会の裁量権の限界を超え、本件定数配分規定は憲法に違反するに至っていた。岡山県選挙区の選挙も無効とすべきである。
無効判決が確定した選挙区における選挙の効力についてのみ、判決確定後将来にわたって失効するものと解されることなどを考慮すれば、長期にわたって投票価値の平等という憲法上の要請に著しく反する状態を容認することの弊害に比べ、本件選挙を無効と判断することの弊害が大きいとはいえない。
本件選挙を違憲としながら、選挙の効力については有効と扱う「事情判決の法理」を適用することは相当ではない。