福島県の首長選で現職落選連鎖が止まらない。福島県二本松市長選、福島第1原発事故の避難区域の福島県広野町長選(ともに24日投開票)でも現職が苦杯をなめた。主要市長選と避難区域の町長選では福島県郡山市(4月)福島県富岡町(7月)福島県いわき市(9月)福島県福島市(今月17日)に続いて6連敗だ。敗れた現職は「復興遅れと見なされ、批判の集中砲火を浴びた」と敗因を自己分析している。
現職落選連鎖は郡山市長選で始まった。原正夫前市長(69)は「国に先駆けて学校除染に取り組んだが、市民には『遅れている』と取られた。復興が進まないという市民の歯がゆさが現職批判につながった」と振り返る。「前例のない災害。何に比べて遅れたと言われているのか分からない」と戸惑いも見せる。
「国の復興遅れに対する町民のいら立ちが現職に向けられた」と話すのは富岡町の遠藤勝也前町長(74)。遅れの責任は国にもあるが、住民に最も近い市町村長に批判が集中したという。「今はとにかく現職を変えようという風が吹いている。現職落選は今後も続く」とみる。
二本松市の三保恵一市長(64)は「原発事故におびえて暮らす市民の何とも言い表せない思いがぶつけられた。子どもを放射能から守る施策に真剣に取り組んだつもりだが、理解を得られず、現職落選連鎖を止められなかった」と残念がる。
「根も葉もない中傷を受け、復興政策を訴えても聞く耳を持ってもらえなかった」とは広野町の山田基星町長(65)。根拠の薄い悪口にさらされて足をすくわれ、無念さをにじませる。
ほかにも「原発事故で逃げたというデマが流れ、最後まで打ち消せなかった」(原前市長)「津波で流された金庫に何億もの金があり、豪邸を建てたといううそに苦しめられた」(遠藤前町長)と同じ憂き目を訴える現職は少なくない。
いわき市の渡辺敬夫前市長(67)と福島市の瀬戸孝則市長(66)は「敗軍の将は多くを語らず」「コメントできない」と言葉少なだ。
遠藤前町長は「首長の相次ぐ交代で復興がかえって停滞するのではないか」と心配している。