東日本大震災:福島第1原発事故影響、初の廃校 南相馬の私立高、収束見込めず決断
毎日新聞 2013年11月29日 東京夕刊
2011年3月の東京電力福島第1原発事故で避難区域となり、休校を余儀なくされた福島県南相馬市の私立松栄(しょうえい)高校(全日制)が、来年3月で廃校となることがわかった。同校を経営する学校法人・松韻(しょういん)学園(福島市)が県に申請し、認可された。県によると、原発事故後に公立・私立の小中高校で廃校となるのは初めて。
同学園は近く、東電に対し、廃校に伴う損害賠償の本格的交渉を始める。交渉次第では、政府の原子力損害賠償紛争解決センター(原発ADR)へ申し立てることも検討する。
同校は県北東部の相馬・双葉地区にある唯一の私立高。第1原発の北22キロにあり、事故で緊急時避難準備区域に指定されて休校となった。事故当時の生徒106人は、学園が運営する福島市内の系列高や県立高などに転校。入学が決まっていた28人は避難先の学校などに受け入れてもらった。
生徒や保護者から「再開」を求める声もあったが、今年3月の理事会で「事故の収束は全く見通せず、除染も進まない中で、生徒や教職員を戻すことはできない」と判断。同6月中旬に開かれた県の私立学校審議会に廃校を申請していた。
同学園の佐々木一彦総務部長(57)は「県立高校は県の財政支援があるため避難先でのサテライト校運営で存続できるが、私立高は経済的に困難。(廃校は)苦渋の決断」と語った。松栄高は1957年に原町工業高として発足。96年に総合学科を新設し、現在の校名になった。【栗田慎一】
◇相馬・双葉、8高校も避難
原発事故では、相馬・双葉地区にある県立高8校も避難を強いられ、現在、福島市やいわき市などでサテライト校を開設している。国や県、双葉郡の自治体が2015年度の新設に向けて協議中の「中高一貫校」ができれば、県は新入生が激減している双葉郡内の5校を「暫定休校」とする方針だ。
8校は、南相馬市にある小高商と小高工、飯舘村の相馬農飯舘校、双葉郡にある双葉(双葉町)、富岡(富岡町)、双葉翔陽(大熊町)、浪江(浪江町)、浪江津島(同)。
県によると、双葉郡5校は帰還の見通しが立たず、うち4校は2012年度以降の新入生が定員の半数以下。卒業生らの間には「暫定休校になればなし崩し的に廃校になる」との懸念も強い。
県教委義務教育課によると、原発事故で避難した公立小は33校、公立中は15校。うち双葉、浪江両町の小学校7校と中学校3校は避難先で授業を再開できず、「臨時休業」中のままになっている。【栗田慎一】