■ノーベル物理学賞受賞者・益川敏英さん

 外交交渉のように、一時的には伏せておかなければならない秘密はあるでしょう。ノーベル賞も選考過程はすぐに明らかにされません。ただ、50年が過ぎたら、どんなプロセスで選ばれたのか公表される仕組みになっています。

 特定秘密保護法案は何が秘密なのか国民に知らせないまま、なんでも秘密にしようとする点が気になります。国の情報は公開が大前提。秘密にするなら丁寧な説明が欠かせません。意見が割れている状況で法律を作らず、国民の納得を得てからにすべきです。衆院を強引に通過させたのは暴挙です。

 1960年代、人工頭脳に関する研究がありました。それにかかわる資料を回し読みしていましたが、突然、関連する論文が発表されなくなりました。原子力潜水艦のソナー(水中音波探知機)に関する技術に役立つ、として機密になったと聞きました。社会に広く知ってもらい、さらに発展させるという「科学の精神」に逆行するものです。