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土砂警戒区域指定、東北で進まず 復興事業で自治体業務増
 | 記録的な豪雨で土石流が発生した仙北市田沢湖の被災現場。土砂災害警戒区域には指定されていなかった=8月 |
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台風や記録的な豪雨に伴う土石流被害などが各地で相次ぐ中、都道府県による土砂災害警戒区域の指定が東北で遅れている。災害発生の恐れがあるとされる土砂災害危険箇所のうち、指定されたのは宮城県が1割強、岩手、秋田、福島の3県は約2割にとどまる。全国平均の6割に遠く及ばない。東日本大震災の被災地では、復興事業に人手を割かれるなどの影響も背景にある。(亀山貴裕)
<住民説明に力>
今月8日、宮城県は仙台市内の27カ所を新たに警戒区域に指定した。指定は傾斜が30度以上で高さが5メートルを超すなど、国の基準を満たす崖地などが対象となる。
今回の指定で県内の警戒区域は1113カ所になった。警戒区域とは必ずしも一致しないが、「目安」と位置付けられる危険箇所のうち、警戒区域の未指定は7369カ所もある。
指定作業を担当する県仙台土木事務所は「震災で丸1年遅れている。復興事業に加え前年度から通常業務も増え、指定に必要な住民説明が追い付かない」と釈明する。本年度は現地調査の発注を休止し、調査を終えて手付かずだった地元への説明に力を注ぐ。
<「職員足りぬ」>
6県の警戒区域の指定状況は表の通り。危険箇所が比較的少ない青森、山形両県は既に指定を終えたが、他の4県はいずれも4分の1に満たない。
福島県砂防課は「原発事故への対応で浜通りを中心に、県の出先機関にも自治体にも十分な職員がいない」と語る。会津地方でも、2011年7月にあった新潟・福島豪雨からの復旧作業に人手が割かれた。
先月16日、台風26号による土砂災害で多数の犠牲者が出た東京都・伊豆大島の現場は、警戒区域には指定されていなかった。行政や住民の意識は三原山噴火や津波に向く傾向があったという。
8月の豪雨で6人が死亡する土石流が起きた秋田県仙北市田沢湖の現場も未指定だった。秋田県河川砂防課は「まずは危険箇所の周知を図って住民に危機意識を持ってもらうよう努め、先行する他県の手法も参考に指定を急ぎたい」と話す。
<各県に温度差>
警戒区域に指定されると、市町村は被害想定や避難場所を示したハザードマップの作成などが義務付けられる。ことし3月末現在、宮城県内で作成済みは4市町の計45カ所にすぎない。
震災で被災した自治体には、態勢が整わない自治体もある。
宮城県気仙沼市は「震災前まで多少手掛けたが、今は復興で手が回らない」と言う。仙台市は「作成に着手しようとしたときに震災が起きた」と説明。来年度に作業を再開する考えだ。
一方で、指定は不動産価値に影響しかねず、住民が反発するケースもあるという。警戒区域は避難態勢の構築などが主目的で、のり面の補強などのハード面は必ずしも伴わない。宮城県南のある行政区長は「指定されて損した気分になった」と本音を明かす。
国土交通省砂防計画課は「指定に必要な予算措置や人員配置で各都道府県間に温度差がある。指定が進んでいる都道府県ほど市町村と連携し、計画的に作業に取り組んでいる」とみる。
[土砂災害警戒区域] 急傾斜地の崩壊などが起きると住民の生命に危害が生じる恐れがある地域として、都道府県が指定する。開発行為の一部制限や建物の構造に規制がかかり、市町村に住民の避難体制整備などが義務付けられる。1999年に広島県で起きた土砂災害で24人が犠牲となったのを受け、翌年制定された土砂災害防止法に基づく。
2013年11月18日月曜日
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